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15, 歴史の授業
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「さて…、もうそろそろ行くか」
ある程度食べ終わったティアを見て、席から立ち上がる。
「そうですわネ」
「え、もうそんな時間?」
「出来るだけ余裕を持って行動した方がいい」
ティアの質問に答えながら寮の自分の部屋に向かう。
小さな長方形の黒い肩掛けの鞄に教科書と筆記用具、ノートを入れ準備を終わらせる。
はじめは確か歴史、次が科学だったはずだ。ルナが隣り合う教室だと言っていたのを思い出し、科学の教科書も入れておく。
「ティア、科学も準備したか?」
「あ、 …準備したほうがいい?」
面倒くさいと、書かれているティアの顔を見ながら軽く苦笑をしつつ、首を縦にふる。
「教室は…」
「4階ですワ」
ルナが答えてくれた。
4階に続く魔方陣に立ち、作動させる。
そう言えば、これって【ダイヤモンド】だと青白いが、【ルビー】だとビビッドレッド(ルビーのような色をこう言うらしい)、【サファイア】だと濃い碧、【エメラルド】だとエメラルドグリーン、のようにそれぞれ色が違うらしい。
まぁ、大体階の端に左から【ダイヤモンド】、【ルビー】、【サファイア】、【エメラルド】、の順番で魔方陣が描かれているから見ることは出来るんだけどな。
着いた4階の少し歩いた左にあった。書いてあるのは読めないが他のクラスメイトが入っているあたりここだろう。それと、これからは合同でもない限り大体クラス別で授業を受けるらしい。
「担任は…」
「インディゴライト先生ですワ。確か…ゴシュナイト先生と夫婦だったはずでしたガ……」
席に着きながら問うと、またもや答えてくれたルナ。と、言うか
「結婚、してたんだな…」
同じように驚いたような顔をしたティアを横目にそう呟く。
「……そう言えばゴシュナイト先生は、青と透明な石が混ざったネックレスをつけていなかったか?あれって、日本で言う結婚指輪と同じ意味なのか?」
珍しいデザインだったと記憶の片隅に残っていたのを引っ張り出しながらそう問う。
「えぇ、そうですワ。
魔法界では一般的に相手に自分の名前と相手の名前の宝石同士を混ぜ合わせたネックレスを送りますワ。もっとも、指輪や腕輪のように身に付けるものなど人に寄りますガ…」
つまり、一般的には首飾りだが自由なんだな。
「僕の両親は髪飾りだよ」
「わたくしの両親はネックレスでしたワ」
色々あるんだな。
「皆さん、おはようございます」
そんな声と共にインディゴライト先生が現れた。…全く気配がなかった。
インディゴライト先生はゴシュナイト先生よりやや髪が短い長髪を後ろで束ね、水色に近い青い髪色。どちらかと言えばティアの色と似ているがインディゴライト先生のほうが色素が薄い。穏やかな透明感のある水色に青がかかった瞳。ゴシュナイト先生と殆ど同じ服装(ズボンがワンピースか色が青か白かの違いだ)に少しデザインが違うネックレス。
うん。夫婦だな。
「3年間、皆さんに歴史を教えます。
歴史は、面倒くさいと思われがちですが少しずつでいいです。少しずつ私たちの先祖の足跡を辿ってみましょう」
…いい先生だな。ふと、そう思う。
多分、他の生徒に人気があるだろう。ゴシュナイト先生は少し性格がキツそうな美人だったが、インディゴライト先生は穏やかな性格の男性だ。正反対のようで正反対ではない夫婦だな。
「はじめに知っている人も多いと思いますが、歴史を学ぶ上で一番大事な“始まりの魔女”について話します。
“始まりの魔女”についてはナイト…いえ、ゴシュナイト先生が少し話していたと思いますが…」
…愛称で呼んだな。
「皆さんは、“ノアの方舟”、別名ヌーフの方舟を知っていますか?」
ノアの方舟…確か、神が人類の堕落に怒り、大洪水をおこして人類を滅ぼそうとしようとしたんだっけ?それで、堕落をしていないノアとその家族は神の指示に従って箱形の大舟を作って雄雌1対の全ての動物を引き連れて乗り込んで難を逃れた。…だったはずだ。
昔、図書館で借りた絵本の内容を思い出しながらそう考える。
「その“ノアの方舟”の大洪水が起こる約25年前に“始まりの魔女”が産まれたと云われています。
詳しくは『エルフの少女と人間の少女』を読んだほうが分かりやすいと思います。図書館にあるので気軽に読んでみてくださいね」
インディゴライト先生の見せた絵本の柔らかなタッチで描かれている表紙を見ながらこの学校に図書館あるんだな。ある程度慣れてきたら、寄ってみて借りてみよう。
「簡単に説明するとある村の人間の少女が13才の時にエルフの少女からエルフの血を貰います。人間の少女はその血を飲み、魔女になります。
元々エルフは、魔力が高く長寿です。そして人間はその器が大きく、使おうとしないだけで様々な力を秘めています。その人間とエルフの血を取り込んだことで人間の体にエルフの力が混ざりあい魔女になったと思われています。
また、我々魔法使いが13才から成長がゆっくりになるのは“始まりの魔女”が13才の時にエルフの血を飲んだこと。そして魔女になった時に全属性の属性を持ち、その中で今では殆どない“時”の属性があったことが理由だとされています」
そこで教科書片手に黒板に書いていったのを1度止め、チョークを置いた。私もノートに写していった手を止め、ペンを机に置く。
「ここで1度止めるのでゆっくりとでもいいので重要なところなどを特に写していってくださいね」
「ティア、書き終わったか?」
「………ダメだ」
「まぁ、頑張れ」
そう死にそうなティアに声をかける。手伝いたいは手伝いんだが、私はアラビア語が書けないからな…。
と、すると黒板には翻訳がされる魔法でもかかっているのか?そう考えていると
「…ブラック姉様は、授業を受けるときは毎回眼鏡をつけているのですカ?」
そう問われた。
「そうだな…。視力があまり悪くはないんだがたまによく見えない時があってな」
上ぶちの黒い眼鏡を1度外しながらそう答えた。何故、夜目とかが効くのに見えない時があるのかが自分のことなのに未だに不思議である。
「…とても、お似合いですワ」
「ありがとな。そう言ってもらえると嬉しい」
「では、続きですが───」
「ティア、頑張れ」
そうティアの方を見て言い、黒板を見ながらノートに取っていった。
「───こうして、“始まりの魔女”は魔界の初代大魔王と手を組み、魔界と人間界──下界の間に魔法界を造りだし、魔女の一族、エルフ、ドラコン…など、現在魔法界に数多くいる種族と共に“ノアの方舟”の大洪水から難を逃れ、造りだした魔法界に住みました─────」
インディゴライト先生がそう言い終わると同時に鐘のような音が聞こえた。
「これにて、歴史は終わりです。次回までに問題を出されたら答えれるくらいは復習を出来るようにしてくださいね」
そう言い、初めての歴史の授業は終わった。
ある程度食べ終わったティアを見て、席から立ち上がる。
「そうですわネ」
「え、もうそんな時間?」
「出来るだけ余裕を持って行動した方がいい」
ティアの質問に答えながら寮の自分の部屋に向かう。
小さな長方形の黒い肩掛けの鞄に教科書と筆記用具、ノートを入れ準備を終わらせる。
はじめは確か歴史、次が科学だったはずだ。ルナが隣り合う教室だと言っていたのを思い出し、科学の教科書も入れておく。
「ティア、科学も準備したか?」
「あ、 …準備したほうがいい?」
面倒くさいと、書かれているティアの顔を見ながら軽く苦笑をしつつ、首を縦にふる。
「教室は…」
「4階ですワ」
ルナが答えてくれた。
4階に続く魔方陣に立ち、作動させる。
そう言えば、これって【ダイヤモンド】だと青白いが、【ルビー】だとビビッドレッド(ルビーのような色をこう言うらしい)、【サファイア】だと濃い碧、【エメラルド】だとエメラルドグリーン、のようにそれぞれ色が違うらしい。
まぁ、大体階の端に左から【ダイヤモンド】、【ルビー】、【サファイア】、【エメラルド】、の順番で魔方陣が描かれているから見ることは出来るんだけどな。
着いた4階の少し歩いた左にあった。書いてあるのは読めないが他のクラスメイトが入っているあたりここだろう。それと、これからは合同でもない限り大体クラス別で授業を受けるらしい。
「担任は…」
「インディゴライト先生ですワ。確か…ゴシュナイト先生と夫婦だったはずでしたガ……」
席に着きながら問うと、またもや答えてくれたルナ。と、言うか
「結婚、してたんだな…」
同じように驚いたような顔をしたティアを横目にそう呟く。
「……そう言えばゴシュナイト先生は、青と透明な石が混ざったネックレスをつけていなかったか?あれって、日本で言う結婚指輪と同じ意味なのか?」
珍しいデザインだったと記憶の片隅に残っていたのを引っ張り出しながらそう問う。
「えぇ、そうですワ。
魔法界では一般的に相手に自分の名前と相手の名前の宝石同士を混ぜ合わせたネックレスを送りますワ。もっとも、指輪や腕輪のように身に付けるものなど人に寄りますガ…」
つまり、一般的には首飾りだが自由なんだな。
「僕の両親は髪飾りだよ」
「わたくしの両親はネックレスでしたワ」
色々あるんだな。
「皆さん、おはようございます」
そんな声と共にインディゴライト先生が現れた。…全く気配がなかった。
インディゴライト先生はゴシュナイト先生よりやや髪が短い長髪を後ろで束ね、水色に近い青い髪色。どちらかと言えばティアの色と似ているがインディゴライト先生のほうが色素が薄い。穏やかな透明感のある水色に青がかかった瞳。ゴシュナイト先生と殆ど同じ服装(ズボンがワンピースか色が青か白かの違いだ)に少しデザインが違うネックレス。
うん。夫婦だな。
「3年間、皆さんに歴史を教えます。
歴史は、面倒くさいと思われがちですが少しずつでいいです。少しずつ私たちの先祖の足跡を辿ってみましょう」
…いい先生だな。ふと、そう思う。
多分、他の生徒に人気があるだろう。ゴシュナイト先生は少し性格がキツそうな美人だったが、インディゴライト先生は穏やかな性格の男性だ。正反対のようで正反対ではない夫婦だな。
「はじめに知っている人も多いと思いますが、歴史を学ぶ上で一番大事な“始まりの魔女”について話します。
“始まりの魔女”についてはナイト…いえ、ゴシュナイト先生が少し話していたと思いますが…」
…愛称で呼んだな。
「皆さんは、“ノアの方舟”、別名ヌーフの方舟を知っていますか?」
ノアの方舟…確か、神が人類の堕落に怒り、大洪水をおこして人類を滅ぼそうとしようとしたんだっけ?それで、堕落をしていないノアとその家族は神の指示に従って箱形の大舟を作って雄雌1対の全ての動物を引き連れて乗り込んで難を逃れた。…だったはずだ。
昔、図書館で借りた絵本の内容を思い出しながらそう考える。
「その“ノアの方舟”の大洪水が起こる約25年前に“始まりの魔女”が産まれたと云われています。
詳しくは『エルフの少女と人間の少女』を読んだほうが分かりやすいと思います。図書館にあるので気軽に読んでみてくださいね」
インディゴライト先生の見せた絵本の柔らかなタッチで描かれている表紙を見ながらこの学校に図書館あるんだな。ある程度慣れてきたら、寄ってみて借りてみよう。
「簡単に説明するとある村の人間の少女が13才の時にエルフの少女からエルフの血を貰います。人間の少女はその血を飲み、魔女になります。
元々エルフは、魔力が高く長寿です。そして人間はその器が大きく、使おうとしないだけで様々な力を秘めています。その人間とエルフの血を取り込んだことで人間の体にエルフの力が混ざりあい魔女になったと思われています。
また、我々魔法使いが13才から成長がゆっくりになるのは“始まりの魔女”が13才の時にエルフの血を飲んだこと。そして魔女になった時に全属性の属性を持ち、その中で今では殆どない“時”の属性があったことが理由だとされています」
そこで教科書片手に黒板に書いていったのを1度止め、チョークを置いた。私もノートに写していった手を止め、ペンを机に置く。
「ここで1度止めるのでゆっくりとでもいいので重要なところなどを特に写していってくださいね」
「ティア、書き終わったか?」
「………ダメだ」
「まぁ、頑張れ」
そう死にそうなティアに声をかける。手伝いたいは手伝いんだが、私はアラビア語が書けないからな…。
と、すると黒板には翻訳がされる魔法でもかかっているのか?そう考えていると
「…ブラック姉様は、授業を受けるときは毎回眼鏡をつけているのですカ?」
そう問われた。
「そうだな…。視力があまり悪くはないんだがたまによく見えない時があってな」
上ぶちの黒い眼鏡を1度外しながらそう答えた。何故、夜目とかが効くのに見えない時があるのかが自分のことなのに未だに不思議である。
「…とても、お似合いですワ」
「ありがとな。そう言ってもらえると嬉しい」
「では、続きですが───」
「ティア、頑張れ」
そうティアの方を見て言い、黒板を見ながらノートに取っていった。
「───こうして、“始まりの魔女”は魔界の初代大魔王と手を組み、魔界と人間界──下界の間に魔法界を造りだし、魔女の一族、エルフ、ドラコン…など、現在魔法界に数多くいる種族と共に“ノアの方舟”の大洪水から難を逃れ、造りだした魔法界に住みました─────」
インディゴライト先生がそう言い終わると同時に鐘のような音が聞こえた。
「これにて、歴史は終わりです。次回までに問題を出されたら答えれるくらいは復習を出来るようにしてくださいね」
そう言い、初めての歴史の授業は終わった。
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