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出会い編
捌 河童の場合
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河童──それは、鬼、天狗に並び、水妖の代表とも呼ばれるぐらい日本で有名な妖怪。
その日は、暑かった。
暑かったので、黒炎は、買い物帰りに帰り道にある川で涼んでから口裂け女ことくーちゃんに会いに行こうと思った。
黒炎の帰り道にある川は、黒炎の住んでいる県に流れる三つの川の一つである。そのため、かなりでかく、長い。しかし、大雨でも降らない場合川の流れが速くならないし、今の時期ではちょうど冷水のように冷たい川だ。
それなりに深い川だ。黒炎がその川に入ったら、腰にまで届くぐらいの深さである。
そのため、黒炎は端のほうで足だけ浸かろうとした。ちょうど、サンダルで来ていたので帰りの心配はしなくていい。買ったものが入った買い物袋を川の近くに置き、片手にサンダルを持って川に足を浸けた。浸けたまではよかった。
───しかし足を川に浸けた瞬間、川から水掻きのついた手が出てきて黒炎の足をガシッと掴んだ。
ザバッ
と、音をたてて川から出てきたのは、体全体が水で濡れている全身が緑色の生き物だ。
体格は、小学生ぐらいの子供で、短い嘴、背中には亀のような甲羅、手足には水掻きがついており、一番目立つ頭頂部には円形の平滑な無毛部の皿がついている。
誰でも一度は聞いたことがあるであろう
───河童だ。
「足、引っ張らないでください。私、泳ぐの苦手なんですよ」
…黒炎。叫んだりなんかしようよ。河童だよ。河童。結構有名なはずなんだけどな。
ってか、黒炎、泳ぐの苦手なんだ。運動系全部得意そうな感じなのにね。
「そりゃあ、好都合。楽に引きずり込めるよ」
河童って、本当はキューキューって鳴くけど、最近は、日本語を話す河童も増えてきてるらしいよ。
多分、この河童は日本語を話す方の河童なのだろう。
「やめてください」
確かに。やめた方がいいよ。それって傍から見たら変態だから…。
「やーだね」
「離して下さい」
「離すわけなi……
イッテーーーーーーーーーーッ!!」
河童の言葉が途中で悲鳴に変わった。
それは、何故か?
答えは簡単だ。二十メートルくらい飛んだからだ。
うん。飛んだというかほら、川の水面に石を投げて飛ばす遊びってあるでしょう?水切りとか石切りっていうらしいけど。あれの石があの河童みたいだ。
「離してって言いましたよね。
もう一度殺りましょうか?」
おぉ、ベートーベンの時もそうだけど、黒炎ってスイッチ入ると怖いよね。怒らせないようにしないと…。
「漢字の変換間違ってるよ!
初対面のヒトに回し蹴りしないでくれ!地味にいたいんだよ!!」
よく戻ってこれたね。意外と飛んでたんだよ。
あぁ、河童だからか。泳ぐの得意だよね。河童。
ってか、黒炎回し蹴りしたんだ。………威力凄いね。
「その初対面の人を川に引きずり込めようとしたのは何方ですか?
そもそも、ヒトじゃないでしょう。
立派な妖怪ですよ」
正論だ。
「いや、そうはそうだけれども…」
返す言葉も無いらしい。
「だいたい、初めての人にはしっかりと挨拶をしてください。
私は、黒炎です。
貴方は?」
「……オイラは、河童の河太郎。
ここの川にずいぶん前から住んでいる妖さ」
「そうなんですか。
…河童ってこの川出たんですね」
「な、なんだよ!!オイラを疑ってるのか!?」
と、慌てたように河童──河太郎が言った。
「いえ、別に疑ってなどいませんよ。貴方が河童ということは分かりましたので」
「ただ……」と、続けて言う。
「貴方の体臭かなり臭いですね」
…ねぇ、黒炎って何でそんなにストレートに話すの?もう少しオブラートに包もうよ。
「う、煩い!!勝負だ!オラ!!」
いや、何で勝負になるんだよ。それ、女に言うことか?てか、「オラ!!」ってかなり、無理してる感強いね。
「…別にいいですか。何で勝負するんですか?貴方が決めて下さい。私は何でもいいので」
あ、するんだ。勝負。
「勝負って言ったら相撲だろう!何故ならオイラは、人間よりも力が強いからさ!」
そもそも黒炎は、半妖だし。
あと…いや、うん。何も言わないよ。
河童が作った土俵の上に立ち、黒炎と河太郎がお互いを見合う。
「オイラが勝ったら、オマエの尻子玉を抜いて、川に引きずり込む!!」
「じゃあ、私が勝ったら、尻子玉を抜くのは止めて、川に引きずり込まないでください。尻子玉を抜かれたことは無いですが何か痛そうですし…」
痛いのかな?
「よし!それでいいぞ!!」
…勝つ気満々だな。
「はい。お手合わせよろしくお願いします」
ペコッ
と、河太郎に向かってお辞儀をする。
「あ、そりゃあどうも。ご丁寧に……」
と、戸惑いずつ、釣られてペコリと、お辞儀をした。
バシャッ
「あ………」
「あ……あぁーーーーーーーーぁぁぁあ!!!
オイラの力が!!!力が!!!!!」
頭を抱え、地面にゴロゴロと転がりまくる。
「えーと、
…御愁傷様?」
いや、違う。黒炎、それ使い方間違ってる。
「御愁傷様じゃないよ!!
オイラ死んでないし!!力無くなったし!!!さっき、蹴られたときに皿に罅はいったし!!!!!」
あ、さっき蹴られたときに皿に罅がはいったんだね。
「ごめんなさい。
多分これって私のせいでもあるんですよね……これ、胡瓜です。お好きでしょう?」
買い物袋の中をごそごそと探り、一本の胡瓜を河太郎に手渡しする。
「……許す」
案外単純だ。
シャリシャリ
チラッ
「!?
何でオマエの名前が刻み込まれているんだよ!?
これじゃあ、お前を川に引きずり込めないじゃないか!!!」
河童に自分の名前が刻み込まれている胡瓜を食わすと、その相手には悪さをしないようにすることができる、……らしい。
つまり、河太郎は黒炎から尻子玉を抜くことはおろか、川に引きずり込むこともできなくなったのだ。
「いえ、引きずり込むのはやめてください」
うん。ボクも黒炎の立場だったらそう言うよ。
「だから!何で!オマエの!名前が!胡瓜に!!刻み込まれているんだよ!!!」
「さっきからですが、ビックリするほど『!』が多いですね。大丈夫ですか?」
さらっと失礼な心配をしているよ。黒炎。
「余計なお世話だ!!今、そんな話はどうでもいい!質問に答えろ!!!」
半分食べてしまった胡瓜を振りかざしながら、悲鳴に近いくらいの大声で叫んだ。
「いえ…だって、野菜1つ1つにも名前を書いたり、刻んだりしないと、お兄ちゃんに全部食べられてしまうんですよ。
今回は、胡瓜を使った珍しい作り方のサラダの作り方を見つけたので、作ってみたかったので…」
胡瓜を使った珍しいサラダって何だ?
全然、想像つかないや。
「家庭の事情かよ!!」
いや、少し何か…違う。
「まぁ、一言で言えばそうですね……」
いや、そうなのか?
「『そうですね』っじゃな「すみません。今日は、私が夕食の当番なので、帰りますね。
遅いとお兄ちゃんが五月蝿いんですよ。
では、また今度ゆっくりと話しましょう」
黒炎は、河太郎の言葉を途中で遮りそう言った。
「いや、そんなことどうでもいいn……って、足早っ!!」
黒炎、足、早いよね。
口裂け女も評価するほどの早さだもん。
「なんなんだよ!アイツ!!」
また、悲鳴に近いくらいの大きな叫び声を川の中心で叫んだ。
一方、黒炎といえば
「結局、くーちゃんに会いに行けなくなってしまいましたね」
と、言いながら家路を凄い早さで辿っていた。
その日は、暑かった。
暑かったので、黒炎は、買い物帰りに帰り道にある川で涼んでから口裂け女ことくーちゃんに会いに行こうと思った。
黒炎の帰り道にある川は、黒炎の住んでいる県に流れる三つの川の一つである。そのため、かなりでかく、長い。しかし、大雨でも降らない場合川の流れが速くならないし、今の時期ではちょうど冷水のように冷たい川だ。
それなりに深い川だ。黒炎がその川に入ったら、腰にまで届くぐらいの深さである。
そのため、黒炎は端のほうで足だけ浸かろうとした。ちょうど、サンダルで来ていたので帰りの心配はしなくていい。買ったものが入った買い物袋を川の近くに置き、片手にサンダルを持って川に足を浸けた。浸けたまではよかった。
───しかし足を川に浸けた瞬間、川から水掻きのついた手が出てきて黒炎の足をガシッと掴んだ。
ザバッ
と、音をたてて川から出てきたのは、体全体が水で濡れている全身が緑色の生き物だ。
体格は、小学生ぐらいの子供で、短い嘴、背中には亀のような甲羅、手足には水掻きがついており、一番目立つ頭頂部には円形の平滑な無毛部の皿がついている。
誰でも一度は聞いたことがあるであろう
───河童だ。
「足、引っ張らないでください。私、泳ぐの苦手なんですよ」
…黒炎。叫んだりなんかしようよ。河童だよ。河童。結構有名なはずなんだけどな。
ってか、黒炎、泳ぐの苦手なんだ。運動系全部得意そうな感じなのにね。
「そりゃあ、好都合。楽に引きずり込めるよ」
河童って、本当はキューキューって鳴くけど、最近は、日本語を話す河童も増えてきてるらしいよ。
多分、この河童は日本語を話す方の河童なのだろう。
「やめてください」
確かに。やめた方がいいよ。それって傍から見たら変態だから…。
「やーだね」
「離して下さい」
「離すわけなi……
イッテーーーーーーーーーーッ!!」
河童の言葉が途中で悲鳴に変わった。
それは、何故か?
答えは簡単だ。二十メートルくらい飛んだからだ。
うん。飛んだというかほら、川の水面に石を投げて飛ばす遊びってあるでしょう?水切りとか石切りっていうらしいけど。あれの石があの河童みたいだ。
「離してって言いましたよね。
もう一度殺りましょうか?」
おぉ、ベートーベンの時もそうだけど、黒炎ってスイッチ入ると怖いよね。怒らせないようにしないと…。
「漢字の変換間違ってるよ!
初対面のヒトに回し蹴りしないでくれ!地味にいたいんだよ!!」
よく戻ってこれたね。意外と飛んでたんだよ。
あぁ、河童だからか。泳ぐの得意だよね。河童。
ってか、黒炎回し蹴りしたんだ。………威力凄いね。
「その初対面の人を川に引きずり込めようとしたのは何方ですか?
そもそも、ヒトじゃないでしょう。
立派な妖怪ですよ」
正論だ。
「いや、そうはそうだけれども…」
返す言葉も無いらしい。
「だいたい、初めての人にはしっかりと挨拶をしてください。
私は、黒炎です。
貴方は?」
「……オイラは、河童の河太郎。
ここの川にずいぶん前から住んでいる妖さ」
「そうなんですか。
…河童ってこの川出たんですね」
「な、なんだよ!!オイラを疑ってるのか!?」
と、慌てたように河童──河太郎が言った。
「いえ、別に疑ってなどいませんよ。貴方が河童ということは分かりましたので」
「ただ……」と、続けて言う。
「貴方の体臭かなり臭いですね」
…ねぇ、黒炎って何でそんなにストレートに話すの?もう少しオブラートに包もうよ。
「う、煩い!!勝負だ!オラ!!」
いや、何で勝負になるんだよ。それ、女に言うことか?てか、「オラ!!」ってかなり、無理してる感強いね。
「…別にいいですか。何で勝負するんですか?貴方が決めて下さい。私は何でもいいので」
あ、するんだ。勝負。
「勝負って言ったら相撲だろう!何故ならオイラは、人間よりも力が強いからさ!」
そもそも黒炎は、半妖だし。
あと…いや、うん。何も言わないよ。
河童が作った土俵の上に立ち、黒炎と河太郎がお互いを見合う。
「オイラが勝ったら、オマエの尻子玉を抜いて、川に引きずり込む!!」
「じゃあ、私が勝ったら、尻子玉を抜くのは止めて、川に引きずり込まないでください。尻子玉を抜かれたことは無いですが何か痛そうですし…」
痛いのかな?
「よし!それでいいぞ!!」
…勝つ気満々だな。
「はい。お手合わせよろしくお願いします」
ペコッ
と、河太郎に向かってお辞儀をする。
「あ、そりゃあどうも。ご丁寧に……」
と、戸惑いずつ、釣られてペコリと、お辞儀をした。
バシャッ
「あ………」
「あ……あぁーーーーーーーーぁぁぁあ!!!
オイラの力が!!!力が!!!!!」
頭を抱え、地面にゴロゴロと転がりまくる。
「えーと、
…御愁傷様?」
いや、違う。黒炎、それ使い方間違ってる。
「御愁傷様じゃないよ!!
オイラ死んでないし!!力無くなったし!!!さっき、蹴られたときに皿に罅はいったし!!!!!」
あ、さっき蹴られたときに皿に罅がはいったんだね。
「ごめんなさい。
多分これって私のせいでもあるんですよね……これ、胡瓜です。お好きでしょう?」
買い物袋の中をごそごそと探り、一本の胡瓜を河太郎に手渡しする。
「……許す」
案外単純だ。
シャリシャリ
チラッ
「!?
何でオマエの名前が刻み込まれているんだよ!?
これじゃあ、お前を川に引きずり込めないじゃないか!!!」
河童に自分の名前が刻み込まれている胡瓜を食わすと、その相手には悪さをしないようにすることができる、……らしい。
つまり、河太郎は黒炎から尻子玉を抜くことはおろか、川に引きずり込むこともできなくなったのだ。
「いえ、引きずり込むのはやめてください」
うん。ボクも黒炎の立場だったらそう言うよ。
「だから!何で!オマエの!名前が!胡瓜に!!刻み込まれているんだよ!!!」
「さっきからですが、ビックリするほど『!』が多いですね。大丈夫ですか?」
さらっと失礼な心配をしているよ。黒炎。
「余計なお世話だ!!今、そんな話はどうでもいい!質問に答えろ!!!」
半分食べてしまった胡瓜を振りかざしながら、悲鳴に近いくらいの大声で叫んだ。
「いえ…だって、野菜1つ1つにも名前を書いたり、刻んだりしないと、お兄ちゃんに全部食べられてしまうんですよ。
今回は、胡瓜を使った珍しい作り方のサラダの作り方を見つけたので、作ってみたかったので…」
胡瓜を使った珍しいサラダって何だ?
全然、想像つかないや。
「家庭の事情かよ!!」
いや、少し何か…違う。
「まぁ、一言で言えばそうですね……」
いや、そうなのか?
「『そうですね』っじゃな「すみません。今日は、私が夕食の当番なので、帰りますね。
遅いとお兄ちゃんが五月蝿いんですよ。
では、また今度ゆっくりと話しましょう」
黒炎は、河太郎の言葉を途中で遮りそう言った。
「いや、そんなことどうでもいいn……って、足早っ!!」
黒炎、足、早いよね。
口裂け女も評価するほどの早さだもん。
「なんなんだよ!アイツ!!」
また、悲鳴に近いくらいの大きな叫び声を川の中心で叫んだ。
一方、黒炎といえば
「結局、くーちゃんに会いに行けなくなってしまいましたね」
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