【完結】君とひなたを歩くまで

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
23 / 56

22話・直接対決1

しおりを挟む

 炎天下の中、河川敷を目指して真っ直ぐ駆ける。
 容赦ない太陽の光が肌を焼く。パーカーを目深に被り、サングラスを掛けてはいるが、それでも全てを防ぎきれてはいない。頬や袖から出た手がジリジリと痛む。熱い空気は吸う度に喉をカラカラに涸らしていく。呼吸が苦しい。酸素が足りない。それでも構わず足を動かし、前へと進む。

 ミノリちゃんから体力つけろと言われていたのに、結局なんにもしてこなかった。そのツケを今払わされている。

 ショウゴみたいに車があればすぐの距離なのに、免許が取れない俺の移動手段は自分の足のみ。どうせ金がないから車なんか買えないか。俺ってホントに情けないな。

 ──それなのに、なんでこんなに必死になって走ってるんだろう。





 なんとか河川敷に辿り着いた。
 公園は対岸。
 急いで近くの橋を探し、走って渡る。

 真夏の昼間。日陰は少ない。遊具はどれも金属部分が火傷ヤケドするほど熱くなっているから、遊ぶ子どもの姿はなかった。

 その公園の片隅にある東屋あずまやのベンチで並んで座る男女の姿を見つけた。一人は見知らぬ男子高校生、もう一人はミノリちゃんだ。困ったような表情で俯いている。彼女の手首は隣に座る男子高校生に掴まれていた。
 それを見て、何も考えずに突っ込む。

「な、なんだよコイツ!」

 突然間に割り込んできた俺に対し、男子高校生が声を上げた。近くで見ると、かなりガタイが良い。ショウゴほどではないが身長もある。
 ソイツは無視して、まずは二人の手を引き剥がす。不意を突いたおかげか、すんなり離れた。

「プーさん……?」

 青褪めたままのミノリちゃんを背に庇い、男子高校生と真正面から対峙する。

「誰だオマエ。なんで邪魔するんだよ」
「…………」
「おい、なんか言えよ!」

 ホント待って、声が出ない。
 数年振りに全力で走ったから脇腹は痛いし、まだ全然呼吸が整ってなくて苦しい。こっちは肩で息をするのがやっとの状態なんだよ。喋るとか無理。あー、でもやっと日陰に入れた。日陰最高。ミノリちゃんと公園。こんな状況じゃなければもっと良かったのにな。

 男子高校生……ストーカー野郎・須崎すざきは不機嫌さを隠しもせず、突如現れたお邪魔虫である俺を睨み付けている。

「オマエもミノリさんとの仲を邪魔するのか。どいつもこいつも何で僕たちの仲を引き裂こうとするんだよ!!」
「…………」

 須崎の怒鳴り声に、後ろにいるミノリちゃんがビクッと身体を揺らした。俺のパーカーの裾を掴む手が震えている。

「ミノリさん、こっちにおいでよ」
「い、いや。行かない」
「なんで? 僕を怒らせたいの?」

 ミノリちゃんに話し掛ける時の須崎の表情と声は優しいが、圧が感じられた。力で相手を従わせようとする奴の態度だ。間に挟まれてようやく気付けるくらいの違和感。

 間違いない。
 須崎はミノリちゃんを支配しようとしている。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

スマホゲーム王

ルンルン太郎
ライト文芸
主人公葉山裕二はスマホゲームで1番になる為には販売員の給料では足りず、課金したくてウェブ小説を書き始めた。彼は果たして目的の課金生活をエンジョイできるのだろうか。無謀な夢は叶うのだろうか。

ephemeral house -エフェメラルハウス-

れあちあ
恋愛
あの夏、私はあなたに出会って時はそのまま止まったまま。 あの夏、あなたに会えたおかげで平凡な人生が変わり始めた。 あの夏、君に会えたおかげでおれは本当の優しさを学んだ。 次の夏も、おれみんなで花火やりたいな。 人にはみんな知られたくない過去がある それを癒してくれるのは 1番知られたくないはずの存在なのかもしれない

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...