110 / 142
【番外編】最終話以降のお話
9話・悪い虫
しおりを挟む「おかえり。無事帰って来てくれてうれしいよ」
コノハは満面の笑みで静葉を迎えた。遺跡を沈めた地下水脈にはあらかじめオアシス地下の拠点までの道が用意されており、簡単に帰ることができた。拠点の実験室にはすでにベアードとティータが帰還していた。ティータは頬に絆創膏を貼り、右腕にギブスを巻いている。
「いやぁ、今回はやばかったわぁ。あの僧侶、洒落にならんでホンマ」
「マジで?そんなにやべぇのいたの?」
二人は椅子に座って雑談していた。静葉はその話題になっている僧侶の遺体を脇に抱えている。それを見たティータは目玉をひん剥いて驚いた。
「うお!?それなんスか魔勇者様?」
「そこの支部長様に持ってこいと言われてね」
静葉は溜息をついた。彼女の右腕は遺体から流れている血によって赤く汚れている。
「お、それそれ。彼女の身体はそこに置いといて」
「わかったわ」
コノハにそう指示されて静葉はメイリスの遺体を研究用のテーブルの上に寝かせた。
「あと、これね」
静葉はポーチから取り出した聖剣の刀身をコノハに渡した。
「…うん、この白銀の輝き…間違いなく聖剣エクセリオンだね」
「本当にそれで裏の伝説がわかるの?」
静葉は質問した。
「ん?まぁ、そうだね。他に有力な手掛かりもあるしね」
「他?」
「なんでもない。とにかく、これで任務は完了だよ。三人ともお疲れ様。あとは食事でもとってゆっくり休んでね」
コノハは労いの言葉を送りながら道具箱をいじり出した。
「そう…それじゃお言葉に甘えるとするわ」
「いやー、腹減ったぜ」
「ほんまやな。あ、この有様やから食うの手伝ってな」
三人はぞろぞろと実験室を後にした。
「さて…と…」
三人を見送ったコノハはテーブルに寝かせた僧侶に目を向けた。
「…ゆっくりと休めたかい?僧侶様?」
コノハが声をかけると僧侶はパチリと目を開き、声の主に顔を向けた。
「…おかげさまでね。もう少し良いベッドに寝かせてほしかったけどね」
「おっと、気が利かなくてごめんね。アハハ」
コノハは笑いながら答えた。
「それにしてもすごいね。あれだけのダメージを受けたにも関わらずもう動けるようになってるなんてね」
「えぇ、その代わりだいぶお腹すいたけどね」
メイリスは身体を起こし、修道士服の穴の開いた部分を指さした。そこから見える胸部には魔勇者が黒い炎の手刀で貫いた風穴があったはずだが、まるで何事もなかったかのように塞がっていた。
「へぇ、ここまでキレイに塞がるとはねえ」
コノハは何も動じることはなくその色白の肌を直視していた。
「あら、お姉さんのセクシーなお胸を見て何とも思わないの?」
メイリスは期待した反応を得られず不満げに尋ねた。
「人間の裸体は男女問わず実験の過程でたくさん見てきたからね。それに、こう見えて長生きなんだよ僕」
コノハは肩を竦めた。
「あらそう…残念ね」
メイリスは溜息をついた。
「…ところで、いつ気づいたの?」
胸部をさすりながら彼女は尋ねた。
「あなたが魔勇者様に一撃入れた時かな。あれほどの威力、僧侶に…いや、どんな達人でも人間には出すことはできないはず」
「へえ?」
「生物は肉体の自壊を防ぐために無意識に筋力を抑制している。たとえ魔力や薬物を用いて上乗せしても潜在能力の数パーセント程度しか力を発揮することはできない」
コノハは淡々と説明した。
「…しかし、そのような枷が存在しない種族が存在している。魔王軍には珍しくないけどね。つまり…」
「ええ、ご明察よ」
メイリスは足を下ろし、テーブルに端座位になった。その足をなまめかしく組みながら彼女は答えた。
「そう。私は不死の人間……いわゆるアンデッドよ」
コノハは満面の笑みで静葉を迎えた。遺跡を沈めた地下水脈にはあらかじめオアシス地下の拠点までの道が用意されており、簡単に帰ることができた。拠点の実験室にはすでにベアードとティータが帰還していた。ティータは頬に絆創膏を貼り、右腕にギブスを巻いている。
「いやぁ、今回はやばかったわぁ。あの僧侶、洒落にならんでホンマ」
「マジで?そんなにやべぇのいたの?」
二人は椅子に座って雑談していた。静葉はその話題になっている僧侶の遺体を脇に抱えている。それを見たティータは目玉をひん剥いて驚いた。
「うお!?それなんスか魔勇者様?」
「そこの支部長様に持ってこいと言われてね」
静葉は溜息をついた。彼女の右腕は遺体から流れている血によって赤く汚れている。
「お、それそれ。彼女の身体はそこに置いといて」
「わかったわ」
コノハにそう指示されて静葉はメイリスの遺体を研究用のテーブルの上に寝かせた。
「あと、これね」
静葉はポーチから取り出した聖剣の刀身をコノハに渡した。
「…うん、この白銀の輝き…間違いなく聖剣エクセリオンだね」
「本当にそれで裏の伝説がわかるの?」
静葉は質問した。
「ん?まぁ、そうだね。他に有力な手掛かりもあるしね」
「他?」
「なんでもない。とにかく、これで任務は完了だよ。三人ともお疲れ様。あとは食事でもとってゆっくり休んでね」
コノハは労いの言葉を送りながら道具箱をいじり出した。
「そう…それじゃお言葉に甘えるとするわ」
「いやー、腹減ったぜ」
「ほんまやな。あ、この有様やから食うの手伝ってな」
三人はぞろぞろと実験室を後にした。
「さて…と…」
三人を見送ったコノハはテーブルに寝かせた僧侶に目を向けた。
「…ゆっくりと休めたかい?僧侶様?」
コノハが声をかけると僧侶はパチリと目を開き、声の主に顔を向けた。
「…おかげさまでね。もう少し良いベッドに寝かせてほしかったけどね」
「おっと、気が利かなくてごめんね。アハハ」
コノハは笑いながら答えた。
「それにしてもすごいね。あれだけのダメージを受けたにも関わらずもう動けるようになってるなんてね」
「えぇ、その代わりだいぶお腹すいたけどね」
メイリスは身体を起こし、修道士服の穴の開いた部分を指さした。そこから見える胸部には魔勇者が黒い炎の手刀で貫いた風穴があったはずだが、まるで何事もなかったかのように塞がっていた。
「へぇ、ここまでキレイに塞がるとはねえ」
コノハは何も動じることはなくその色白の肌を直視していた。
「あら、お姉さんのセクシーなお胸を見て何とも思わないの?」
メイリスは期待した反応を得られず不満げに尋ねた。
「人間の裸体は男女問わず実験の過程でたくさん見てきたからね。それに、こう見えて長生きなんだよ僕」
コノハは肩を竦めた。
「あらそう…残念ね」
メイリスは溜息をついた。
「…ところで、いつ気づいたの?」
胸部をさすりながら彼女は尋ねた。
「あなたが魔勇者様に一撃入れた時かな。あれほどの威力、僧侶に…いや、どんな達人でも人間には出すことはできないはず」
「へえ?」
「生物は肉体の自壊を防ぐために無意識に筋力を抑制している。たとえ魔力や薬物を用いて上乗せしても潜在能力の数パーセント程度しか力を発揮することはできない」
コノハは淡々と説明した。
「…しかし、そのような枷が存在しない種族が存在している。魔王軍には珍しくないけどね。つまり…」
「ええ、ご明察よ」
メイリスは足を下ろし、テーブルに端座位になった。その足をなまめかしく組みながら彼女は答えた。
「そう。私は不死の人間……いわゆるアンデッドよ」
0
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい
《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法
《 異世界最強魔法使い総受 》
魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話
《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
さよならの向こう側
よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる