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8話・彼女の悩み2
しおりを挟む「付きまとわれてる?」
俺が聞き返すと、ミノリちゃんは真剣な表情で小さく頷いた。いつのまにかキッチリ正座をして、両手は膝の上で固く握り締められている。この話をするだけで緊張しているのか。
「中学一年の時に告白されて断ったんだけど、それ以来ずっと追い掛けられてて……」
「そ、それは随分と熱烈だね」
ミノリちゃんは今高校二年生だから、最初の告白から約五年。一途といえば聞こえはいいが、当事者からすればたまったものではないだろう。
「なんでそんなに好かれてんの?」
「わからない。私なにかしたかな」
そう言いながら、彼女は赤く染まった頬と潤んだ瞳をこちらに向けてきた。
う~ん、なんか分かる気がするけど、思ったままを伝えたらミノリちゃんが悲しむ気がしたので口を噤む。
「彼の部活がない日は校門で待ち伏せされてるの。だから学校が終わったら裏口から速攻で帰ってたんだけど、最近家の場所がバレちゃって」
「そ、それってまさか」
「リエが勝手に教えてた」
あ、あいつ~~!
ショウゴに連絡先を教えただけじゃなく、同級生のストーカー男子にまで個人情報を漏らしてやがった!
「リエは『いっぺん付き合ってみりゃいーじゃん!』って言うんだけど」
「あいつマジで最悪だな」
「悪気はないんだと思う」
度重なる情報漏洩の被害に遭いながらも、ミノリちゃんはリエを擁護した。例え良かれと思ってした行動だとしても、本人が嫌がっていることを強いるのは間違っている。
「うち親は共働きだし、彼は外ヅラがいいからおじいちゃん達じゃうっかり家にあげちゃいそうだし、……行き場がなくて」
そうだったのか。彼女が漫画に興味を持っているのは本当だけど、借りずにここで読んで時間を潰していたのはやむを得ない理由があったから。ここに来るのは俺に気があるからじゃないかとちょっぴり期待していた楽観的な自分を殴りたい。
彼女は安心して過ごせる場所を探してここに行き着いただけ。
「好きなだけここに居なよ」
「いいの? 迷惑じゃない?」
「俺はいつも暇してるし、ミノリちゃんが話し相手になってくれたら嬉しいよ」
これは嘘じゃない。何もせずダラダラと過ごす時間の中で、彼女といる時だけが有意義に感じられた。この場所が彼女に必要不可欠なものだと分かってからは尚更だ。
「ありがとプーさん」
「どういたしまして」
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