45 / 142
第4章 公然の秘密と謎の男
45話・社長との関係 1
しおりを挟む「社長名義の部屋に住んでるって、なんで」
「誰も住まないと部屋が傷みますから。換気や掃除もしたいですし」
引き攣った顔を隠すように阿志雄は穂堂から顔をそらした。動揺を落ち着かせるためにグラスを呷る。
淡々と理由を述べる穂堂は普段と変わらぬ様子で、今の言葉が嘘ではないと分かった。
「定期的に水を流さないと水道管の劣化が早まったり下水のにおいが上がってきたりするそうですよ」
「へぇ……知りませんでした」
「通いで対応すると提案したのですが、それなら住めばいいと社長が仰るので」
「そうなんですか」
だが、聞きたいのは部屋の管理の必要性ではない。何故そんなことを頼まれたのか、だ。
──社長からマンションを与えられているなんて、まるで囲われている愛人みたいじゃないか。
これまで得た情報からは『そう』としか思えなくなり、阿志雄は躊躇いがちに口を開いた。
「前から聞きたかったんですけど、……穂堂さんて翁崎社長とどういう関係なんすか」
これまで何度も社内で目撃している。
社長が穂堂と親しげに話し、頭を撫でているところを。「徹」と下の名前で呼んでいることも知っている。先日は穂堂が出先で買った土産を渡し、阿志雄や鍬沢と出掛けたことを楽しげに話してくれたと社長本人から聞かされた。
穂堂はキョトンとした顔で阿志雄を見つめ、しばらくしてから「ああ」と納得したように何度か頷いた。
「そうか、君は知らないんですね」
「何をですか」
「司田辺さんも、何の説明もせずに阿志雄くんに妙なことを頼んで……さぞ不思議に思ったでしょうね」
表情は変わらないが、頬が僅かに赤い。もう酔いが回ってきたのだろうか。口調も普段より柔らかい気がした。
「社長は『家族』なんですか?」
「……そう、ですね。少なくとも私はそう思っています」
わざと『家族』という言葉を使って尋ねれば、やはり穂堂は歯切れの悪い、微妙な反応をした。
「兄弟じゃないですよね。親戚とか?」
「いえ、血の繋がりはありません。養子などの書類上の親族でもありません」
身内ならば所有しているマンションを貸し出すことは有り得る。親しげな態度も納得出来る。
しかし、血縁ではなく戸籍も違うのならば、一体どんな関係だと言うのか。
「家族って……」
それは家族と呼べるのか、と言い掛けて阿志雄は口を噤んだ。穂堂が悲しげな顔を見せた気がしたからだ。普段の彼ならば抑え込んでいたであろう感情が、酔いで隠しきれなくなっているのかもしれない。
僅かに下げられた眉を見て、阿志雄は焦った。
「あの、すみません。無理に聞きたいってワケじゃなくてですね。言いたくないなら言わなくても、オレは全然──」
気にはなるが、悲しませてまで真実を知りたいとは思わない。慌てて弁解すると、焦る阿志雄が滑稽に見えたからだろうか、穂堂はフッと表情を緩めた。
「いいんですよ。別に隠していることではないですし、年配の社員は皆さん知っていますから」
積極的に広めたい話でもないですがと前置きしてから、穂堂は話し始めた。
【本社社長 翁崎 学】
0
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい
《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法
《 異世界最強魔法使い総受 》
魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話
《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる