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カウドゥール

【※BL】べそ泣きG様、今日も元気

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「Kちゃぁぁぁぁ~~~ん! どこぉ~~???」
 
 約180cmの高身長・整った顔立ち・サラサラの金髪をなびかせながら、南魔界魔王G・Sdが前記した豊富なイケメン要素を台無しにするが如く、子供のようにベソベソしながら城中を闊歩する。

 トランクスパンツ・前開き全開の薄いコートを羽織っただけ・サンダル履きの姿でパタパタヒラヒラと、魔王の威厳ゼロで闊歩する。
 
「ねぇ、Kちゃん知らない?」

 従者らにそう訊いてまわるが、誰からも「知りません」としか返ってこず、その度にGは「知ってろし! バカァァァ!!」と従者らを殴っていく。

 従者の1人であるJgが、オドオドしながら「また外出したのでは?」とGに訊ねる。

「だって、この前4日間の外出をして『じゃあ、今度はボクのそばに2日はいてね』って、約束した、のにっ。手足を鎖でつないどいたのに、一体どうやって逃げ出して……あひゅん」

 そこまで言って、Gは感極まって更に泣き出した。
 
 ───これさえなければ……。
 Gの周りの誰もが、そう思う。そう願う。
“愛しのKちゃん”さえ絡まなければ、本当に魔王G様は優秀で威厳たっぷりで世界の誇れる“魔王”なのだ。……だったのだ。

 それが、今はどうであろうか。
 KちゃんKちゃんとベソをかき、そのKちゃんの為に編み物&料理(どちらも、まさかのすごい腕前)をし『恋のドキドキ黒魔術☆』に載っていたからと、民の心臓を徴収する……。

 見事なまでの傍若無人な暗愚魔王に成り下がった(ちなみに、近くに仕えている者らは事情を知っているが、民草は「賢王・G様が人間の少年に骨の随までたぶらかされた」と思っている)。
 
「Kちゃ……」

 顔をぐしゃぐしゃにしたイイ年こいた男が、ノロノロと自室に戻っていく。
 と、いきなり真上の天井板がパゴンと外れ、Gの脳天を直撃した。
 
「死にくされやぁ! Gァ!!」
 厚い天井板と共に、鋭い目つきの黒髪の少年がGの上に落ちてきた。
 
 少年───G様の“愛しのKちゃん”は、ダガーを手にGに馬乗りになり、Gの腕に切りつけた。割と肉をえぐったらしく、辺りにGの血が飛び散る。
 
「ふぁあ! Kちゃんだ! ワーイ!」

 命を奪られかけているというのに、先程までのしょんぼり顔はどこへやら。Gの顔はぱあっ、と輝いた。
 
 KはGの胸元まっすぐダガーを構え、そのまま垂直に突き刺そうとする……が、Gはふぬけた顔のまま、全力でその“ダガーを握るKの小さな手”を抑える。
 
「こんなん刺さったら死んぢゃうよぉ、Kちゃん! ……どうせ“刺す”のなら、あの、ボクにKちゃんのおちんち……」
「きんめぇぇぇぇ!!!」

 Kが、叫びながらダガーを握る手に力を込める。だが、Gもメソメソしながら全力ガードの力をゆるめない。
 
 その乱闘をそばで見守りながら、Jgは「やっぱり、あんな野生児の何がいいのだろう……」と、ぼんやり考えた。
“少年”が好きなのなら、もう少しかわいげのある、従順なコでいいではないか。なんで、よりによってあんな凶暴なガキを……。
 
 Jgが“何回思ったかわからない考え”をしているうちに、2人の勝負がついた。
 Gが、自分に馬乗りしていたKを上体を捻って振り落とし、Kがバランスを崩したところで素早くKの黒髪を掴み、そのまま顔から固い床に叩きつけたのだ。「愛している」と言う割には容赦なく、その相手の体を破損させる事がGは出来た。
 床に、Kの鼻血と歯の欠片がこぼれる。
 
 今度は、GがKの上に馬乗りになった。
 Gが「ごめんね、大丈夫?」と優しくKに訊くも、Kが額から血を流しながら「うるせぇ、黙れ、死ねっ」と暴れるので、Gはめそめそ泣きながらKの頬を殴った。

 殴るか、服を掴んで軽く浮かせた上半身を思いきり床に叩きつけた。
 床に叩きつけられる度にひぅ、と声にならない声をあげ続けたKは、しまいには涙声で「やめろやめろ」と懇願を始めた。

 その懇願が聞こえているのかいないのか、Gは息も絶え絶えなKの服を引っ張り、頭を自分の方に向かせ、唐突に唇を重ねた。

 近くに突っ立っていたままのJgが、2人から軽く目を逸らす。Gは暴れるKを抑えつけながら、そのまま口付けを続けた。悲鳴をあげようとするKが開けた唇の隙間から、舌先をねじ込んで更にKを味わう。

 さんざ殴った直後の口づけなど、血の味しかしないだろうに何がいいのだろうか、とJgは床に落ちている砂利を見つめる。たまに「砂利になりたいな」とすら羨ましく思う。
 
 数分程、Kの口内を熱情的にひとしきりねぶりきってから、Gがぼんやりとした顔でようやく唇を離した。
 
「…………ふつかかん、ずっといいコトしてあげる」

 恍惚とした表情で目を細めながら、犯行予告をする。
 Gは、まだ精通がきていないKに未だに“挿入までは”していなかった。精通してから挿入する、という謎の自分ルールを遵守していた。

 その代わり、前戯……挿入までの下準備は何度も何度もKに行使してきた。触り、舐め、しゃぶる……指で肛門の部位を柔らかくして、慣れさせておくほどで止めていた。

 その『焦らし寸止め愛撫地獄』を二日間──。Kは鳥肌が立った。Gの事は嫌い……憎悪の対象だったが身体は正直なのが憎かった。Gの大きく、温かい手から繰り出される接触・愛撫は日頃のものとは真逆で、リラックス効果も高い。触られると心地よくて若干落ち着いてしまい、挙げ句の果てには甘い吐息を漏らしていることもあ……。

 そこまで考えてから、Kは急に羞恥心に襲われて体が熱くなった。それを振り払うように、眼前の変態美男の顔面に頭突きする。

「でばぁ?!」
 鼻を殴打されたGが、謎の声を出して泣く。

「クソがぁ!! やらせるかぁ!!! 死にくされぇ!!」
 勢い良く立ち上がったKは品のない罵倒を叫び散らしたそのまま、廊下の窓から飛び降りて逃げた。ここは3階だったが、着地後の骨折など根性で秒で治すKには何の問題もない。

「あぁっ、Kちゃ……」

 鼻血を垂らしたGが追いかけようとするも「もうこれは無理だ」と悟って、追いかけるのを控えた。
 なりふり構わず全力逃走するKは、万全の状態でないと追うのは難しい。Gは廊下にしゃがみこんで泣いた。

 Jgは、愛憎騒動直後のGに八つ当たりされるのが怖い……面倒だったので、とりあえず窓から見える流れる雲を穏やかな目で見つめ続けた。

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