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第71話 苦戦

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 すべての用事が済むと、俺たちは暗くなる前に屋敷へ戻ることとなった。 
 あまり遅くなるようなら止まっていけばいいとイルデさんは提案してくれたのだが、今日は泊りの準備をしていないことと、屋敷に戻ると父上に伝えてしまったこと、それから、ミリーさんにすぐ伝令を送るなどなど……すぐにでも動きださなければならないので今日は戻るという判断に至ったのだ。

 すると、ロミーナがイルデさんのもとへと歩み寄り、

「イルデさん、事件が解決したらまたここへ来ます。その時は私たちを泊めてください」
「……分かったよ、ロミーナ。その日が来るのを楽しみに待っているとしよう」
 
 一瞬、イルデさんの表情が綻んだ。
 きっと、ロミーナの優しさを感じ取ったのだろう。
 
 俺たちはイルデさんに別れを告げると、屋敷を目指して森を出たのだった。


 その日の夜。

「さて……早速やってみるか」

 準備運動とばかりに肩を回す俺の視線の先には、イルデさんの家から持ってきた魔法の杖が山積みされていた。折れているとはいえ、さすがにこの量は重かっただろうなぁ……運んでくれたモリスさんには悪いことをしてしまったよ。

 その頑張りに応えるためにも、ミリーさんの杖を直せるようにしておかなくちゃ。

「まずは……こいつでいいか」

 特に判断基準があるわけじゃなく、とりあえず目についた杖を手に取って魔法庫の中へと投げ込む。
 
「どれどれ……む?」

 いつもの調子で魔力を注ぎ込んでいくが……やはりお皿や壺とは訳が違う。
 杖に込められた使用者の魔力と俺の魔力が反発し合い、魔法庫の中でガタガタと暴れだしてしまったのだ。

「きょ、拒否反応ってヤツかな……もう少し様子を見よう」

 これまでとは違ったアクションに戸惑いつつ、俺は作業を続行――だが、やはり俺の魔力と杖に染みついた使用者の魔力がぶつかり合ってうまくいかない。

「これは……思わぬ課題だ」

 直すだけだから苦労はないなんて軽い気持ちだったけど、まさかこんなに難しい作業となるなんて予想外だ。
 しかし、相手のミリーさんは魔法兵団のエースとしてバリバリ前線で活躍していた人だったと同期のふたりから聞いている。そんな彼女が愛用していた魔法の杖を失い、思うように仕事ができなくて困っていると聞かされては放っておくわけにはいかない。

 それくらい実力のある人がいなくなっては、メルドアの国にとって大きな損失だ。

「……今日は徹夜になりそうだな」

 父上からあまりやるなと釘を刺されているが、これも国の未来のため。
 張りきって徹夜するぞ!


※次回から不定期投稿となります!
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