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▼スプラッタ有り系

【※カニバミキサー】祝杯にはほど遠い

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 ……かもしれない。……が、勝ちは勝ちだ。

「これを飲み干せたら、そちらの勝ちでいいぞ」
 戦に惨敗した軍の総隊長である私の目の前に差し出されたものは、ジョッキに入った真っ赤に濁った鉄臭く、生臭い液体。赤黒い固形物も浮いている。
 この液体は、つい先程まで目の前で臼でひかれ、泣き叫びながら死んでいった我が兵達の体の一部の……何が何やらが混ざったものだった。
 
「これを飲めたら命は助けてやるし……なんなら『お前たった1人が我が軍を蹴散らして圧勝した』と吹聴して賞賛を与えてやろうか」
 意地悪く笑う敵軍の老醜。若造。笑うたびにカタカタ鳴る鎧。

「悔しくない。そんなコトしたくない」と言えば嘘になるが、正直私は「え? マジ?」という喜びの方が強かった。
 だって、コレを飲むだけで負けたはずのこの戦が勝ちになり? 全て自分の手柄? 良くない?
 私は「まぁいいか」と総隊長からジョッキを受け取り、先程まで“我が部下”だったものを喉に流し込み始めた。どろどろネトリ、と“我が部下”達が私の喉に絡みついてくる。
 鼻から抜ける生臭い匂いの中に、日々を共に過ごした“我が部下”達の懐かしき体臭を感じた。それは汗臭い、気がした。

「浅ましい!浅ましい!」敵軍の奴らは手を叩いて喜んだ。
「そこまでして生きたいか、勝ちたいか」
「宜しい。その浅ましさに免じて、お前を生かしてやろう。お前んとこが勝った事にしてやろう」
 敵軍は私を賞賛しながら去っていった。こうして、我々の領土は守られた。
 

 ――――数日後、私は「負け戦をひっくり返した男」として賞賛された。
「凄い! 生きたいからって己の部下達のスムージーを飲み下したんですって?!」
「悪魔だね! 潔く死んだ方がまだかっこよかったよ!」

 城に行くと、王からすらも「生きたいが為に、勝ちたいが為によくもまぁそんな事をした。私は恥ずかしい。……報酬をやるから、我が国から出て行け」と言われた。
 妻や子も私を避けた、逃げた、出て行った。
 まぁしかし、私の懐は報酬でホクホクで、そんな事は何も気にならない。勝ちは勝ちだ。
 地面に穴を掘ってそこにクソをしたから、埋葬だって人道的に完璧なはずだ。私に責められる事など、やましい事など何一つない。
 
祝杯をあげよう。今度は、キンキンに冷えたビールで。
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