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カウドゥール
幼少時Kさん家出
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血で濡れた手が寒気で冷え、凍ったように冷たい。
Kは、冷たくなった自らの血まみれの手を揉んだ。感覚はなかった。
*****
3日前。
あの“馬鹿”に「おそと、いってもいいよー」と言われて手足の枷を外されたので、すぐさま城から飛び出した。
「どうせすぐ見つけるぞぉ~」とかなんとか言っていたが知るか。今度こそ、お前に見つからないような遠い、遠い所にまで逃げてやる。
その“馬鹿”にまた連れ戻されないようにと、いつものように魔界から人界へと移動樹で転移し、とにかくがむしゃらに走った。
*****
途中、国境警備員である見張り3人に通行を止められたので、喉元を枝で突き刺して排除した。
よくある事だった。Kはよく“通行”を邪魔される。
立ち止まっている暇などない。とにかく、なるべく“あいつ”の遠くに行きたいんだ。
Kは“この世で1番可哀相なのは自分”だと、思っていた。
なんかよくわからん魔族の変態野郎にキャッキャキャッキャと抱きつかれ、愛玩動物のようにもてはやされ、挙げ句に“自分が許せなくなるくらい”心も身体もいろんな意味で乱された。
かわいそう。マジ俺かわいそう。
……だから、何をしても許される。
自分の行動の邪魔をする者をどうしようが、全く俺は悪くない。彼はそう思い込んでいた。
*****
腹がへる。
“あいつ”の城では、どんなに旨そうな料理を出されても一切手をつけたことがなかった。
肉汁したたるローストビーフ、香ばしい匂いを漂わせるブ厚いトーストサンド、じっくりコトコト煮込んだミネストローネ、ふんわりと焼き上げた、甘い匂いを放つ何かの小麦粉菓子だろうが、“あいつ”が何を作ってこようが持ってこようが、一切口にしたことはなかった。
むしろ、その料理を皿ごと“あいつ”にぶん投げては暴れた。
「なんで食べてくれないの!」
そう“あいつ”がベソをかきだすから、ざまぁみろ、と奴の丹精込めた、見るからに美味しそうな料理を足で踏み潰す。
食べたくない、と言えばウソになる。
いくら平気とはいえ、やはり感覚的に気分が悪い。腹に何かを入れて、満たされたい。同時に、舌で幸せを感じたい。
だが、“あいつ”に与えられるモノを受け取ったら、おしまいだ。
意地でも食わない。絶対食わない。食ってやるものか。
*****
腹がへった状態で、どこぞの町に入る。
返り血を浴びた、目つきの悪い汚らしい子供を町の皆が一瞥する。
空腹だったので、市場で売り物として並べられていた丸パンを取り、口に入れる。
おいおい! と、店員が慌ててKの細い腕を掴むも、Kは店員に目もくれずにその手を振り払う。
店員が怒り、Kの頬を強く平手打ちした。
平手打ちされ、揺れる光景の中で“並べられたパンの近くに積まれていた木のトレイ”を見つけた。Kは体勢を立て直してからその木のトレイを掴み、それで店員の腹を思いっきり叩いた。
思わず尻もちをついた店員の頭めがけてトレイを振り上げる。容赦なくメッタ打ちにする。
近くにいる人々が自分を止めようとするので、その人らもトレイで力いっぱいぶん殴った。
気がつけば、トレイは木の棒や包丁に変わっていた。知らぬ間に、周りにあったそれらに自然と持ち換えていたらしい。
鬼のような形相でこちらに向かってくる大人達が恐ろしく、ただひたすら攻撃した。
自分が何をしたというのだ。
こいつらは、何をそんなに怒っているのだか。
大量の返り血を吸った服を「あ。重い」と、感じる頃にはもうKに向かってくる大人はいなくなっていた。
皆、死んでいるかKに重症を負わせられて動けなくなっていた。Kの振り回した包丁に顔面を一刀両断された男が地べたでもがいている。うるさかったので首をぎゅう、と踏むと、男は黙った。
寒くて身体が身震いしたので、その男から上着をはいで、着る。
*****
血にまみれたまま町を出て、再度、目的もなく獣道を歩く。血でぬかるんだ靴の上に、更に泥の装飾が施され、重くなる。
市場での先程の乱闘で怪我を負っていたが、無理に歩いているうちに自然と、それは治った。
どこまで歩けば、“奴”は追ってこなくなるのだろうか。というか、何故遠く離れた所にいる自分の居場所が“奴”にはわかるのだろうか。
そう訊くと“奴”は「愛の力だよ☆」と、薄ら寒い事を言ってはぐらかす。腹がたつ。
寒さで手がかじかむ。何故、自分はこんな森の中を歩いているのだろうか。
頬に木の枝が当たる。もう少しで目に入るところだった。いっそ、当たればよかったのに。
不意に、涙がこぼれた。なんで俺、こんな所にこんなぐちゃぼろで1人でいるんだろう。
しかし、立ち止まるわけにはいかない。どこまで行けば“奴”が、自分の事を追えなくなるのか全くわからなかったが、とにかく、移動し続けるしかなかっ
「大丈夫!? なんでそんなにボロボロなの!?」
“奴”の声が頭上からした。振り向いてみると、木の上に“奴”はいた。
だからなんで俺の居場所がわかるんだお前、とKが文句を吐く前に、「そんな格好、寒いでしょ? ほら、おうちに帰ろう? もう充分歩いたでしょ? お外」と言葉を畳み掛けられた。
Kは“奴”に背を向け、無視して歩を進めようとしたが、後頭部にいきなり固い何かが直撃した。……石でも投げられたのだろう。
そのまま倒れたKを“奴”が抱きかかえようとする。Kは無我夢中で抵抗するも、顔面を殴りつけられた。更に、首根っこを掴まれて、大木の固い幹に叩きつけられた。
「……もう充分歩いたでしょう? お外」
“奴”は、そうゆっくり言うと優しく微笑んだ。
“奴”は、その優しい表情のまま泣きじゃくるKの黒髪を乱暴に掴み、軽く口付けをした。
そして、力尽きて動けないKを優しく抱きかかえて、嬉しそうに城に連れ帰った。
帰宅後。“奴”が疲労困憊で動けないKの身体を、“Kに会えなかった数日間分でたまった愛と寂しさと性欲”で容赦なく貪るのは、また別の話。
Kは、冷たくなった自らの血まみれの手を揉んだ。感覚はなかった。
*****
3日前。
あの“馬鹿”に「おそと、いってもいいよー」と言われて手足の枷を外されたので、すぐさま城から飛び出した。
「どうせすぐ見つけるぞぉ~」とかなんとか言っていたが知るか。今度こそ、お前に見つからないような遠い、遠い所にまで逃げてやる。
その“馬鹿”にまた連れ戻されないようにと、いつものように魔界から人界へと移動樹で転移し、とにかくがむしゃらに走った。
*****
途中、国境警備員である見張り3人に通行を止められたので、喉元を枝で突き刺して排除した。
よくある事だった。Kはよく“通行”を邪魔される。
立ち止まっている暇などない。とにかく、なるべく“あいつ”の遠くに行きたいんだ。
Kは“この世で1番可哀相なのは自分”だと、思っていた。
なんかよくわからん魔族の変態野郎にキャッキャキャッキャと抱きつかれ、愛玩動物のようにもてはやされ、挙げ句に“自分が許せなくなるくらい”心も身体もいろんな意味で乱された。
かわいそう。マジ俺かわいそう。
……だから、何をしても許される。
自分の行動の邪魔をする者をどうしようが、全く俺は悪くない。彼はそう思い込んでいた。
*****
腹がへる。
“あいつ”の城では、どんなに旨そうな料理を出されても一切手をつけたことがなかった。
肉汁したたるローストビーフ、香ばしい匂いを漂わせるブ厚いトーストサンド、じっくりコトコト煮込んだミネストローネ、ふんわりと焼き上げた、甘い匂いを放つ何かの小麦粉菓子だろうが、“あいつ”が何を作ってこようが持ってこようが、一切口にしたことはなかった。
むしろ、その料理を皿ごと“あいつ”にぶん投げては暴れた。
「なんで食べてくれないの!」
そう“あいつ”がベソをかきだすから、ざまぁみろ、と奴の丹精込めた、見るからに美味しそうな料理を足で踏み潰す。
食べたくない、と言えばウソになる。
いくら平気とはいえ、やはり感覚的に気分が悪い。腹に何かを入れて、満たされたい。同時に、舌で幸せを感じたい。
だが、“あいつ”に与えられるモノを受け取ったら、おしまいだ。
意地でも食わない。絶対食わない。食ってやるものか。
*****
腹がへった状態で、どこぞの町に入る。
返り血を浴びた、目つきの悪い汚らしい子供を町の皆が一瞥する。
空腹だったので、市場で売り物として並べられていた丸パンを取り、口に入れる。
おいおい! と、店員が慌ててKの細い腕を掴むも、Kは店員に目もくれずにその手を振り払う。
店員が怒り、Kの頬を強く平手打ちした。
平手打ちされ、揺れる光景の中で“並べられたパンの近くに積まれていた木のトレイ”を見つけた。Kは体勢を立て直してからその木のトレイを掴み、それで店員の腹を思いっきり叩いた。
思わず尻もちをついた店員の頭めがけてトレイを振り上げる。容赦なくメッタ打ちにする。
近くにいる人々が自分を止めようとするので、その人らもトレイで力いっぱいぶん殴った。
気がつけば、トレイは木の棒や包丁に変わっていた。知らぬ間に、周りにあったそれらに自然と持ち換えていたらしい。
鬼のような形相でこちらに向かってくる大人達が恐ろしく、ただひたすら攻撃した。
自分が何をしたというのだ。
こいつらは、何をそんなに怒っているのだか。
大量の返り血を吸った服を「あ。重い」と、感じる頃にはもうKに向かってくる大人はいなくなっていた。
皆、死んでいるかKに重症を負わせられて動けなくなっていた。Kの振り回した包丁に顔面を一刀両断された男が地べたでもがいている。うるさかったので首をぎゅう、と踏むと、男は黙った。
寒くて身体が身震いしたので、その男から上着をはいで、着る。
*****
血にまみれたまま町を出て、再度、目的もなく獣道を歩く。血でぬかるんだ靴の上に、更に泥の装飾が施され、重くなる。
市場での先程の乱闘で怪我を負っていたが、無理に歩いているうちに自然と、それは治った。
どこまで歩けば、“奴”は追ってこなくなるのだろうか。というか、何故遠く離れた所にいる自分の居場所が“奴”にはわかるのだろうか。
そう訊くと“奴”は「愛の力だよ☆」と、薄ら寒い事を言ってはぐらかす。腹がたつ。
寒さで手がかじかむ。何故、自分はこんな森の中を歩いているのだろうか。
頬に木の枝が当たる。もう少しで目に入るところだった。いっそ、当たればよかったのに。
不意に、涙がこぼれた。なんで俺、こんな所にこんなぐちゃぼろで1人でいるんだろう。
しかし、立ち止まるわけにはいかない。どこまで行けば“奴”が、自分の事を追えなくなるのか全くわからなかったが、とにかく、移動し続けるしかなかっ
「大丈夫!? なんでそんなにボロボロなの!?」
“奴”の声が頭上からした。振り向いてみると、木の上に“奴”はいた。
だからなんで俺の居場所がわかるんだお前、とKが文句を吐く前に、「そんな格好、寒いでしょ? ほら、おうちに帰ろう? もう充分歩いたでしょ? お外」と言葉を畳み掛けられた。
Kは“奴”に背を向け、無視して歩を進めようとしたが、後頭部にいきなり固い何かが直撃した。……石でも投げられたのだろう。
そのまま倒れたKを“奴”が抱きかかえようとする。Kは無我夢中で抵抗するも、顔面を殴りつけられた。更に、首根っこを掴まれて、大木の固い幹に叩きつけられた。
「……もう充分歩いたでしょう? お外」
“奴”は、そうゆっくり言うと優しく微笑んだ。
“奴”は、その優しい表情のまま泣きじゃくるKの黒髪を乱暴に掴み、軽く口付けをした。
そして、力尽きて動けないKを優しく抱きかかえて、嬉しそうに城に連れ帰った。
帰宅後。“奴”が疲労困憊で動けないKの身体を、“Kに会えなかった数日間分でたまった愛と寂しさと性欲”で容赦なく貪るのは、また別の話。
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