71 / 108
第71話 苦戦
しおりを挟む
すべての用事が済むと、俺たちは暗くなる前に屋敷へ戻ることとなった。
あまり遅くなるようなら止まっていけばいいとイルデさんは提案してくれたのだが、今日は泊りの準備をしていないことと、屋敷に戻ると父上に伝えてしまったこと、それから、ミリーさんにすぐ伝令を送るなどなど……すぐにでも動きださなければならないので今日は戻るという判断に至ったのだ。
すると、ロミーナがイルデさんのもとへと歩み寄り、
「イルデさん、事件が解決したらまたここへ来ます。その時は私たちを泊めてください」
「……分かったよ、ロミーナ。その日が来るのを楽しみに待っているとしよう」
一瞬、イルデさんの表情が綻んだ。
きっと、ロミーナの優しさを感じ取ったのだろう。
俺たちはイルデさんに別れを告げると、屋敷を目指して森を出たのだった。
その日の夜。
「さて……早速やってみるか」
準備運動とばかりに肩を回す俺の視線の先には、イルデさんの家から持ってきた魔法の杖が山積みされていた。折れているとはいえ、さすがにこの量は重かっただろうなぁ……運んでくれたモリスさんには悪いことをしてしまったよ。
その頑張りに応えるためにも、ミリーさんの杖を直せるようにしておかなくちゃ。
「まずは……こいつでいいか」
特に判断基準があるわけじゃなく、とりあえず目についた杖を手に取って魔法庫の中へと投げ込む。
「どれどれ……む?」
いつもの調子で魔力を注ぎ込んでいくが……やはりお皿や壺とは訳が違う。
杖に込められた使用者の魔力と俺の魔力が反発し合い、魔法庫の中でガタガタと暴れだしてしまったのだ。
「きょ、拒否反応ってヤツかな……もう少し様子を見よう」
これまでとは違ったアクションに戸惑いつつ、俺は作業を続行――だが、やはり俺の魔力と杖に染みついた使用者の魔力がぶつかり合ってうまくいかない。
「これは……思わぬ課題だ」
直すだけだから苦労はないなんて軽い気持ちだったけど、まさかこんなに難しい作業となるなんて予想外だ。
しかし、相手のミリーさんは魔法兵団のエースとしてバリバリ前線で活躍していた人だったと同期のふたりから聞いている。そんな彼女が愛用していた魔法の杖を失い、思うように仕事ができなくて困っていると聞かされては放っておくわけにはいかない。
それくらい実力のある人がいなくなっては、メルドアの国にとって大きな損失だ。
「……今日は徹夜になりそうだな」
父上からあまりやるなと釘を刺されているが、これも国の未来のため。
張りきって徹夜するぞ!
※次回から不定期投稿となります!
あまり遅くなるようなら止まっていけばいいとイルデさんは提案してくれたのだが、今日は泊りの準備をしていないことと、屋敷に戻ると父上に伝えてしまったこと、それから、ミリーさんにすぐ伝令を送るなどなど……すぐにでも動きださなければならないので今日は戻るという判断に至ったのだ。
すると、ロミーナがイルデさんのもとへと歩み寄り、
「イルデさん、事件が解決したらまたここへ来ます。その時は私たちを泊めてください」
「……分かったよ、ロミーナ。その日が来るのを楽しみに待っているとしよう」
一瞬、イルデさんの表情が綻んだ。
きっと、ロミーナの優しさを感じ取ったのだろう。
俺たちはイルデさんに別れを告げると、屋敷を目指して森を出たのだった。
その日の夜。
「さて……早速やってみるか」
準備運動とばかりに肩を回す俺の視線の先には、イルデさんの家から持ってきた魔法の杖が山積みされていた。折れているとはいえ、さすがにこの量は重かっただろうなぁ……運んでくれたモリスさんには悪いことをしてしまったよ。
その頑張りに応えるためにも、ミリーさんの杖を直せるようにしておかなくちゃ。
「まずは……こいつでいいか」
特に判断基準があるわけじゃなく、とりあえず目についた杖を手に取って魔法庫の中へと投げ込む。
「どれどれ……む?」
いつもの調子で魔力を注ぎ込んでいくが……やはりお皿や壺とは訳が違う。
杖に込められた使用者の魔力と俺の魔力が反発し合い、魔法庫の中でガタガタと暴れだしてしまったのだ。
「きょ、拒否反応ってヤツかな……もう少し様子を見よう」
これまでとは違ったアクションに戸惑いつつ、俺は作業を続行――だが、やはり俺の魔力と杖に染みついた使用者の魔力がぶつかり合ってうまくいかない。
「これは……思わぬ課題だ」
直すだけだから苦労はないなんて軽い気持ちだったけど、まさかこんなに難しい作業となるなんて予想外だ。
しかし、相手のミリーさんは魔法兵団のエースとしてバリバリ前線で活躍していた人だったと同期のふたりから聞いている。そんな彼女が愛用していた魔法の杖を失い、思うように仕事ができなくて困っていると聞かされては放っておくわけにはいかない。
それくらい実力のある人がいなくなっては、メルドアの国にとって大きな損失だ。
「……今日は徹夜になりそうだな」
父上からあまりやるなと釘を刺されているが、これも国の未来のため。
張りきって徹夜するぞ!
※次回から不定期投稿となります!
42
お気に入りに追加
1,159
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる