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第68話 アズベルの役目

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 用意された席につき、いよいよ新しい魔道具づくりの話し合いが始まる。

「さて、以前君から提案された新しい魔道具のアイディアだが……私個人としてはとても興味があって、ぜひとも実現してもらいたいと思っている」
「あ、ありがとうございます」
 
 イルデさんは前向きに考えてくれていた。
 もともと、この手の話は好きそうだから乗ってきてくれると読んでいたのでここまでは予想通り。
 ――だが、問題はここからだ。

「このパルザン地方を監視している黒幕の手下と思われる魔法使いを炙りだすためのアイテムか……ヤツは巧みに自分の存在を隠し、この私にさえその気配を掴ませないでいる」
「でも、それは結界魔法と探知魔法を両立させているからなんですよね?」
「それはそうだが……まさか――」
「たぶん、イルデさんの思う『まさか』で合っていると思いますよ」

 俺とイルデさんの間にだけ共有される感覚。
 さすがに他の三人が置き去り状態なので、考案しておいた魔道具のプランを説明していく。

「さっきも言いましたけど、イルデさんが魔法使いの胃場所を特定できない理由はふたつの大きな魔法を同時に発動しているからなんです」
「おふたりの会話でそれはなんとなく察知できましたが……それと魔道具がどう関係していると?」

 不思議そうにこちらを眺めながら、モリスさんがそう質問を投げかけてくる。

「同時にできないなら、そのひとつを俺が代わりに請け負うことにしたんです――魔道具を使って」
「なるほど! そういうことだったのね!」

 ここで状況を理解したロミーナが叫ぶ。
 結界魔法と探知魔法。
 負担の多い魔法を同時に発動できないなら、どちらかひとつを俺が行う。

「そうなると、君に担当してもらうのは探知魔法の方がいいだろうね。辺境領地とはいえ、パルザン地方は屋敷とは大きさがまったく異なる。そのすべてを網羅するのは厳しいだろう」
「分かりました。それなら、魔力から相手の居場所を探知できる魔道具を考えてみます」
「しかし、そうなると厄介な問題があるね」

 イルデさんの語る厄介な問題。
 それは俺にも心当たりがあった。

「相手の魔力の質……これが分からないことには特定できそうにないですね」
「その通りだ」
「でしたら、魔法兵団に相談をしてみてはどうでしょう?」

 ゆっくりと手をあげてそう提案したのはパウリーネさんだった。

「状況からすると、それが一番望ましいのだが……今はどこも手いっぱいではないのか?」
「ひとりだけ、協力してくれそうな子がいます」

 パウリーネさんがそう言うと、隣に座っていたモリスさんが驚いたように目を見開いた。

「お、おい、まさか――彼女に声をかける気か?」
「そうするのが一番でしょう?」

 何やら不穏な空気のふたり。
 一体、パウリーネさんは誰に声をかける気なんだ?
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