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第88話 平和な日々

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 パルザン地方に平和が訪れた。
 俺たちを狙っていた魔法使いがいなくなり、黒幕は完全に沈黙。マドリガル騎士団長はこれまでの事件を組織的な犯行と睨んでおり、一網打尽にするチャンスだと躍起になっていたらしいが、肩透かしを食らったようだ。

 俺としても、早く黒幕一派が捕まってほしいという願いはあった。
 しかし、地方領主の息子である俺にはやれることに限界がある。
 だから、今は犯人を追うより、あの魔法使いに狙われていたせいで失っていたロミーナと過ごす時間を大切にしようと思うんだ。

 そのロミーナはすっかり明るさを取り戻していた。
 やはり、俺やイルデさんと協力して悪い魔法使いを撃退したという事実が、彼女に自信をつけさせたようだ。
 一連の事件は原作ゲームで語られることがない。
 ボスキャラの過去話は割と定番なので存在こそしているものの、やはりメインストーリーとガッツリ絡まない分、内容は簡略化されたものとなっていた。

 なので、今回の魔法使いとの騒動が原作でどれほどの位置づけになっているかは不明のままとなっている。もしかしたら、ロミーナが闇堕ちをする理由のひとつだったかもしれない。
 そう考えると、今後はもう少し慎重になった方がいいかもな。
 今回は俺とロミーナの命が狙われているという緊急事態だったため、戦う以外の選択肢がなかった。けど、これからもこうしたフラグを含むイベントは発生するだろうし、そこでの選択を誤ったら……俺たちに待っているのは原作通りの救いなき最期だ。

 ここからも気を引き締めていかないとな。

  ◇◇◇

 魔法使い騒動が終息して二週間が経過した。
 最近は騎士団からの情報が途絶えてしまっているけど……たぶん、思っていた以上の成果はなかったんだろうな。
 イルデさん曰く、「真実を話したら死ぬ魔法でもかけられているんじゃないかな」とのことだったが、真相は不明のままだ。
 なんとも後味の悪い結果となってしまったが、それでも俺やロミーナは健在だし、パルザン地方は今日も平和で穏やかな時が流れている。
 そんなある日、俺とロミーナは父上に呼びだされて執務室を訪ねていた。

「ふたりに学園から案内が届いている」

 開口一番に父上はそう告げて、執務机の上に二枚の紙を置いた。
 紙にはそれぞれ俺とロミーナの名前が書かれており、「王立学園入学案内」という文字が目に入る。

「来年の春には正式に学園へ入る予定だが、その前に見学ができるんだ」
「見学……」
「行ってみたいです!」

 勢いよく手をあげるロミーナ。
 確かに、俺も興味あるな。
 ゲームでは訪れた経験のある学園が実際どんなものなのか……楽しみだ。
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