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第一章 風の国編
二十二.風の勇者、登場
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「わかりました。それにしても……こんな空間を扱うスキル……初めてみました」
「ね、凄いでしょう、ショコラ」
収納する現場を一度目撃しているアンは鼻高々な様子だ。
「これで幾らくらいになりそうかな?」
「ちょっと鑑定しますので、暫くお待ちください」
はぐれ狼の毛皮は冷気への耐性もあり、防御力も高く重宝される。牙も殺傷力が高いため、武器の素材として扱われる事が多いのだ。勿論死体が新鮮ならば肉も食用肉として食べる事も出来るのだ。
他にもお辞儀桜草の蜜や、薬草、赤丸茸などという素材を鑑定してもらう。
「はぐれ狼の死体の状態も非常によかったです。一体につき金貨1枚。他の素材もありましたので、合計金貨13枚、銀貨5枚になります」
「こんなになるのか」
一度の素材換金で貰える金額を考えると破格の金額であった。これで冒険に必要なアイテムを買うお金や宿代に困る事はないだろう。
「す、凄いですね! 美味しい物いっぱい食べる事が出来ますねっ!」
「ショコラ。恩に着る」
「いいえ、ギルドとしてもこれだけ新鮮な素材。とてもありがたいです」
ショコラへお礼を伝えるレイとアン。ギルド正面ホールへと戻り、このあとどうするのか聞かれたため、今日は宿場町を散策したあと、そのまま宿へ泊まる旨を伝える。するとショコラは、冒険者ギルドからの注意喚起をレイとアンへ伝える。
「せっかくのブリーズバレー。堪能して下さいね。ただし、最近、国は今、魔族の襲撃に備えて厳戒態勢です。国直轄の兎耳騎士団――ラビリオウイングと風の勇者リーズ様が都周辺地域の調査と警戒に当たっています。くれぐれもお気をつけ下さい」
「魔族の襲撃!? 都がそんな事になっているなんて知りませんでした」
「成程、了解した」
魔族――魔物を率いて国々を襲い、自身の欲望のために動く存在。レイは、火の国に居た際も、勇者パーティの一員として国を脅かす魔族とその背後に潜む魔族長を探し出し、討伐する命を担っていたのだ。
「大丈夫です。レイ様の強さなら、魔物だろうと魔族だろうと関係ありません!」
自信に満ちた表情をしたエルフの果実が二つ。上下に激しく揺れていた。ホールに居た冒険者達の目が釘付けとなった事は言うまでもない。
「どこの国も魔族との争いは変わらずか」
【そう、魔族の存在……。物騒ね】
火の国にて正義のために騎士として剣を振るっていたレイ。国が変わっても蠢く闇に対する脅威は変わらないようだ。そして、宿場町へと向かう道中、背後からの気配に気づく。
「アン、俺の背後に下がっていろ」
「え? レイ様」
人気のない場所で足を止め、アンを自身の後ろへ素早く下げ、振り返るレイ。
「国の平穏を脅かす闇の者よ。私、風の勇者――リーズ・シルフィーが成敗してあげよう」
「なっ、風の勇者だって?」
そこには自らを風の勇者と名乗る、頭に兎耳を携え、銀色の外套を纏った凛々しい女性の姿があったのだった――
「ね、凄いでしょう、ショコラ」
収納する現場を一度目撃しているアンは鼻高々な様子だ。
「これで幾らくらいになりそうかな?」
「ちょっと鑑定しますので、暫くお待ちください」
はぐれ狼の毛皮は冷気への耐性もあり、防御力も高く重宝される。牙も殺傷力が高いため、武器の素材として扱われる事が多いのだ。勿論死体が新鮮ならば肉も食用肉として食べる事も出来るのだ。
他にもお辞儀桜草の蜜や、薬草、赤丸茸などという素材を鑑定してもらう。
「はぐれ狼の死体の状態も非常によかったです。一体につき金貨1枚。他の素材もありましたので、合計金貨13枚、銀貨5枚になります」
「こんなになるのか」
一度の素材換金で貰える金額を考えると破格の金額であった。これで冒険に必要なアイテムを買うお金や宿代に困る事はないだろう。
「す、凄いですね! 美味しい物いっぱい食べる事が出来ますねっ!」
「ショコラ。恩に着る」
「いいえ、ギルドとしてもこれだけ新鮮な素材。とてもありがたいです」
ショコラへお礼を伝えるレイとアン。ギルド正面ホールへと戻り、このあとどうするのか聞かれたため、今日は宿場町を散策したあと、そのまま宿へ泊まる旨を伝える。するとショコラは、冒険者ギルドからの注意喚起をレイとアンへ伝える。
「せっかくのブリーズバレー。堪能して下さいね。ただし、最近、国は今、魔族の襲撃に備えて厳戒態勢です。国直轄の兎耳騎士団――ラビリオウイングと風の勇者リーズ様が都周辺地域の調査と警戒に当たっています。くれぐれもお気をつけ下さい」
「魔族の襲撃!? 都がそんな事になっているなんて知りませんでした」
「成程、了解した」
魔族――魔物を率いて国々を襲い、自身の欲望のために動く存在。レイは、火の国に居た際も、勇者パーティの一員として国を脅かす魔族とその背後に潜む魔族長を探し出し、討伐する命を担っていたのだ。
「大丈夫です。レイ様の強さなら、魔物だろうと魔族だろうと関係ありません!」
自信に満ちた表情をしたエルフの果実が二つ。上下に激しく揺れていた。ホールに居た冒険者達の目が釘付けとなった事は言うまでもない。
「どこの国も魔族との争いは変わらずか」
【そう、魔族の存在……。物騒ね】
火の国にて正義のために騎士として剣を振るっていたレイ。国が変わっても蠢く闇に対する脅威は変わらないようだ。そして、宿場町へと向かう道中、背後からの気配に気づく。
「アン、俺の背後に下がっていろ」
「え? レイ様」
人気のない場所で足を止め、アンを自身の後ろへ素早く下げ、振り返るレイ。
「国の平穏を脅かす闇の者よ。私、風の勇者――リーズ・シルフィーが成敗してあげよう」
「なっ、風の勇者だって?」
そこには自らを風の勇者と名乗る、頭に兎耳を携え、銀色の外套を纏った凛々しい女性の姿があったのだった――
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