17 / 26
第17話~第1番艦大和との惜別、戦闘へ~
しおりを挟む
昭和20年4月7日14時23分、戦艦大和は坊ノ岬沖にて激戦の末に大爆発を起し、キノコ雲を最後に日本国いや日本国民へ別れを告げた。
桔梗丸は大和の最後を看取っていた。
守るべき戦闘機隊のないまま孤立無援の状態で、手ぐすね引いて待っているアメリカ大艦隊のところに大和を沖縄へ行かせる(特攻強行作戦の)意味があったのか。海軍にそのことを止める将校がいなかったのか。理解に苦しむと九鬼は唇をかみしめた。
桔梗丸の甲板では船員皆泣いていた。
「兄様(第一号艦大和)へ敬礼。」福士は喉が潰れるような大声で叫んだ。
全船員が敬礼したところに、バアーンと唸る音が近づいて来る。米軍の戦闘機3機が桔梗丸をターゲットに選んだ。
「(九鬼)船頭、魚雷が左側方よりやって来ます。」双眼鏡で海面を見ていた船員が叫んだ。
魚雷3発が水泡を上げてひたひたと近づいてきた。
「間に合わないか。総員、(防御姿勢を)固めーい。」と九鬼が豊田五郎船頭代行へ指示をした。
「総員、防御姿勢を固めーい。繰り返す。固めーい。」伝声管を使い豊田が大声で叫んだ。
魚雷1発が逸れたが、2発が桔梗丸の左舷中央に入っていった。
バーン。物凄い轟音がし、大地震のような揺れがが桔梗丸に襲った。
揺れが収まると桔梗丸は、まるで何にもなかったのかように平然と佇んだ。
「二重底が船を守ってくれた。凄いよ。お前(桔梗丸)こそ、不沈艦。うん…いや。不沈船だよ。」長岡が涙を流しながら桔梗丸に話しかけた。
砲兵長の中村智之が砲兵員達に叫んだ。
「いいか。敵機を落とすコツは、ハエたたきだ。みんな、いいか。集中力を見せろ。撃てい。」
ヴァン・ヴァン・ヴァン…。
新型対空火器10cm連装高角砲6基が火を噴いた。
グオーーン。バシャン。
敵機2機が黒煙と共に海面に落ちていったが、
敵機1機は逃げるように空の彼方へ飛び去った。
福士は、「船頭、砲兵員達が敵機2機をやっつけてくれました。ハッハッハ。残りの敵機1機は腰抜で逃げて行きましたよ。」と笑みを浮かべて言った。
「砲兵員達にご苦労様と伝えてください。それから、敵機1機が帰ったと言うことは、暫くしたら敵戦闘機の大群が来ると思われます。急いで大和乗務員達の救助をお願いします。」九鬼は、敵機1機が飛んで行った方向を双眼鏡で追いかけながら言った。
「そうですね。しくじりました。(敵機1機を)逃しちゃ行けなかったのですね。」
福士は悔やんだ。
それから3時間、必死に救助を行い大和の乗務員3000名位を救出できた。
救出にあたっていた長岡は、あんなに奮戦し大爆発した大和の乗組員を3000名救出したことは奇跡でしかないが。本当に救出したのは人間なのか?桔梗丸の輸送用大倉庫で身体を濡らして横になっている多くの大和の乗務員達を見ていると亡霊のような感じがしてならない。疑問が生じていた。
「敵機襲来。距離4000(m)、かず(数)およそ200(機)。」双眼鏡で見張りをしていた渡辺が叫んだ。
緊急を知らせるラッパが鳴り出した。桔梗丸の乗務員達に緊張が走り砲撃の構えに入った。
その時である。急に海霧がサアーと出てきた。
海霧は、濃く、深く、海上のもの全てを包み込むように。
敵機軍団は海霧により味方同士がぶつかり始めた。
「クモ(雲)かキリ(霧)かもワカラナイ。」「ウツナ(撃つな)。キジュウ(機銃)をツカウナ。ミカタ(味方)をウッテ(撃って)シマウゾ。」「コウド(高度)をアゲテ。イチジ(一時)、タイヒ(退避)ダ。」
海霧を逃れ、上空に暫く非難し旋回していた。
海霧が晴れたときには、桔梗丸の姿はなかった。
桔梗丸は蜃気楼だったのか。敵機の乗員達はそう思えた。
桔梗丸は大和の最後を看取っていた。
守るべき戦闘機隊のないまま孤立無援の状態で、手ぐすね引いて待っているアメリカ大艦隊のところに大和を沖縄へ行かせる(特攻強行作戦の)意味があったのか。海軍にそのことを止める将校がいなかったのか。理解に苦しむと九鬼は唇をかみしめた。
桔梗丸の甲板では船員皆泣いていた。
「兄様(第一号艦大和)へ敬礼。」福士は喉が潰れるような大声で叫んだ。
全船員が敬礼したところに、バアーンと唸る音が近づいて来る。米軍の戦闘機3機が桔梗丸をターゲットに選んだ。
「(九鬼)船頭、魚雷が左側方よりやって来ます。」双眼鏡で海面を見ていた船員が叫んだ。
魚雷3発が水泡を上げてひたひたと近づいてきた。
「間に合わないか。総員、(防御姿勢を)固めーい。」と九鬼が豊田五郎船頭代行へ指示をした。
「総員、防御姿勢を固めーい。繰り返す。固めーい。」伝声管を使い豊田が大声で叫んだ。
魚雷1発が逸れたが、2発が桔梗丸の左舷中央に入っていった。
バーン。物凄い轟音がし、大地震のような揺れがが桔梗丸に襲った。
揺れが収まると桔梗丸は、まるで何にもなかったのかように平然と佇んだ。
「二重底が船を守ってくれた。凄いよ。お前(桔梗丸)こそ、不沈艦。うん…いや。不沈船だよ。」長岡が涙を流しながら桔梗丸に話しかけた。
砲兵長の中村智之が砲兵員達に叫んだ。
「いいか。敵機を落とすコツは、ハエたたきだ。みんな、いいか。集中力を見せろ。撃てい。」
ヴァン・ヴァン・ヴァン…。
新型対空火器10cm連装高角砲6基が火を噴いた。
グオーーン。バシャン。
敵機2機が黒煙と共に海面に落ちていったが、
敵機1機は逃げるように空の彼方へ飛び去った。
福士は、「船頭、砲兵員達が敵機2機をやっつけてくれました。ハッハッハ。残りの敵機1機は腰抜で逃げて行きましたよ。」と笑みを浮かべて言った。
「砲兵員達にご苦労様と伝えてください。それから、敵機1機が帰ったと言うことは、暫くしたら敵戦闘機の大群が来ると思われます。急いで大和乗務員達の救助をお願いします。」九鬼は、敵機1機が飛んで行った方向を双眼鏡で追いかけながら言った。
「そうですね。しくじりました。(敵機1機を)逃しちゃ行けなかったのですね。」
福士は悔やんだ。
それから3時間、必死に救助を行い大和の乗務員3000名位を救出できた。
救出にあたっていた長岡は、あんなに奮戦し大爆発した大和の乗組員を3000名救出したことは奇跡でしかないが。本当に救出したのは人間なのか?桔梗丸の輸送用大倉庫で身体を濡らして横になっている多くの大和の乗務員達を見ていると亡霊のような感じがしてならない。疑問が生じていた。
「敵機襲来。距離4000(m)、かず(数)およそ200(機)。」双眼鏡で見張りをしていた渡辺が叫んだ。
緊急を知らせるラッパが鳴り出した。桔梗丸の乗務員達に緊張が走り砲撃の構えに入った。
その時である。急に海霧がサアーと出てきた。
海霧は、濃く、深く、海上のもの全てを包み込むように。
敵機軍団は海霧により味方同士がぶつかり始めた。
「クモ(雲)かキリ(霧)かもワカラナイ。」「ウツナ(撃つな)。キジュウ(機銃)をツカウナ。ミカタ(味方)をウッテ(撃って)シマウゾ。」「コウド(高度)をアゲテ。イチジ(一時)、タイヒ(退避)ダ。」
海霧を逃れ、上空に暫く非難し旋回していた。
海霧が晴れたときには、桔梗丸の姿はなかった。
桔梗丸は蜃気楼だったのか。敵機の乗員達はそう思えた。
21
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
近衛文麿奇譚
高鉢 健太
歴史・時代
日本史上最悪の宰相といわれる近衛文麿。
日本憲政史上ただ一人、関白という令外官によって大権を手にした異色の人物にはミステリアスな話が多い。
彼は果たして未来からの転生者であったのだろうか?
※なろうにも掲載
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり
もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。
海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。
無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる