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第一章 風の国編
二十八.筋肉バニーさんの正体
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「君達の手は借りない。これは風の国の問題であり、勇者の問題。此処まで話しておいて悪いが、後は私と国の騎士団でやる」
「いや、俺の問題でもある。勇者の元パーティとして、俺も世界を脅かす魔族討伐を誓っていた。さっき話した通り、火の勇者にも私怨がある。放っておく訳にはいかない」
「そうか、なら火の勇者のところにでもそこの巫女と行けばいい。魔族の討伐は私がやる」
「いや、此処まで話しておいてそれはないだろう」
立ち上がって互いの意見を主張するリーズとレイ。互いに引かない様子に隣でオロオロしているアン。二人の様子を見ていたシルフが何か思いついたのか、手を叩く。
「そうだ! じゃあそこのレイ君を戦いに参戦させるかどうか、風の王に決めてもらいましょう!」
「待つんだシルフ! それはだめだ」
シルフの提案に反対するリーズ。レイは仮にも元銀色――Bランクの冒険者。風の国直轄の兎耳騎士団――ラビリオウイングの傭兵としてなら戦闘に参加出来るのではないかという話だった。それに闇精霊と融合したレイの強さは本物だとシルフは補足する。
「契約だけならまだしも心核が融合なんてレアどころかスーパーレアよ。この力、利用するっきゃないでしょ!」
「シルフ……彼はたまたまこの地に来ただけだ。そんな通りすがりの少年の力なんて借りる訳にはいかない」
「リーズと俺は同じくらいの年齢にも見えるが……。それにたまたまじゃなくこれは運命なんだと思う。魔族が俺の行く手を阻むなら、俺は斬るのみ」
溜息を吐きながら、どうするべきかあぐねいているリーズ。なぜかレイの隣ではアンが、耳を真っ直ぐ立てた状態で、小声で『運命! ……私とレイ様の出逢いもきっと運命……』とぶつぶつ呟いていた。
「話は聞かせてもらったわよぉ~ん♡」
「デラウェア!?」
それまでバックヤードに下がっていた筋肉バニー、デラウェアがホールへと入って来ていた。どうやらバニーだけに聞き耳を立てていたらしい。
「そこのレイちゃん、シルフとあたいが推薦してあげるわよぉ~ん。それなら間違いないでしょう?」
「ママだめだ。此処は私がなんとかする」
「おめーと騎士団だけだと苦戦するかもしれねーって分かってるんだろうリーズ」
「くっ……それは……」
急にドスの利いた声となった筋肉バニーデラウェア。刹那変わった空気にアンの両肩が飛び跳ねていた。リーズと親しいからなのか、このママ色々内情を知っているらしい。リーズは拳を握り締め、下を向く。
「そうねぇ~。デラウェアとワタクシの推薦なら間違いないわね」
「な、なぁ。デラウェア。あんた一体何者なんだ?」
レイがそう質問すると、観念したのかリーズがゆっくり口を開いた。その素性に皆が驚愕する事となる。
「今は現役を引退してママをやっているが、デラウェア・プロティーン。彼女は元Aランク冒険者であり、元兎耳騎士団騎士団長だよ」
「な、なん……だとっ!?」
「さ、という訳で、みんなでデザートを食べましょう♡」
両腕の筋肉をアピールさせつつウインクしたデラウェアが持って来たデザート、メロンサイズの巨大プリンがテーブルの上でプルプルと揺れていた。
「いや、俺の問題でもある。勇者の元パーティとして、俺も世界を脅かす魔族討伐を誓っていた。さっき話した通り、火の勇者にも私怨がある。放っておく訳にはいかない」
「そうか、なら火の勇者のところにでもそこの巫女と行けばいい。魔族の討伐は私がやる」
「いや、此処まで話しておいてそれはないだろう」
立ち上がって互いの意見を主張するリーズとレイ。互いに引かない様子に隣でオロオロしているアン。二人の様子を見ていたシルフが何か思いついたのか、手を叩く。
「そうだ! じゃあそこのレイ君を戦いに参戦させるかどうか、風の王に決めてもらいましょう!」
「待つんだシルフ! それはだめだ」
シルフの提案に反対するリーズ。レイは仮にも元銀色――Bランクの冒険者。風の国直轄の兎耳騎士団――ラビリオウイングの傭兵としてなら戦闘に参加出来るのではないかという話だった。それに闇精霊と融合したレイの強さは本物だとシルフは補足する。
「契約だけならまだしも心核が融合なんてレアどころかスーパーレアよ。この力、利用するっきゃないでしょ!」
「シルフ……彼はたまたまこの地に来ただけだ。そんな通りすがりの少年の力なんて借りる訳にはいかない」
「リーズと俺は同じくらいの年齢にも見えるが……。それにたまたまじゃなくこれは運命なんだと思う。魔族が俺の行く手を阻むなら、俺は斬るのみ」
溜息を吐きながら、どうするべきかあぐねいているリーズ。なぜかレイの隣ではアンが、耳を真っ直ぐ立てた状態で、小声で『運命! ……私とレイ様の出逢いもきっと運命……』とぶつぶつ呟いていた。
「話は聞かせてもらったわよぉ~ん♡」
「デラウェア!?」
それまでバックヤードに下がっていた筋肉バニー、デラウェアがホールへと入って来ていた。どうやらバニーだけに聞き耳を立てていたらしい。
「そこのレイちゃん、シルフとあたいが推薦してあげるわよぉ~ん。それなら間違いないでしょう?」
「ママだめだ。此処は私がなんとかする」
「おめーと騎士団だけだと苦戦するかもしれねーって分かってるんだろうリーズ」
「くっ……それは……」
急にドスの利いた声となった筋肉バニーデラウェア。刹那変わった空気にアンの両肩が飛び跳ねていた。リーズと親しいからなのか、このママ色々内情を知っているらしい。リーズは拳を握り締め、下を向く。
「そうねぇ~。デラウェアとワタクシの推薦なら間違いないわね」
「な、なぁ。デラウェア。あんた一体何者なんだ?」
レイがそう質問すると、観念したのかリーズがゆっくり口を開いた。その素性に皆が驚愕する事となる。
「今は現役を引退してママをやっているが、デラウェア・プロティーン。彼女は元Aランク冒険者であり、元兎耳騎士団騎士団長だよ」
「な、なん……だとっ!?」
「さ、という訳で、みんなでデザートを食べましょう♡」
両腕の筋肉をアピールさせつつウインクしたデラウェアが持って来たデザート、メロンサイズの巨大プリンがテーブルの上でプルプルと揺れていた。
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