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【番外編】最終話以降のお話
35話・運の尽き
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「あんた、なにか仕掛けただろ」
ソファーの上で仰向けに転がる九里峯に馬乗りになり、逃げられないようにしてから鍬沢は尋ねた。
「仰ってる意味が……」
「五月蝿い、黙れ」
「ええ~……?」
質問しておきながら返答を遮った。普通に尋ねたところで都合の悪い事実は隠すに決まっている。
「最初はホントに焦ったんですよ。この僕があんたのことばかり考えるなんて、どこかおかしくなったんじゃないかと」
家にいる時。
出掛けた先。
何かの折に思い出す。
例外は仕事中だけ。
「このまえ阿志雄さんたちと一緒に御霊泉の神社に行った時にようやく分かったんですよ。僕があんたのことばかり思い出してしまう理由」
料理に使う湧き水を汲むために行った県境にある神社。境内はゴミだらけで地元の住民は困り果てていた。
その原因は、神社仏閣で悪ノリをして再生回数を増やしていた動画配信者。彼らのファンによる聖地巡礼で荒らされていた。だが、今はもうゴミを散らかす輩は訪れない。大元の動画と配信者のアカウントが削除されたからだ。
阿志雄から「境内のゴミがなくなってる」と言われた時、鍬沢の中で何かが繋がった。
「前に『動画配信会社に知り合いがいる』って言ってましたよね。あんたが頼んで例の動画を削除させた」
「ええ」
「今回のイタリアブームも始まりは動画配信からなんですよ。丁度あんたがイタリアにいる間の話だ」
有名な男性料理研究家が動画配信でイタリア料理を取り上げ、そこからブームに火がついた。
「もしかして、次に何が当たるか調査した上でやらせたんじゃないですか」
以前の九里峯は市場のニーズを調査するリサーチ会社を運営していた。今の仕事内容も情報収集と根回しが中心。彼の手に掛かれば『次の流行』を予想するだけではなく作り出すことも不可能ではない。
「そんなことをして私に何の得が?」
「無理を聞いてもらった見返りとか」
「……」
個人的な頼みで指定の動画配信者のアカウントを削除させたのだ。もともと問題のある動画が多かったとはいえ、法に触れたり誰かに危害を加えたわけではない。神社を荒らしたのだって彼ら自身ではなく一部のファンの仕業。本来ならば運営側が動くはずのない案件だった。
動画を通じて意図的に新たなブームを起こせば再生回数は跳ね上がり、動画配信会社の利益に繋がる。私的な頼みをきいた見返りとしては十分過ぎるほどだ。
「あんたからイタリア土産を貰った頃、イタリアブームが全国に広まった。おかげで、どこに行っても必ず目にするようになった」
きっかけはネットの動画配信だが、ブームになれば度々テレビにも取り上げられる。街中にあるスーパーやコンビニではイタリアンフェアの垂れ幕や旗が立ち、売り場には輸入品があふれる。
それらを見掛けるたびに九里峯を思い出した。
そう仕向けるため、必ず興味を持つであろうレシピ本を土産として渡した。嫌いな相手から貰ったとはいえ、料理に関するものを粗末に扱ったりしないと確信していたから。
「単なる副産物に過ぎないでしょうが、効果はありましたよ。僕はイタリア関連のなにかを見るたびに、まんまとあんたを思い出してたってわけです」
鍬沢は眉間にしわを寄せ、不機嫌さを隠しもしない。九里峯の思惑通りになってしまっている自分に呆れているのだろう。
「副産物は世間の流行のほうですよ。私は最初からあなたの気を引くためだけに動いていたのですから」
仰向けのまま九里峯は手を伸ばした。しかめっ面をした鍬沢の髪に触れ、そのまま指を滑らせて頬を撫でる。
「こう見えて必死なんですよ。あなたには嫌われてますから、少しでも私の存在を刻みつけたくて思いつく限りの手段を講じました」
「……馬鹿馬鹿しい」
「ええ、自分でも滑稽だと思います」
頬を撫でていた指先が唇をなぞっても、鍬沢は振り払わない。組み敷いた九里峯を見下ろしている。
「そういう回りくどいことをする前に、言うべきことがあるんじゃないか」
不満げな言葉に首を傾げる。
企みは全て暴かれた。
隠していることは何もない。
「……あんたは僕をどう思ってるんですか」
これまで、九里峯は自分の都合を優先させてきた。勝算のない賭けに出るのが怖くて、気を引くための行動ばかりしてきた。
今までされてきたことの意図を鍬沢は知らない。相手の目的が分からなければ不安になって当たり前だというのに。
「好きですよ。あなたが思うよりずっと」
真っ直ぐ見つめ返し、九里峯は想いを打ち明けた。本当はもっと時間をかけたかった。じっくり自分の存在を刻み込むつもりだった。これ以上引き延ばせないところまで来た。
口を割らせた張本人は告白を聞いて黙り込み、じっと九里峯を見下ろしている。しばらく沈黙した後、はあ、と大きな溜め息を吐き出した。
「思い通りになんか、絶対なりたくなかったのに」
唇を噛み、眉をしかめながら、鍬沢は涙をこぼした。涙が滴り、九里峯の頬に落ちる。
「最初は笑顔に惹かれましたが、あなたの泣き顔も好きです。ずっと見ていたい」
「……悪趣味」
「心外ですね」
「僕、あんたの前で笑ったことあった?」
「ありますよ。一度だけ」
偶然を装って小料理屋に行った時のこと。
帰り道の途中で「ざまあみろ」と振り返りながら見せた屈託のない笑顔が琴線に触れた。
そして、御霊泉の神社で鉢合わせた時。
車の中で、不意をついてキスをしたら泣かせてしまった。その泣き顔が九里峯の心臓を鷲掴みにした。
「あんたは平気で女を騙すクズ野郎だ」
「平気ではないですよ」
突然昔の悪事を責められ、九里峯は冷や汗をかいた。目的のために片桐に近付き、交際を餌に色々と無理を強いたが、誓って手は出していない。数回食事を共にしただけ。
「食材に敬意を払わないし」
「その件は私が全面的に悪い。申し訳ない」
鍬沢の怒りを勝った一番の理由はやはり食品偽装だ。逆に言えば、これがなければ接点すらなかった。
「個人情報を勝手に調べるし」
「反省はしています」
教えてもない連絡先を知っていたり、行く先々に現れたり。涼しい顔をしてプライベートを暴き、踏み込んでくる。下手をすれば、このアパートの合鍵くらい勝手に作りかねない。
「二度とやらないと誓ってください」
「…………善処します」
過去のことは心から反省している。今は新会社の副社長という立場もある。九里峯自身が直接調査のために動くことはほとんど無いが、必要と思えば勝手に体が動くだろう。守れない約束をするわけにもいかず、九里峯は明言を避けた。
「──あんたなんか大嫌いだ」
シャツの袖で乱暴に涙を拭う鍬沢の手を掴んで止め、九里峯は上半身を起こした。
面と向かって嫌いだと言われたのに、何故か口元はゆるんでいる。今の言葉が本心ではないと態度から感じ取っているからだ。
「泣いたり怒ったりする顔が見てみたいと思える相手はあなたが初めてです」
「性格が悪過ぎる」
「私なんかに気に入られて災難でしたね」
「ホントに最悪」
振り解くこともせず、鍬沢は大人しく腕の中に収まった。口では文句を言いつつも受け入れている。その証拠に、顎を掴んで顔を上に向けさせても身体を強張らせるだけで抵抗ひとつしない。
「私とお付き合いしていただけますか?」
「……」
「嫌だと言われても追いかけますけどね」
「は?」
悪態以外の返事をしない様子が可愛く思えて、九里峯は返事を聞く前に唇を重ねた。二度目の口付けも同意する前にされてしまい、さすがに鍬沢も抵抗したが、どんなにもがいても逃れられない。
しばらくして、ようやく解放された頃にはすっかり息が上がってしまった。
「……くそ、酔ってたんじゃないのか」
部屋に招き入れたのは苦手な洋酒を飲ませ、酔わせて優位に立つため。それなのに結局されるがままになっている。納得できずに文句を言うと、九里峯は肩を揺らして笑った。
「確かに悪酔いはしますが、前後不覚になるわけではありませんよ。あの程度の量なら仕事の付き合いで飲みますし」
仕事で取り引き先と食事をすることも珍しくはない。円滑にやり過ごすため、出された酒を一杯付き合うくらいはする。
「それに『悪酔い』と言っても色々ありますからね。私の場合は『普段より饒舌になる』くらいです。つい余計なことまで喋ってしまうので、人前では避けているんですよ」
「なっ……!」
つまり、鍬沢の狙いは当てが外れていたということだ。十も年上の男に策で勝つなど最初から無理な話だったのかもしれない。
「泊まってもいいですか」
「いいわけないだろ、出てけ」
「タクシー帰してしまいましたけど」
「もう一度呼べば済むだろ。東京行きの新幹線はまだあるし、あんただって仕事があるだろうが」
今は月曜の夜。
お互い明日は仕事だ。
「分かりました。今日は帰ります」
離れがたい気持ちを抑え、九里峯は大人しく引き下がった。無理に居座って嫌われたくはない。以前よりマシになったとはいえ、手放しで好かれているわけではないと理解している。
「また連絡します。今度は着信拒否しないでくださいね」
「……」
仕事用の名刺の裏にプライベートの番号を書き込んで手渡すが、鍬沢からの返事はない。突き返してこないところをみると、無言の肯定のようだ。
あとどれくらいの時間を掛けたら素直に応えてくれるだろうか、と九里峯は目を細めた。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
作中のイラストは、小鳥遊 蒼さまから頂戴いたしました~!
涙を袖で拭う鍬沢くんと九里峯のツーショット
作中の場面を完全再現!
素晴らしいイラスト、ありがとうございます!
ソファーの上で仰向けに転がる九里峯に馬乗りになり、逃げられないようにしてから鍬沢は尋ねた。
「仰ってる意味が……」
「五月蝿い、黙れ」
「ええ~……?」
質問しておきながら返答を遮った。普通に尋ねたところで都合の悪い事実は隠すに決まっている。
「最初はホントに焦ったんですよ。この僕があんたのことばかり考えるなんて、どこかおかしくなったんじゃないかと」
家にいる時。
出掛けた先。
何かの折に思い出す。
例外は仕事中だけ。
「このまえ阿志雄さんたちと一緒に御霊泉の神社に行った時にようやく分かったんですよ。僕があんたのことばかり思い出してしまう理由」
料理に使う湧き水を汲むために行った県境にある神社。境内はゴミだらけで地元の住民は困り果てていた。
その原因は、神社仏閣で悪ノリをして再生回数を増やしていた動画配信者。彼らのファンによる聖地巡礼で荒らされていた。だが、今はもうゴミを散らかす輩は訪れない。大元の動画と配信者のアカウントが削除されたからだ。
阿志雄から「境内のゴミがなくなってる」と言われた時、鍬沢の中で何かが繋がった。
「前に『動画配信会社に知り合いがいる』って言ってましたよね。あんたが頼んで例の動画を削除させた」
「ええ」
「今回のイタリアブームも始まりは動画配信からなんですよ。丁度あんたがイタリアにいる間の話だ」
有名な男性料理研究家が動画配信でイタリア料理を取り上げ、そこからブームに火がついた。
「もしかして、次に何が当たるか調査した上でやらせたんじゃないですか」
以前の九里峯は市場のニーズを調査するリサーチ会社を運営していた。今の仕事内容も情報収集と根回しが中心。彼の手に掛かれば『次の流行』を予想するだけではなく作り出すことも不可能ではない。
「そんなことをして私に何の得が?」
「無理を聞いてもらった見返りとか」
「……」
個人的な頼みで指定の動画配信者のアカウントを削除させたのだ。もともと問題のある動画が多かったとはいえ、法に触れたり誰かに危害を加えたわけではない。神社を荒らしたのだって彼ら自身ではなく一部のファンの仕業。本来ならば運営側が動くはずのない案件だった。
動画を通じて意図的に新たなブームを起こせば再生回数は跳ね上がり、動画配信会社の利益に繋がる。私的な頼みをきいた見返りとしては十分過ぎるほどだ。
「あんたからイタリア土産を貰った頃、イタリアブームが全国に広まった。おかげで、どこに行っても必ず目にするようになった」
きっかけはネットの動画配信だが、ブームになれば度々テレビにも取り上げられる。街中にあるスーパーやコンビニではイタリアンフェアの垂れ幕や旗が立ち、売り場には輸入品があふれる。
それらを見掛けるたびに九里峯を思い出した。
そう仕向けるため、必ず興味を持つであろうレシピ本を土産として渡した。嫌いな相手から貰ったとはいえ、料理に関するものを粗末に扱ったりしないと確信していたから。
「単なる副産物に過ぎないでしょうが、効果はありましたよ。僕はイタリア関連のなにかを見るたびに、まんまとあんたを思い出してたってわけです」
鍬沢は眉間にしわを寄せ、不機嫌さを隠しもしない。九里峯の思惑通りになってしまっている自分に呆れているのだろう。
「副産物は世間の流行のほうですよ。私は最初からあなたの気を引くためだけに動いていたのですから」
仰向けのまま九里峯は手を伸ばした。しかめっ面をした鍬沢の髪に触れ、そのまま指を滑らせて頬を撫でる。
「こう見えて必死なんですよ。あなたには嫌われてますから、少しでも私の存在を刻みつけたくて思いつく限りの手段を講じました」
「……馬鹿馬鹿しい」
「ええ、自分でも滑稽だと思います」
頬を撫でていた指先が唇をなぞっても、鍬沢は振り払わない。組み敷いた九里峯を見下ろしている。
「そういう回りくどいことをする前に、言うべきことがあるんじゃないか」
不満げな言葉に首を傾げる。
企みは全て暴かれた。
隠していることは何もない。
「……あんたは僕をどう思ってるんですか」
これまで、九里峯は自分の都合を優先させてきた。勝算のない賭けに出るのが怖くて、気を引くための行動ばかりしてきた。
今までされてきたことの意図を鍬沢は知らない。相手の目的が分からなければ不安になって当たり前だというのに。
「好きですよ。あなたが思うよりずっと」
真っ直ぐ見つめ返し、九里峯は想いを打ち明けた。本当はもっと時間をかけたかった。じっくり自分の存在を刻み込むつもりだった。これ以上引き延ばせないところまで来た。
口を割らせた張本人は告白を聞いて黙り込み、じっと九里峯を見下ろしている。しばらく沈黙した後、はあ、と大きな溜め息を吐き出した。
「思い通りになんか、絶対なりたくなかったのに」
唇を噛み、眉をしかめながら、鍬沢は涙をこぼした。涙が滴り、九里峯の頬に落ちる。
「最初は笑顔に惹かれましたが、あなたの泣き顔も好きです。ずっと見ていたい」
「……悪趣味」
「心外ですね」
「僕、あんたの前で笑ったことあった?」
「ありますよ。一度だけ」
偶然を装って小料理屋に行った時のこと。
帰り道の途中で「ざまあみろ」と振り返りながら見せた屈託のない笑顔が琴線に触れた。
そして、御霊泉の神社で鉢合わせた時。
車の中で、不意をついてキスをしたら泣かせてしまった。その泣き顔が九里峯の心臓を鷲掴みにした。
「あんたは平気で女を騙すクズ野郎だ」
「平気ではないですよ」
突然昔の悪事を責められ、九里峯は冷や汗をかいた。目的のために片桐に近付き、交際を餌に色々と無理を強いたが、誓って手は出していない。数回食事を共にしただけ。
「食材に敬意を払わないし」
「その件は私が全面的に悪い。申し訳ない」
鍬沢の怒りを勝った一番の理由はやはり食品偽装だ。逆に言えば、これがなければ接点すらなかった。
「個人情報を勝手に調べるし」
「反省はしています」
教えてもない連絡先を知っていたり、行く先々に現れたり。涼しい顔をしてプライベートを暴き、踏み込んでくる。下手をすれば、このアパートの合鍵くらい勝手に作りかねない。
「二度とやらないと誓ってください」
「…………善処します」
過去のことは心から反省している。今は新会社の副社長という立場もある。九里峯自身が直接調査のために動くことはほとんど無いが、必要と思えば勝手に体が動くだろう。守れない約束をするわけにもいかず、九里峯は明言を避けた。
「──あんたなんか大嫌いだ」
シャツの袖で乱暴に涙を拭う鍬沢の手を掴んで止め、九里峯は上半身を起こした。
面と向かって嫌いだと言われたのに、何故か口元はゆるんでいる。今の言葉が本心ではないと態度から感じ取っているからだ。
「泣いたり怒ったりする顔が見てみたいと思える相手はあなたが初めてです」
「性格が悪過ぎる」
「私なんかに気に入られて災難でしたね」
「ホントに最悪」
振り解くこともせず、鍬沢は大人しく腕の中に収まった。口では文句を言いつつも受け入れている。その証拠に、顎を掴んで顔を上に向けさせても身体を強張らせるだけで抵抗ひとつしない。
「私とお付き合いしていただけますか?」
「……」
「嫌だと言われても追いかけますけどね」
「は?」
悪態以外の返事をしない様子が可愛く思えて、九里峯は返事を聞く前に唇を重ねた。二度目の口付けも同意する前にされてしまい、さすがに鍬沢も抵抗したが、どんなにもがいても逃れられない。
しばらくして、ようやく解放された頃にはすっかり息が上がってしまった。
「……くそ、酔ってたんじゃないのか」
部屋に招き入れたのは苦手な洋酒を飲ませ、酔わせて優位に立つため。それなのに結局されるがままになっている。納得できずに文句を言うと、九里峯は肩を揺らして笑った。
「確かに悪酔いはしますが、前後不覚になるわけではありませんよ。あの程度の量なら仕事の付き合いで飲みますし」
仕事で取り引き先と食事をすることも珍しくはない。円滑にやり過ごすため、出された酒を一杯付き合うくらいはする。
「それに『悪酔い』と言っても色々ありますからね。私の場合は『普段より饒舌になる』くらいです。つい余計なことまで喋ってしまうので、人前では避けているんですよ」
「なっ……!」
つまり、鍬沢の狙いは当てが外れていたということだ。十も年上の男に策で勝つなど最初から無理な話だったのかもしれない。
「泊まってもいいですか」
「いいわけないだろ、出てけ」
「タクシー帰してしまいましたけど」
「もう一度呼べば済むだろ。東京行きの新幹線はまだあるし、あんただって仕事があるだろうが」
今は月曜の夜。
お互い明日は仕事だ。
「分かりました。今日は帰ります」
離れがたい気持ちを抑え、九里峯は大人しく引き下がった。無理に居座って嫌われたくはない。以前よりマシになったとはいえ、手放しで好かれているわけではないと理解している。
「また連絡します。今度は着信拒否しないでくださいね」
「……」
仕事用の名刺の裏にプライベートの番号を書き込んで手渡すが、鍬沢からの返事はない。突き返してこないところをみると、無言の肯定のようだ。
あとどれくらいの時間を掛けたら素直に応えてくれるだろうか、と九里峯は目を細めた。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
作中のイラストは、小鳥遊 蒼さまから頂戴いたしました~!
涙を袖で拭う鍬沢くんと九里峯のツーショット
作中の場面を完全再現!
素晴らしいイラスト、ありがとうございます!
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