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アルビノ族の“黒髪赤目”
①あいつが来るルート
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と、家の戸が突然開き、“男”がするりとお邪魔した。
“男”は、長い金の美しい髪、澄んだ青い瞳の、長身美丈夫であった。漆黒のマントが金の髪の鮮やかさを更に際だたせている。
外は雪が降っているので、“男”の頬は赤く、頭や肩に多少の雪が積もっていた。
こんなタイプの男はここらでは見かけない。村人らはざわついた。
“男”は、出産したばかりの女に遠慮なく近づき、女の瞳を見つめ、穏やかな笑みを浮かべながら開口一番、こう言った。
「その子を、ください」
女は驚いたが、本能で「嫌です」と拒否をした。
当然である。自らがたった今お腹を痛めて苦労して産んだ子供を、いきなりやって来た見た事もない男に渡す母親がどこにいる。
「いや、イヤもクソもないから。それはボクのだ。よこせ」
“男”は、赤子を力ずくで奪い取った。母親が慌てて取り返そうとするも、“男”は母親の頭に向けて手をかざし、そのまま魔力で頭を破裂させた。返り血が“男”の顔に飛んだ。
うわ、と“男”は不快な表情を浮かべた。
赤子の父親らしき男が、部屋の隅に置かれていた斧を持って雄叫びを上げながら“男”から我が子を取り返そうとするも、あえなく殺された。
“男”は父親の胸板に大きな穴を開けたのだ。母親の時と違い、あまり出血はなかった。
“男”は、心臓を含む、胸板丸ごとだけを魔法でどこぞへ転移させたのだ。
“男”は、恐怖で身動きのとれない周りの人間達に目もくれず、そのまま家を出ようとした。が、1人が余計な一言を言った。
「おぉ、ありがたい」と。
それを耳にした“男”が、虚ろな目でふわりとその1人を見た。
「………? どういうこと?」
“男”にいきなり見つめられ、その1人はひぃ、と慌てた。
「そ、その赤子、アルビノの両親から生まれた黒髪の子供なんですよ。ちょうど、皆で気味悪がっていたところだったんです。……さぁ、どこへとも連れてっちゃってください、そんな気持ちが悪いモノ!」
自分がずっと待ち焦がれていた“愛しいあの人”の生まれ変わりを罵倒され、一気に胸糞が悪くなった“男”は、その場にいた全員の身体を肉片にした。
********
「“あの人”と同じ名前にしちゃうと、またボクのコトを嫌ったりしそうだからなぁ……」
“男”は全身に血しぶきを浴びた状態で、赤子を優しく抱きながら雪道をさくさくと歩いていた。
時たま、赤子の頬をぷにぷにとつついては、ゆるい笑顔を浮かべた。
「……そうだ。『Kt・Lf』って名前はどう? ……昔、“あの人”がつけてくれたウサギの名前でね、そのウサギはとてもよくボクに懐いてくれたんだよ~。適当につけたくせに、割とかっこよくて、良くない? ………ね? だから、今日から君は『Kちゃん』だぁ、Kちゃあ~ん♪」
“男”は1人で勝手に喋り続け、微笑した。
「“今度”は、あんなにひどい監禁しないから、お外にもちゃんと、たまには出してあげるから……ね? ボクが君の親であり恋人であり友人であり兄であり弟という存在になってあげるから、寂しくないよ? ね? 死なないでね? 今度は死なないでね? ……」
***********
そのすぐ後、この“男”と因縁深い北魔王Anbsが赤子を取り返そうと襲いかかってきて、“男”はうっかり空中戦の最中で赤子を取り落として行方不明にしてしまい、わぁんわぁんと女々しく数年間は泣きじゃくるのだが、割愛。
**********
~to be continued~
“男”は、長い金の美しい髪、澄んだ青い瞳の、長身美丈夫であった。漆黒のマントが金の髪の鮮やかさを更に際だたせている。
外は雪が降っているので、“男”の頬は赤く、頭や肩に多少の雪が積もっていた。
こんなタイプの男はここらでは見かけない。村人らはざわついた。
“男”は、出産したばかりの女に遠慮なく近づき、女の瞳を見つめ、穏やかな笑みを浮かべながら開口一番、こう言った。
「その子を、ください」
女は驚いたが、本能で「嫌です」と拒否をした。
当然である。自らがたった今お腹を痛めて苦労して産んだ子供を、いきなりやって来た見た事もない男に渡す母親がどこにいる。
「いや、イヤもクソもないから。それはボクのだ。よこせ」
“男”は、赤子を力ずくで奪い取った。母親が慌てて取り返そうとするも、“男”は母親の頭に向けて手をかざし、そのまま魔力で頭を破裂させた。返り血が“男”の顔に飛んだ。
うわ、と“男”は不快な表情を浮かべた。
赤子の父親らしき男が、部屋の隅に置かれていた斧を持って雄叫びを上げながら“男”から我が子を取り返そうとするも、あえなく殺された。
“男”は父親の胸板に大きな穴を開けたのだ。母親の時と違い、あまり出血はなかった。
“男”は、心臓を含む、胸板丸ごとだけを魔法でどこぞへ転移させたのだ。
“男”は、恐怖で身動きのとれない周りの人間達に目もくれず、そのまま家を出ようとした。が、1人が余計な一言を言った。
「おぉ、ありがたい」と。
それを耳にした“男”が、虚ろな目でふわりとその1人を見た。
「………? どういうこと?」
“男”にいきなり見つめられ、その1人はひぃ、と慌てた。
「そ、その赤子、アルビノの両親から生まれた黒髪の子供なんですよ。ちょうど、皆で気味悪がっていたところだったんです。……さぁ、どこへとも連れてっちゃってください、そんな気持ちが悪いモノ!」
自分がずっと待ち焦がれていた“愛しいあの人”の生まれ変わりを罵倒され、一気に胸糞が悪くなった“男”は、その場にいた全員の身体を肉片にした。
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「“あの人”と同じ名前にしちゃうと、またボクのコトを嫌ったりしそうだからなぁ……」
“男”は全身に血しぶきを浴びた状態で、赤子を優しく抱きながら雪道をさくさくと歩いていた。
時たま、赤子の頬をぷにぷにとつついては、ゆるい笑顔を浮かべた。
「……そうだ。『Kt・Lf』って名前はどう? ……昔、“あの人”がつけてくれたウサギの名前でね、そのウサギはとてもよくボクに懐いてくれたんだよ~。適当につけたくせに、割とかっこよくて、良くない? ………ね? だから、今日から君は『Kちゃん』だぁ、Kちゃあ~ん♪」
“男”は1人で勝手に喋り続け、微笑した。
「“今度”は、あんなにひどい監禁しないから、お外にもちゃんと、たまには出してあげるから……ね? ボクが君の親であり恋人であり友人であり兄であり弟という存在になってあげるから、寂しくないよ? ね? 死なないでね? 今度は死なないでね? ……」
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そのすぐ後、この“男”と因縁深い北魔王Anbsが赤子を取り返そうと襲いかかってきて、“男”はうっかり空中戦の最中で赤子を取り落として行方不明にしてしまい、わぁんわぁんと女々しく数年間は泣きじゃくるのだが、割愛。
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~to be continued~
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