68 / 99
第68話 アズベルの役目
しおりを挟む
用意された席につき、いよいよ新しい魔道具づくりの話し合いが始まる。
「さて、以前君から提案された新しい魔道具のアイディアだが……私個人としてはとても興味があって、ぜひとも実現してもらいたいと思っている」
「あ、ありがとうございます」
イルデさんは前向きに考えてくれていた。
もともと、この手の話は好きそうだから乗ってきてくれると読んでいたのでここまでは予想通り。
――だが、問題はここからだ。
「このパルザン地方を監視している黒幕の手下と思われる魔法使いを炙りだすためのアイテムか……ヤツは巧みに自分の存在を隠し、この私にさえその気配を掴ませないでいる」
「でも、それは結界魔法と探知魔法を両立させているからなんですよね?」
「それはそうだが……まさか――」
「たぶん、イルデさんの思う『まさか』で合っていると思いますよ」
俺とイルデさんの間にだけ共有される感覚。
さすがに他の三人が置き去り状態なので、考案しておいた魔道具のプランを説明していく。
「さっきも言いましたけど、イルデさんが魔法使いの胃場所を特定できない理由はふたつの大きな魔法を同時に発動しているからなんです」
「おふたりの会話でそれはなんとなく察知できましたが……それと魔道具がどう関係していると?」
不思議そうにこちらを眺めながら、モリスさんがそう質問を投げかけてくる。
「同時にできないなら、そのひとつを俺が代わりに請け負うことにしたんです――魔道具を使って」
「なるほど! そういうことだったのね!」
ここで状況を理解したロミーナが叫ぶ。
結界魔法と探知魔法。
負担の多い魔法を同時に発動できないなら、どちらかひとつを俺が行う。
「そうなると、君に担当してもらうのは探知魔法の方がいいだろうね。辺境領地とはいえ、パルザン地方は屋敷とは大きさがまったく異なる。そのすべてを網羅するのは厳しいだろう」
「分かりました。それなら、魔力から相手の居場所を探知できる魔道具を考えてみます」
「しかし、そうなると厄介な問題があるね」
イルデさんの語る厄介な問題。
それは俺にも心当たりがあった。
「相手の魔力の質……これが分からないことには特定できそうにないですね」
「その通りだ」
「でしたら、魔法兵団に相談をしてみてはどうでしょう?」
ゆっくりと手をあげてそう提案したのはパウリーネさんだった。
「状況からすると、それが一番望ましいのだが……今はどこも手いっぱいではないのか?」
「ひとりだけ、協力してくれそうな子がいます」
パウリーネさんがそう言うと、隣に座っていたモリスさんが驚いたように目を見開いた。
「お、おい、まさか――彼女に声をかける気か?」
「そうするのが一番でしょう?」
何やら不穏な空気のふたり。
一体、パウリーネさんは誰に声をかける気なんだ?
「さて、以前君から提案された新しい魔道具のアイディアだが……私個人としてはとても興味があって、ぜひとも実現してもらいたいと思っている」
「あ、ありがとうございます」
イルデさんは前向きに考えてくれていた。
もともと、この手の話は好きそうだから乗ってきてくれると読んでいたのでここまでは予想通り。
――だが、問題はここからだ。
「このパルザン地方を監視している黒幕の手下と思われる魔法使いを炙りだすためのアイテムか……ヤツは巧みに自分の存在を隠し、この私にさえその気配を掴ませないでいる」
「でも、それは結界魔法と探知魔法を両立させているからなんですよね?」
「それはそうだが……まさか――」
「たぶん、イルデさんの思う『まさか』で合っていると思いますよ」
俺とイルデさんの間にだけ共有される感覚。
さすがに他の三人が置き去り状態なので、考案しておいた魔道具のプランを説明していく。
「さっきも言いましたけど、イルデさんが魔法使いの胃場所を特定できない理由はふたつの大きな魔法を同時に発動しているからなんです」
「おふたりの会話でそれはなんとなく察知できましたが……それと魔道具がどう関係していると?」
不思議そうにこちらを眺めながら、モリスさんがそう質問を投げかけてくる。
「同時にできないなら、そのひとつを俺が代わりに請け負うことにしたんです――魔道具を使って」
「なるほど! そういうことだったのね!」
ここで状況を理解したロミーナが叫ぶ。
結界魔法と探知魔法。
負担の多い魔法を同時に発動できないなら、どちらかひとつを俺が行う。
「そうなると、君に担当してもらうのは探知魔法の方がいいだろうね。辺境領地とはいえ、パルザン地方は屋敷とは大きさがまったく異なる。そのすべてを網羅するのは厳しいだろう」
「分かりました。それなら、魔力から相手の居場所を探知できる魔道具を考えてみます」
「しかし、そうなると厄介な問題があるね」
イルデさんの語る厄介な問題。
それは俺にも心当たりがあった。
「相手の魔力の質……これが分からないことには特定できそうにないですね」
「その通りだ」
「でしたら、魔法兵団に相談をしてみてはどうでしょう?」
ゆっくりと手をあげてそう提案したのはパウリーネさんだった。
「状況からすると、それが一番望ましいのだが……今はどこも手いっぱいではないのか?」
「ひとりだけ、協力してくれそうな子がいます」
パウリーネさんがそう言うと、隣に座っていたモリスさんが驚いたように目を見開いた。
「お、おい、まさか――彼女に声をかける気か?」
「そうするのが一番でしょう?」
何やら不穏な空気のふたり。
一体、パウリーネさんは誰に声をかける気なんだ?
31
お気に入りに追加
1,169
あなたにおすすめの小説
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
田舎暮らしの魔草薬師
鈴木竜一
ファンタジー
治癒魔法使いたちが集まり、怪我や病に苦しむ人たちを助けるために創設されたレイナード聖院で働くハリスは拝金主義を掲げる新院長の方針に逆らってクビを宣告される。
しかし、パワハラにうんざりしていたハリスは落ち込むことなく、これをいいきっかけと考えて治癒魔法と魔草薬を広めるべく独立して診療所を開業。
一方、ハリスを信頼する各分野の超一流たちはその理不尽さとあからさまな金儲け運用に激怒し、独立したハリスをサポートすべく、彼が移り住んだ辺境領地へと集結するのだった。
『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。
晴行
ファンタジー
ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
地方勤務の聖騎士 ~王都勤務から農村に飛ばされたので畑を耕したり動物の世話をしながらのんびり仕事します~
鈴木竜一
ファンタジー
王都育ちのエリート騎士は左遷先(田舎町の駐在所)での生活を満喫する!
ランドバル王国騎士団に所属するジャスティンは若くして聖騎士の称号を得た有望株。だが、同期のライバルによって運営費横領の濡れ衣を着せられ、地方へと左遷させられてしまう。
王都勤務への復帰を目指すも、左遷先の穏やかでのんびりした田舎暮らしにすっかりハマってしまい、このままでもいいかと思い始めた――その矢先、なぜか同期のハンクが狙っている名家出身の後輩女騎士エリナがジャスティンを追って同じく田舎町勤務に!?
一方、騎士団内ではジャスティンの事件が何者かに仕掛けられたものではないかと疑惑が浮上していて……
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる