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第4章 公然の秘密と謎の男
31話・気になる関係
しおりを挟む月曜の朝、阿志雄は浮かれていた。親しくなりたいと願っていた穂堂とようやく個人の連絡先を交換したからだ。
二人きりではないけれど、なんだかんだで社外で食事したり遠出をしたりと一緒に過ごしている。これからも時々都合を合わせて食事や遊びに行けたら、と期待しながらバスを降りる。爽やかな春の風を受け、阿志雄は軽い足取りで会社に向かった。
最寄りのバス停から本社までは遠い。不便な立地だが、地方都市在住者はほぼ全員マイカー通勤である。公共の交通機関を利用しているのは支社からの転勤組くらいなものだ。
会社の門をくぐると、敷地内の駐車場から続々とマイカー通勤組が歩いてくるところだった。人の波に流されるようにして社屋に入る。そこで阿志雄の視界に見慣れた後ろ姿が入った。
「穂堂さんだ」
数メートル先に穂堂を見つけ、早速声を掛けようとするが、営業部と総務部はフロアが違う。エレベーターを使う阿志雄と階段で向かう穂堂はエントランスを抜けた先は別ルートだ。
エレベーター待ちの人垣越しに穂堂を見れば、手には仕事用カバンとは別に紙袋を提げていた。サービスエリアの紙袋だとすぐに気付く。土産物コーナーで色々と買っていたから、同じ総務の仲間に持っていくのだろうと阿志雄は思った。
しかし。
「おや、君は」
「お疲れサマです……翁崎社長」
昼休みが始まる少し前。
午後イチからの打ち合わせに出掛けるため、エレベーターに乗り込もうとした阿志雄は、先に乗っていた人の姿を見て一瞬動きを止めた。株式会社ケルストの社長、翁崎 学だ。以前、穂堂と話しているところを妨害してしまったことを思い出し、阿志雄は気まずい気持ちでそっと隅に乗った。
「君も下まで?」
「は、はい」
誰とでもすぐ打ち解けられる性格だが、社長相手では勝手が違う。平社員が軽々しく話し掛けるわけにもいかず、エレベーターが一階に到着するまで阿志雄は口を噤んだ。
密室での無言状態に耐え切れず視線を泳がせると、隣に立つ社長が持っている紙袋に目がいった。あのサービスエリアの紙袋だ。視線に気付いた社長は、ふふっと笑いながら紙袋を掲げてみせた。
「週末一緒に遊びに行ったんだって?徹がずいぶん楽しそうに話をしてくれたよ」
「あ、はい。楽しかったです……」
「あの子と仲良くしてくれてありがとう」
エレベーターは一階へと到着した。
開いた扉から先に出て行く社長の後ろ姿を見送りながら、阿志雄はただ茫然と立ち尽くしていた。
「穂堂さんが社長にお土産を……?」
サービスエリアで土産物コーナーで声を掛けた時「家族に土産ですか」と聞いたら微妙な表情を浮かべつつ頷いていた。誰に渡すかまでは確認していない。
「社長と穂堂さんって、家族じゃないよな?」
まず苗字が違う。穂堂は二十九才、翁崎社長は四十代半ば。親子にしては年齢が近いし、兄弟というには離れすぎている。ならば従兄弟や義理の兄弟だろうか。
社長は穂堂のことを下の名前で呼んでいる。
ふたりは一体どんな関係なのか。
ぐるぐると考えながらエレベーターから降り、よろよろとエントランスを歩く。
朝の浮かれた気分から一転、阿志雄は重い足取りで打ち合わせ先に向かった。
【本社社長 翁崎 学】
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