破滅する悪役女帝(推し)の婚約者に転生しました。~闇堕ちフラグをへし折るため、生産魔法を極めて平穏に生きる!~

鈴木竜一

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第85話 ひとまず決着

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 俺たちを付け狙っていた魔法使い。
 その実力は相当なもので、俺とロミーナ、そしてイルデさんの協力攻撃でなんとか捕らえることができた。

 事態に気がつき、大急ぎで戻ってきたモリスさんやパウリーネさんによって騎士団の応援が続々と王都から駆けつけ、監獄への移送はかなり大掛かりなものとなった。

「終わったんだね……」
「ああ……でも、これで全部ってわけじゃないよ」

 安堵しているロミーナには悪いけど、黒幕が捕まらない以上は心の底から安心して生活を送れない。あの魔法使いが情報をすべて吐きだしてくれるのが一番だけど、そう簡単にはいかないだろうな。

「ご無事で何よりです、アズベル様」
「このたびの失態……弁明の余地もありません」
「いやいや、今回のは仕方がなかったって」

 モリスさんとパウリーネさんは帰ってくるなり俺とロミーナのもとを訪れて深々と頭を下げながら謝罪した。ふたりからすると、敵の罠にまんまとハマってしまって主を危険な目に遭わせてしまったという感覚なのだろう。

 まあ、今回のケースは相手がかなりヤリ手だったということもある。魔法使いとしてはイルデさんと互角の戦いを繰り広げていたくらいだしな。

「モリスさん、あの魔法使いはこれからどうなりますか?」
「よくて一生監獄でしょうな」

 よくてそれなんだ。
 一緒についていったミリーさんの話では余罪モリモリって感じだったし、おまけにそのすべてが己の欲望を満たすために行われたもの――情状酌量の余地なしってわけか。

 そちらの処分は騎士団に任せるとして、肝心なのは黒幕の存在だ。
 
「彼女の雇い主は判明すると思いますか?」
「かなり難しいでしょうな。取引を持ちかけて情報を引きだすという手もないわけではないですが……どのみち二度と自由の身になることはないので、腹いせに何もしゃべらず情報を寄越さないかもしれません」

 それくらいひねくれ者だとしたらそういう手段に打って出てもおかしくはない。
 だが、俺たちとしてはなんともスッキリとしない終わり方だ。

 ――ただ、これだけは言える。

「とりあえず……ピクニックの続きくらいはできそうかな?」

 横目でこちらに訴えかけてくるロミーナ。
 俺に判断を委ねているみたいだけど……実際どうなんだ?
 希望は――

「明日にでも行こうか、ピクニック」

 これだった。
 念のため、モリスさんやパウリーネさんにも視線で確認を取ってみる。
 すると、ふたりはニコッと微笑みながら頷いていてくれた。
 パウリーネさんはともかく、モリスさんのあんな自然な笑顔は始めてみるかもしれないな。

 なんて思っていたら、突然ロミーナが勢いよく抱き着いてきた。

「行きましょう! ピクニック!」

 どうやら、喜んでもらえたようだ。
 まだ完全に安心とはいかないけど……明日くらいは盛大に楽しむとしよう。
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