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第1幕 03 オンライン治療はじめます

十一.どうやらわたしの魔力は〇〇万みたいです 

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 魔法端末マジカルタブレットは、その名の通り魔法の端末。

 その端末があれば、世界中の知らない事象を調べる事も出来るし、遠くに居る相手とも通話が出来る。自身の魔力を登録する事で、個人を特定する身分証明にもなる。
 
 中には息抜きとなるアプリと呼ばれる端末内で遊ぶゲームのようなものも存在していて、テレワーク前の朝や隙間時間にはわたしも〝サンクチュアリ〟という名前の箱庭アプリをプレイしている。

「あ、そろそろホワイトに餌をあげないと!」
『わんわんわん!』

 〝サンクチュアリ〟は、自分のお庭のような空間を作って、ハーブや農作物を作ったり、犬や猫のようなペットを育てたりして遊べるアプリだ。

 アバターという自分の分身となるキャラクターを動かして、お友達の家へ遊びに行ったり、お友達の家のハーブや農作物へお水をあげたり、プレゼント交換なんかも出来るのだ。

 ホワイトは観た目真っ白な子犬姿だが、サンクチュアリの設定上〝聖獣〟らしい。わんわん言っている時点でどう見ても子犬なんだけどね。

 実際にペットを飼っていたら追放された時に連れて来られなかった訳で、サンクチュアリをやっていてよかったなと思う。

「アップル~、朝ご飯出来たよ~。あれ、アップルも〝サンクチュアリ〟やっているの? あ、ワンちゃん可愛い~~!」
「ん? もしかしてレヴェッカもやっているの?」
「うん。うちは猫ちゃん飼ってるよ~。面白いよね~。あ、お友達登録しようよ~。アニマルフォレストエリアのライムで検索してみて~」
「是非是非~。ちょっと待ってね~」

 お友達検索でレヴェッカのサンクネームキャラクターネームを検索。お友達登録をする。 
 これでアプリ内のお友達も十人になった。神殿でアプリをやっているのってクランベリーとシスターミリアくらい。彼女たちとは水やりやプレゼント交換もよくやっている。

 アプリ内でもチェリーちゃんって仲のいいお友達も居る。この子はマメに毎日水やりやわたしが居ない時にホワイトへ餌をあげてくれたりするのよね。

 ちなみにブライツ王子もわたしがやっているアプリの存在を知り、一度登録はしたのだが、彼の箱庭は半年前から腐った農作物が放置されたまま、残念なことになっている。どうやらこういう毎日やる作業なんかは苦手らしい。

「え? アップルなのにオレンジなの? しかも髪の色もオレンジだし」
「いや、リアルと気分を変えたくて……」

 そういうレヴェッカも黒髪三つ編みではなくて、ミント色のロングヘアーにゴスロリ衣装を身につけたライムという女の子に扮していた。アプリ上で普段出来ない格好へ着せ替えする事はよくある事だ。王子はまんま王子だったけど。


「あ、もしかしてアップルも聖域支援サンクサポーター登録ってしてる?」
「え? さんくさぽーたー?」
「もしかして知らないのか。朝ご飯食べながら説明しよっか」

 食卓へ移動したわたしは朝ご飯を食べながら、レヴェッカからサンクサポーターについて解説を受ける。

「え? じゃあ、あのハーブティーのハーブって、サンクチュアリのアプリ内で育てたものを実際届けてもらっているの!?」
「うん。だって、可笑しいと思わなかった? 私、季節違いのハーブを使ったハーブティーなんかも結構淹れているでしょう? あれ、全部サンクチュアリから送って貰ったものよ? 今食卓に並んでいるグリーンリーフとトマトなんかもそうね」

 グリーンリーフとトマトを口にしつつ、レヴェッカがそう教えてくれる。

 全く想像もしていなかった。あくまで魔法端末マジカルタブレットのアプリ内で育てたものは架空のもので、アプリ内で完結するものだと思っていたから。

 どうやら時代はわたしの知らないところでかなり進化しているらしいです。ハーブも食材も、てっきり教会の裏にある森や畑で全部育てていると思っていました。わたしが毎日飲んでいるハーブティーのハーブは、サンクチュアリから直送の白猫宅急便で届けて貰っているらしいです。

「まぁ、好きなハーブは家庭菜園で育ててもいるけどね。てか、アップル。一年もアプリ使ってるんだったら相当〝聖域キュアポイント〟溜まってるんじゃない? 魔力備蓄マジックサーブもしてる?」
「うん、ホワイトがそっちのが成長するからって、いっぱいあげてるよ?」
「げ? 魔力P……じゅ、じゅうまんも備蓄あるじゃん!」

 種やペットの餌なんかが買えるサンクというゲーム内通貨とは別に、自身の魔力をお金の代わりに補完する有料の魔力Pが存在するのだが、わたしの魔力は聖獣のホワイトと相性がいいため、毎日ちょっとずつ貯金していたのだ。

 どうやらその聖域ポイントとやらで、ハーブや農作物、実際に使えるポーションのような回復アイテムも買えるらしい。

 わたしの場合、周囲へ常時展開している防御結界や、お仕事で遠隔操作リモートを使っているとは言え、魔力が有り余っているのだ。テレワークを開始する前も、一日眠れば六桁・・あるわたしの魔力はすぐに回復する訳で、持て余した魔力をこうしてアプリへ提供していただけなのだ。

「ねぇ……ひとつ質問なんですが……アップルって魔力どのくらいあるの?」
「え? うーん……端末での測定だと測定不能って出るんだけど、神殿で調べた時には53万だったかなぁ……」
「ご、ごじゅうさんまん……あなたどう見ても魔王ラスボスでしょう」

 レヴェッカさん、華麗なツッコミをありがとう。それ、神殿のシスター仲間によく言われました。

 レヴェッカ曰く、『フフフ、わたしの魔力は53万よ?』は、勇者の前に魔王が現れた際、勇者の攻撃を受けても余裕の表情をした魔王が勇者へ実際に言ってみたい台詞ベスト3に入るらしい。そのランキングがよく分からないが。1位はなんなんだろう。『それはデスフレアではない。ただのファイアボールだ』とかかしら?

 確か、クランベリーの魔力が700くらいあって、それでも中の上くらいって言ってたっけ。わたしがEXスキルと超級魔法を連発出来るのも、この豊富な魔力のお陰なんだろうな。

 この後、わたしはレヴェッカに教わりながら聖域支援サンクサポーター登録をしておいた。溜まりに溜まった聖域ポイントで、野菜とハーブ、ついでに日常では中々手に入らない上級回復アイテムであるハイポーションを百本・・ほど注文しておいた。 

『どれだけ魔力を課金していたのよ?』とレヴェッカからツッコミが入ったのは言うまでもないですよね、はい。


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