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5, 話

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***この話の注意***

     Ray♪です。   
    この話は『のんびり』とは程遠い、というか離れてしまいました。
    のんびり系を書くつもりだったのに…。凄く殺戮としています。
と、いうかこの話のんびり系だよね!のんびり系だよね!!
    誰かyesと言って!

   それとこれは注意ではなく、出来ればのお願いです。ここまで書き進めて後、だいたい1話分(少しだけ出てきた双子の子の話)くらいしか内容を考えていません。なので出来ればこんな感じに進めてほしいとか、こんなキャラクターを出して欲しいや自分をモデルにした人を出して欲しいとか案を出してくれませんか?(キャラクターの場合は、性別、外見、種族、特技などを書いて下さると書きやすいです)

    と、この話の注意やお願いを読んでくださいありがとうございました。そして、長文すみません。
    今回もアントス達の話です。途中で視点がエレボス視点になります。どうか暖かい目で見てださい。

                                                                       

                                    †††††



パチンッ


    部屋で金属と金属のあたる音が響く。
    完成だ。
    思わず顔が緩む。やっぱりこーゆう作品(?)は、完成すると何だか嬉しくなるな。
    後はっと、貰った箱にメッセージと少し、デコレーションして、華やか(?)に仕上げた。
    兄様が帰ってきたらサプライズみたいな感じで驚かせて渡すつもりだ。と、してもあれから10分くらいたった。あの男の人達と何をしてるんだろうか?でも話すにしても10分はちょっと長い。手配書の事とかで聞きたいことがあるし…。
    そう思いつつ、机の引き出しにピアスをしまった。
    それが合図かのようにピアスを引き出しにしまったのと同時に部屋のドアが開いた。
    兄様だ。
「すまない。遅くなってしまった」
    眉を下げ、申し訳なさそうに言った。
「大丈夫だよ」
    ニコッと笑って言った。
    兄様の表情が少し和らいだ気がする。



「──さて、どうしてこうなったのか教えてもらおうか」
    口調はいつもと変わらない。でも、1から10まで話終えるまで話を終わらせないよ。と、言う感じの感情がビシビシと伝わってくる。
    さっきの殺気よりずっとゾワゾワする。
    こりゃあ、嘘をつかず(と、いうか嘘をついたら即バレるような気がする。それに何だか後ろに居る妖精達もガタガタと震えている)素直にしっかりと話したほうがいい。



    兄様の手配書を見たことはふせて、この子とあってから森に至るまでの話をした。
    その間兄様は1度も口を挟まなかった。

「───そうか。分かった。
    …しかし、この娘を助けなかった方がお前はあの人間達から追いかけられることはなかったはずだ。
    何故、この娘を助けた?お前が捕まる可能性が高くなっただけで何の特にもならなかったはずだ」
    ボクが最後まで話終えると兄様はそう言った。
    いつもより顔が険しい。



───まるでボクを試しているようだ。



    何故?何故、この子を助けた?
    自分でもよく分からない。
    ……でも、
「知ってしまったら、助けないとって思って…。自分勝手な自己満足かも知れない。でも…でも、その子を放っておいて此処に帰ることはなかったと思う。
     どっちにしろボクにはそんな子を置いて見て見ぬふりをして逃げたりしない!そんな子をまた、見つけたら何度だって…きっと助ける!」
    まだ、はっきりとは言えないけれどもこれがボクの答えだ。
    しっかりと兄様の顔を見る。目をそらしはしない。だってこれはボクの決意のようなものなのだから。

「……クククッ  それでこそ俺の妹だ」
    暫くの沈黙の後、いつものように喉を鳴らし、どこか嬉しそうな表情でそう言った。
    うまくいったのかな?
    そう思っていると、
「それで、俺に聞きたいことがあるのだろう?」
    まるでボクの頭の中が見えているように言った。
    息をゆっくりと吸い、しっかりとボクと同じ真っ赤な瞳を見て首を縦にふる。
「街に行ったときに…兄様の手配書を見かけた。
    それとあのダークエルフの子がボクを見たとき兄様の名前を呼んでいた。…でも、兄様の知り合いではなさそうだった。あの目は、まるで神…救世主を見ているような目だった。
    それにボクの姿を見たときあの男の人達。ダークエルフの子を逃がしただけでなく別の意味があってボクを追いかけて捕まえようとしているようだった。それにたった2人を捕まえるだけにしてはあまりにも人数が多すぎる…」
    そこで、1度言葉を切る。
「……もしかして、兄様。昔この街で指名手配されるほど大きな騒動を起こしたの?」
    今日のことから考えるとボクにはこれぐらいのことしか考えられない。
    でも、この事を聞くのは怖かった。この事を聞いたら今のこの関係が壊れてしまいそうだったから…。
「………」
    兄様の顔をおそるおそる見る。
    表情が読み取れない。
    何を考えているのかよく分からない表情だ。



「…この話は俺の部屋で話そう。
    ここで話して、この娘を起こしてはいけない」
    安らかな寝顔ですやすやと眠っているダークエルフの子の髪をさらっと撫で、そう言う。
    …確かに。いろいろあったし話してて起こしてしまうのはやめた方が良さそうだ。
    妖精達に此所で待っていてと言った。話がややこしくなるような気がしたし、なによりボクは兄様と2人でしっかりと話したかったから。「いっしょにいく!」って、譲らなかったけどなんとか説得した。
    ダークエルフの子の頭を撫で、音をたてないようにそっと扉を閉めた。





「あれっ?アントスちゃんどうしたの?何だか表情が暗いよ」
    兄様の部屋に行く途中で会ったアネストに言われてしまった。
    そんなに表情が暗くなってたのかな?
    頬を軽くパンッと叩く。
「俺の部屋に紅茶を用意しておけ。
    ……覗いたり立ち聞きをするなよ」
    全てお見通しだとでも言うように目を細め、最後にそう言った。
    少し、アネストがビクッとなった。…図星だったの。





    兄様の部屋の椅子に座って、アネストの用意してくれた紅茶を飲む。花のようないい香りがする。
    そして、ボクと同じように紅茶を飲んでいる兄様の顔をそっと見る。
    さっきから何も話さずこの調子だ。
    何だか今日は沈黙が多いような気がする。

    気まずいなー。

    カチャッと紅茶の入ったコップを置く音が聞こえる。兄様だ。
    それが合図だったのか、
「……アントス。今日、街をまわってみて何か違和感を感じただろう?」
    前置きなしにそう言った。
「……違和感というか、この街はおかしかった。
    此所は異世界なのに…って言うのは偏見かも知れないけど…それでも妖精を除いて人間以外の種族がいなかった。此所の森には沢山の種族のヒトたちがいた。それなのに。
    そう、まるで…ボク達のような種族を受け入れていないようだった」
    カチャリとコップを置き、街で思ったことをそのまま言う。
「………………あぁ、確かにこの街は俺たちのような種族を受け入れていない。
    いや、『物としか見られていない』。だから、この街ではそんな種族達が闇オークションで奴隷として売られている。まるで『物』のように扱われている。
    そんなことをするのはこの街だけではない。この世界の3分の2がそんな感じだ。
    ……異世界と言っても、ほとんどの人が思っているようなそんな綺麗なものではない。意外と真っ黒なんだよ」

    …………。

    そんなハズはない。そう否定して欲しかった。分かってた。分かってたんだ。本当は。兄様に言って貰わなくても今日見たボク自身が、誰よりも。兄様の口からそう聞いた時、それは紛れもない『真実』となった。
    だからこそ…
    何も言えない。何も知らなかったボクが言うのはおかしいかもしれない。怒りでなのか怒るのではなく、それを通り越して何も思えない。『可哀想』だとか『酷いとか』なんとも言える。しかしそれは全て客観的にしかすぎない。
    でも、
「……こんなことが起こったのは何かきっかけがあるんだよね?
    妖精たちに連れられてこの街の奥、誰も近寄らない鬱蒼とした森に廃墟じみたところがあった。ボクたちのような種族が住んでいた名残があった。それに人間たちも一緒に過ごしていたような、そんなところが…」
    これもあくまでボクの推測でしかない。
    もしかしたら、その廃墟じみた(廃墟というか遺跡って感じの)建物は、昔住んでいた人の住みかだったかもしれないし、この推測もボクの考えすぎかもしれない。
「………」
    兄様は何も言わないままだ。でも、何か考え込んでいるような、悲しそうな、そんな顔だ。いろいろな感情が入り込んでいて何を考えているのか分からない。

    小さな小皿に乗せられているアネストの焼いた黒いところなど1つもない真っ白な雪化粧のスノーボールクッキーをサクッとかじり、兄様の返しを待つ。

「────少し昔話をしよう。
    1人の吸血鬼の少年の話を…」












    昔々…いや、俺たちの時の流れからさほど昔ではない。
    今から約2000年ぐらい前のこと。
   この世界───エレフセリアが出来たのは大体2500年前。この頃には街という集団が出てきた頃だ。
    そのエレフセリアにプネブマという人間と吸血鬼やエルフ、いろいろな種族が住んでいる大きく、人の笑顔で溢れている街があった。
    いや街ではなく、国ほどの大きさだった。



    そんな街で1人の赤子が産まれた。両親2人とも吸血鬼の所謂、純血の吸血鬼だ。
───しかし、産まれて約3年後その赤子の両親が死んだ。
    吸血鬼は不老不死だから死なないと言われているが強力な呪いがかかったならば話は別だ。
    その時にはあまり居なかった奴隷商人に。どうやらその奴隷商人は人間で彼達のような種族達に人生を狂わされることがあったらしい。
    そんな思いが強力な呪いとなり、1人、2人、3人、10人、100人…そんな大勢に襲われ彼の両親は呆気なく死んでしまった。彼を守って…。
    何も思えなかったらしい。怒りも悲しみも。3年しか過ごしていなかったからだろうか。その3年は吸血鬼のような種族にとっては儚い夢のような一瞬のことにしか過ぎない。
 


   こうして、彼は1人になってしまった。



    しかし、この事を知ったプネブマの王──ファフニールという種族のドラゴン、ジルトニアのスコトスは彼に土下座をし、深く謝った。『民の悪事は王の責任』だそうだ。

    そして、その謝罪にと広い土地と大きな森と大きな屋敷を用意した。
    彼はありがたくそれを受け取った。しかし、彼が孤独であることはかわりない。
広い土地、広い森、広い屋敷。広いだけでなにもない。



    少したったある日、そんな彼の森に沢山の精霊やエルフ、ついには一角獣まで集まった。こうして彼は1人では、孤独ではなくなった。毎日が楽しい毎日だった。



    しかし、940年くらいたった頃、彼は両親と同じくらいの年になった頃だった。
    吸血鬼は、不死ではあるが少しずつ成長はする。成長はするが、老いはしない。と、言う言葉が一番しっくりくるだろう。
    そんな時、プネブマの四代目の王が決まった。
    この街にはとても喜ばしいことだった。そう、それは3日3晩も続くような盛大な祭りが開くような、な。
    しかし、四代目の王は彼らのような種族を異民族と言い、彼らを見下し恐れた。
   そして…見せしめで1人のエルフを殺した──  
    この事に皆が怒り狂った。当たり前だ。同じ地で産まれ、種族関係なく家族同然に生きていたのだから。
    その中に彼も居た。反対派を集め、四代目の王に抗議をした。しかし、四代目の王は全く取り合わず、ただただ醜い生き物だと見下した。

    その四代目の王のせいでこれまで居なかった奴隷商人などが増えた。

    …人は愚かな生き物である。弱く、脆い。そして、自分達と少しでも違うところがあれば容赦なく排除しようとする。
    他人の言葉戯れ言をそのまま鵜呑みにして、空っぽで考えずに、確かめもせずに、そんな自分自身を絶対に正しいのだと言い張り、必死に守っている。正当化をしようとしている。自身の都合の悪いことがあればまるで悲劇のヒロインかのように。
    愚かで、卑怯でそれでいて恐ろしい。

    彼の森に住んでいた皆は彼の張っていた結界のお陰で無事だったが少しずつ森に住んでいなかったものは捕まってしまった。
    妖精は生きたまま羽をもげられ、生け捕りにされ、ゴブリンは死ぬまで働かせられ、まるで地獄みたいだった──

    何人かは仲が良かった人間に助けを求めた。しかしほとんどが来た皆を売ったり、殺したりした。

    何故?

    理由はすぐ分かった。人間の弱さと愚かさ。そして、王がある神を広めたからだ。その神は赤い目と金色の目を持つ双子の神だった。
    赤い目の神はルージュ、女の神だ。金の目の神はオール、男の神だ。
    その神からの教えと言うものはあまりにも、彼らの存在を否定しているものだった。街の人間はすぐに信じた。いっそ病的なほどに。その教えを乞い、彼らを異民族と言い、目の色を変えて見下し、そして…殺した。
    ほとんどの種族が彼の森に集まった。
    しかし彼は何故、今の王は彼らを見下し、殺そうとするのか分からなかった。
    確かに今の王は人間の王と王女の間に産まれた子だ。しかし、その血には誇り高いスコトスの血やその後の王のエルフの王女の血も流れている。自分の先祖は人間ではなかったのに…。

    何故?

     少したった後、その答えは分かった。ゴブリンの子供が見せしめで殺されようとしたところを助け出そうとしていたときだった。
───でも、助けれなかった。自分の無力さを責めていたとき、彼は見た。王がゴブリンの子供が死ぬのを城の上から笑って見ていた。
    王ははじめは恐れていたから彼らのような種族を殺していた。けれども、それが快感となっていたのだ。
    無力な、自分とは違う汚い生き物。いつでも自分の手で殺すことができる。泣き叫ぶ声、命乞いの声、声にならない悲鳴。そんな彼らのもがく死にゆく様をもっとも安全な場所で、高見の見物。酒を片手に下卑た笑み。
    その姿はどんな悪魔だろうと神だろうとそんなモノよりずっとずっと…恐ろしく思えた。

    その事を唐突に理解した彼は思わずその場に座り込み、声にならない声を出して血が滲むほど強く強く拳を握り、地面に叩きつけた。

    ぽつりぽつりと降りだした雨。それは何時しか前が見えないほどの量となった。

     1人、仲間の死んでいった処刑台を見つめる男がいた。己の顔を隠すためにつけていたフードが外れ、雨が容赦なく男の真っ白な肌に叩きつけ、黒曜石のように真っ黒な髪も濡れていく。
     それでも彼はじっとそこを見ていた。真っ赤な血のような瞳で。処刑台の奥、大きな城を。人間の住んでいる街を。
    彼は叫ぶ。力の限り。喉が枯れようと構わずに。憎悪に身を任せて、殺意を込めて。



「ふざけるなッ!!!お前らがその気なら俺らも容赦はしない!!殺してやる…!殺してやる!!殺す!!!1人残らず!徹底的に!!ブッ殺す!!ブッ殺してやる……!!!」



    雨はまだ止まない。





    それから幾度も繰り返された異民族の処刑。王はそれだけでは飽きたらず、彼らに戦争を仕掛けてきた。この街の人間だけでなく、エレフセリア、世界中を巻き込む異民族対人間の世界大戦となった。
    彼らはこれ以上誰も死なせないと、徹底的に殺し返してやると。彼を中心に応戦せんそうをした。





    それから約50年、一夜も休むことのない血で血を洗う戦い。その戦いは彼らの方が有利で勝てる直前だった。能力的にそれは確実的だった。
───しかし王は、人間界から人間を召喚した。
    召喚された人間は、彼らが王達に戦争を仕掛けてきて支配をしようとした。と、出鱈目を吹き込んだ。
    そして召喚したときに得たチート能力を使い、彼らはおされてしまった。
    見たことのない技
    彼らを越える能力
    殺されていく仲間 
    渦巻く欲望と優越感
    隠されることない剥き出しの殺意
    下らない価値観

     更に戦争は混沌を突き進んでいた。まるで底無しの、全てを取り込む沼のような。

    しかし、その戦争が100年目に入ったときに彼は王に致命傷をあたえれた。





    左目を代償に────



    溢れるような笑み、達成感。生まれた隙。
    王の近くにいた召喚された呪術師にやられた。一瞬の油断。それが敗因。相手の呪術師を殺してもなお解けない呪い。大技なのかとても強い呪いで彼でも彼らもどうしよもなくなった。
    その呪いは段々と広がっていく。少しづつ。少しづつ…。
    そして中心だった彼が左目を呪いでやられて、彼達の体制は崩れてしまった。
    それに加えて致命傷とまではいかなかったが皆、限界を越えていた。彼の呪いもじくりじくりと進行していった。まるで呪いの木のように。



    やむを得ず、この戦争は異民族の負けという形になってしまった。
   彼の目の呪いは左目の眼球が無くなってしまっただけですんだ。





    後に王が彼の一撃が効いたのか死んだことを知った。五代目の王は四代目の王のようではない。しかしルージュとオールを信じ、民も信じている。





    彼はこの戦争から考えた。きっとまた、戦争が起こり、同じことが繰り返されるとのだと…。いや、この世界だけじゃない。人間界でも、貴方の住んでいる世界でも、戦争は繰り返されている。今も…。
    戦争が起こっても、勝ったとしても、何も得ることは出来ない。沢山の犠牲と闇が増えるだけ……。



    永遠につきることのない彼の呪いぞうお。それは、今でも根強く残っている。
    許しはしない。許してたまるものか。あの時のことを今でも鮮明に思い出せる、夢に見る。共に笑い、飯を食い、生きた仲間が無差別に殺される。
     このどろどろとした感情は行き場もなくずっとずっと彼を蝕んでいる。今さら離れようと思わない。離れようとすら思えない。
    これは、彼の生きる糧。これを無くしてしまえば彼は彼でなくなる。後悔はしない。してたまるものか。無駄ではない。無駄なわけがない。変わらない。変わるはずもない。俺は今でもあの時の俺と同じだ。少しも変わらない。



    これは、とある吸血鬼ばけものの話。














「これが吸血鬼の少年の話だ…」

    ………。

    ボクは黙って椅子から立って、兄様の部屋から出た。






    この結果は分かっていた。分かっていたはずだった。
    でも、何故話したのか?
    もう隠し事をしたくないから?
    己の罪を話すことでその罪を半分に分けれると思ったから?
    でも…
    アントスに試すように質問を投げ掛けた時、あの子はまっすぐな目をしていた。
    まるで闇を知らないまっすぐな目を───




タッタッタッタ


    足音が此方に近づいてくる。
    アントスだ。
「はいっ、兄様。フェイクピアス。お揃いにしたんだ」
    綺麗に包装されている小さな箱を渡される。
    受け取って、中身を見た。
    中にはフェイクピアスが入っていた。銀色の逆十字に黒い宝石が付いている。
「……」
    はじめから着けていた金色のイヤリングを外し、代わりにアントスから貰ったフェイクピアスをそっと耳につけてみる。
    嬉しい。
「今日、街に行ったとき、雑貨屋で買ったんだ。でも、兄様のお金で買ったから、買ったとは違うかな?」
    コテンと首を傾げる。

    一瞬の不安がよぎる。さっきの話を聞いていつものように過ごしてくれるのか?と…。
    そんな俺の顔を見て思ったのか、アントスもピアスを右耳につけ、
「…ボクね、その話の続き知ってるんだ。
    その少年は、新しくできた双子の妹と一緒に幸せに過ごしました。   だよ。
    確かに許せることじゃない。許せるはずもない。それでも兄様は進んでいる。それはとっても凄いことだよ。
    憎悪に埋もれようとも復讐に身を任せようとも兄様は兄様。ボクは否定はしない。だってボクは兄様の妹。血を分けたたった1人の妹。頼ってもいいんだよ。だってそれが家族、兄妹。…ほら、兄様は1人じゃないよ。ボクがいる。ね?」 
    俺と手を絡み合わせ、額をこつんと当て、真っ直ぐと言った。
    開いたその目は、さっきと同じ目だった。
    まっすぐな目。
    まるで昔の俺の目のような───
    過去の自分とアントスが重なって見えた。





    俺の手はもう汚れすぎている。
    でも、アントスは俺と同じ人生を送ってほしくない──



















忘れるな

犠牲になった者を───

忘れるな

同族を殺られたことを───

忘れるな

この出来事を───



気がついているのか?

自分が戦争の引き金を引こうとしていることに

引くのは一瞬

でも──



その対価は大きい




忘れるな

逃げるな

目を逸らすな



生きて生きて生きて記憶し続けろ













***オマケ***
アントス視線
この話の少し後の話





「そういえば、戦争が終わった後もボクらのような種族はいたらまずいけど、妖精達は大丈夫なの?」
    ふわふわと気ままに飛んでいる妖精たちを眺めながら、街にいて少し気になったことを聞いた。
「あぁ、ここの街の人間は戦争あと俺達が居ないと家事もまともに出来ないと気がついて、頭の弱いと思っていた妖精達を丸め込んだんだよ。
    妖精を使って魔法みたいなものを使う──所謂妖精術だ。精霊術も使おうと思ったら人間も使えるが何より精霊は妖精達と違って賢く、誇り高いからな。




    だが、妖精も少し頭が弱いって言っても、同族を殺られた恨みは忘れないのにな──」
    クククッと、兄様が笑った。

    何だか、背筋がゾッとした。




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