68 / 108
第68話 アズベルの役目
しおりを挟む
用意された席につき、いよいよ新しい魔道具づくりの話し合いが始まる。
「さて、以前君から提案された新しい魔道具のアイディアだが……私個人としてはとても興味があって、ぜひとも実現してもらいたいと思っている」
「あ、ありがとうございます」
イルデさんは前向きに考えてくれていた。
もともと、この手の話は好きそうだから乗ってきてくれると読んでいたのでここまでは予想通り。
――だが、問題はここからだ。
「このパルザン地方を監視している黒幕の手下と思われる魔法使いを炙りだすためのアイテムか……ヤツは巧みに自分の存在を隠し、この私にさえその気配を掴ませないでいる」
「でも、それは結界魔法と探知魔法を両立させているからなんですよね?」
「それはそうだが……まさか――」
「たぶん、イルデさんの思う『まさか』で合っていると思いますよ」
俺とイルデさんの間にだけ共有される感覚。
さすがに他の三人が置き去り状態なので、考案しておいた魔道具のプランを説明していく。
「さっきも言いましたけど、イルデさんが魔法使いの胃場所を特定できない理由はふたつの大きな魔法を同時に発動しているからなんです」
「おふたりの会話でそれはなんとなく察知できましたが……それと魔道具がどう関係していると?」
不思議そうにこちらを眺めながら、モリスさんがそう質問を投げかけてくる。
「同時にできないなら、そのひとつを俺が代わりに請け負うことにしたんです――魔道具を使って」
「なるほど! そういうことだったのね!」
ここで状況を理解したロミーナが叫ぶ。
結界魔法と探知魔法。
負担の多い魔法を同時に発動できないなら、どちらかひとつを俺が行う。
「そうなると、君に担当してもらうのは探知魔法の方がいいだろうね。辺境領地とはいえ、パルザン地方は屋敷とは大きさがまったく異なる。そのすべてを網羅するのは厳しいだろう」
「分かりました。それなら、魔力から相手の居場所を探知できる魔道具を考えてみます」
「しかし、そうなると厄介な問題があるね」
イルデさんの語る厄介な問題。
それは俺にも心当たりがあった。
「相手の魔力の質……これが分からないことには特定できそうにないですね」
「その通りだ」
「でしたら、魔法兵団に相談をしてみてはどうでしょう?」
ゆっくりと手をあげてそう提案したのはパウリーネさんだった。
「状況からすると、それが一番望ましいのだが……今はどこも手いっぱいではないのか?」
「ひとりだけ、協力してくれそうな子がいます」
パウリーネさんがそう言うと、隣に座っていたモリスさんが驚いたように目を見開いた。
「お、おい、まさか――彼女に声をかける気か?」
「そうするのが一番でしょう?」
何やら不穏な空気のふたり。
一体、パウリーネさんは誰に声をかける気なんだ?
「さて、以前君から提案された新しい魔道具のアイディアだが……私個人としてはとても興味があって、ぜひとも実現してもらいたいと思っている」
「あ、ありがとうございます」
イルデさんは前向きに考えてくれていた。
もともと、この手の話は好きそうだから乗ってきてくれると読んでいたのでここまでは予想通り。
――だが、問題はここからだ。
「このパルザン地方を監視している黒幕の手下と思われる魔法使いを炙りだすためのアイテムか……ヤツは巧みに自分の存在を隠し、この私にさえその気配を掴ませないでいる」
「でも、それは結界魔法と探知魔法を両立させているからなんですよね?」
「それはそうだが……まさか――」
「たぶん、イルデさんの思う『まさか』で合っていると思いますよ」
俺とイルデさんの間にだけ共有される感覚。
さすがに他の三人が置き去り状態なので、考案しておいた魔道具のプランを説明していく。
「さっきも言いましたけど、イルデさんが魔法使いの胃場所を特定できない理由はふたつの大きな魔法を同時に発動しているからなんです」
「おふたりの会話でそれはなんとなく察知できましたが……それと魔道具がどう関係していると?」
不思議そうにこちらを眺めながら、モリスさんがそう質問を投げかけてくる。
「同時にできないなら、そのひとつを俺が代わりに請け負うことにしたんです――魔道具を使って」
「なるほど! そういうことだったのね!」
ここで状況を理解したロミーナが叫ぶ。
結界魔法と探知魔法。
負担の多い魔法を同時に発動できないなら、どちらかひとつを俺が行う。
「そうなると、君に担当してもらうのは探知魔法の方がいいだろうね。辺境領地とはいえ、パルザン地方は屋敷とは大きさがまったく異なる。そのすべてを網羅するのは厳しいだろう」
「分かりました。それなら、魔力から相手の居場所を探知できる魔道具を考えてみます」
「しかし、そうなると厄介な問題があるね」
イルデさんの語る厄介な問題。
それは俺にも心当たりがあった。
「相手の魔力の質……これが分からないことには特定できそうにないですね」
「その通りだ」
「でしたら、魔法兵団に相談をしてみてはどうでしょう?」
ゆっくりと手をあげてそう提案したのはパウリーネさんだった。
「状況からすると、それが一番望ましいのだが……今はどこも手いっぱいではないのか?」
「ひとりだけ、協力してくれそうな子がいます」
パウリーネさんがそう言うと、隣に座っていたモリスさんが驚いたように目を見開いた。
「お、おい、まさか――彼女に声をかける気か?」
「そうするのが一番でしょう?」
何やら不穏な空気のふたり。
一体、パウリーネさんは誰に声をかける気なんだ?
32
お気に入りに追加
1,166
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~
【書籍化決定!】
本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました!
第1巻は10月下旬発売!
よろしくお願いします!
賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。
その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。
一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。
こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
救世主パーティーを追放された愛弟子とともにはじめる辺境スローライフ
鈴木竜一
ファンタジー
「おまえを今日限りでパーティーから追放する」
魔族から世界を救う目的で集められた救世主パーティー【ヴェガリス】のリーダー・アルゴがそう言い放った相手は主力メンバー・デレクの愛弟子である見習い女剣士のミレインだった。
表向きは実力不足と言いながら、真の追放理由はしつこく言い寄っていたミレインにこっぴどく振られたからというしょうもないもの。
真相を知ったデレクはとても納得できるものじゃないと憤慨し、あとを追うようにパーティーを抜けると彼女を連れて故郷の田舎町へと戻った。
その後、農業をやりながら冒険者パーティーを結成。
趣味程度にのんびりやろうとしていたが、やがて彼らは新しい仲間とともに【真の救世主】として世界にその名を轟かせていくことになる。
一方、【ヴェガリス】ではアルゴが嫉妬に狂い始めていて……
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる