24 / 56
23話・直接対決2
しおりを挟む「そこを退けよ! 聞こえてるのか!?」
ストーカー野郎こと須崎は、ミノリちゃんとの間に立ち塞がる俺を憎々しげに睨みながら怒鳴りつけてきた。物凄い剣幕だ。高圧的な態度で怒鳴られれば、並の人間ならビビって逃げ出すかもしれない。
だが、今の俺には効かない。
何故なら、まだ全力疾走の疲れで身体がプルプルしてて動けない状態だからだ。
呼吸を整えながら、後ろに立つミノリちゃんの様子を探る。彼女はまだ怯えているようだ。こんな奴と二人きりにされて、どれだけ怖い思いをしたんだろう。
「ぷ、プーさん……」
「…………」
喋れない代わりに後ろを振り返って笑顔を見せる。すると、涙目だったミノリちゃんがほんの少しだけ表情を緩めた。
その時、彼女の手に目がいった。さっき須崎に掴まれていた右の手首には赤い跡が残っている。どれだけ強い力で掴まれていたのか。
逆に言えば、ずっと掴んでなければ逃げられると須崎自身も分かっているということだ。これまで彼女には避けられ続けてきたのは事実。今日だって、リエが協力しなければ逃げられていた。いや、五年もしつこく追い回すくらいだ。理解できないんじゃない。コイツは理解したくないんだ。ミノリちゃんから嫌われているという現実に。
「邪魔なんだよ!!」
ついに痺れを切らした須崎が俺の胸ぐらを掴み、そのまま突き飛ばしてきた。反動で被っていたパーカーが外れ、金髪が露わになる。それを見て、須崎が明らかに動揺した。金髪にビビったんじゃない。見るからにガラの悪そうな男がミノリちゃんの知り合いだとは思いもよらなかったんだろう。
「なんでこんなチャラそうな奴がミノリさんと一緒にいるんだよ!」
「そっ、そんなの須崎君に関係ないじゃない」
「ダメじゃないか。コイツとどこで知り合ったの。夜遊びでもした? まさかコイツと付き合ってるの? ミノリさんはそんなフシダラな女性じゃないよね?」
「うっ……」
咄嗟に言い返した彼女に対し、須崎はまた高圧的な物言いで黙らせようとしてくる。再び青褪めるミノリちゃんを見て、俺は妙に冷静になった。
「オマエ、女の子口説く時いっつもそうなの?」
やっと呼吸が整った。
ようやく喋れる。
「ミノリちゃんはさぁ、オマエと一緒にいたくないって言ってんの。つーか、今までずっと断られてたんだよね? 聞いてなかった?」
「うっ、煩い黙れ!!」
そうだ、もっと怒れ。
オマエの本性を全部出して、ミノリちゃんから徹底的に嫌われてしまえ。
俺はちらりと視線を東屋の外にある茂みに向け、すぐ須崎へと戻した。
「力で無理やりねじ伏せて、言うこと聞かせて楽しいかよ。それでミノリちゃんから好きになってもらえるとでも思ったか?」
「こ、この、不良の癖に……」
ギリ、と奥歯を鳴らし、須崎が拳を握り締めた。一歩、また一歩と距離を詰めてくる。そして、ついに拳を振り被り、俺に向かって殴り掛かってきた。
「プーさんッ!!」
ミノリちゃんの悲鳴が河川敷に響く。
俺はガードもせず、拳を腹に喰らった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
スマホゲーム王
ルンルン太郎
ライト文芸
主人公葉山裕二はスマホゲームで1番になる為には販売員の給料では足りず、課金したくてウェブ小説を書き始めた。彼は果たして目的の課金生活をエンジョイできるのだろうか。無謀な夢は叶うのだろうか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼女の音が聞こえる (改訂版)
孤独堂
恋愛
早朝の川原で出会った高校生の男女の普通に綺麗な話を書きたいなと思い書き始めましたが、彼女には秘密があったのです。
サブタイトルの変更と、若干の手直しを行いました。
また時系列に合わせて、番外編五つを前に置きましたが、こちらは読まなくても、本編になんら支障はありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる