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第59話 最終確認
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最初に作った義手よりも、明らかにモリスさんのリアクションがいい。
というか、ほとんど合格をもらったようなものだが……肝心の剣術についてはまだ何も試していない。
というわけで、すぐに剣を握っての実践的な最終確認を行うが、モリスさんがその相手役に指名したのは同期のパウリーネさんだった。
「「…………」」
無言で見つめ合う――いや、睨み合う両者。
あくまでも義手でしっかりと剣を振れるかどうかの確認ってだけなのに、ふたりの間を流れる殺伐とした空気はまるで宿敵と対峙した時のような緊張感がある。確かにモリスさんは「本気で来い」みたいな発言をしていたけど……まさか本当にガチでやるのか?
「だ、大丈夫だよね、アズベル」
「う、うん。パウリーネさんもそこは分かってくれていると思うけど……」
だんだん不安が大きくなってきた――その時、
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「はあああああああああああああああっ!!」
ふたりはほぼ同時に雄叫びをあげ、突っ込んでいく。
やがて距離が縮まると「ガギン!」という金属同士がぶつかり合うような鈍い音が辺りに響き渡った。
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
モリスさんとパウリーネさんの気迫に押し負けそうになるのをなんとか踏ん張る。
「大丈夫か、ロミーナ」
「へ、平気――あっ!」
よろめいたロミーナの体を抱きとめると、彼女は前方を指さして叫んだ。それにつられて俺も彼女の視線を追うように視線を移した時――信じられない光景に思わず息を呑んだ。
先ほどよりも短い間隔で鳴り響く金属同士の衝突音。
それは凄まじいスピードで剣をぶつけ合うモリスさんとパウリーネさんによって発せられているものだった。
な、なんて戦いだ。
これはもう最終確認の域を超えた真剣勝負。
お互いが全力を出して挑んでいる。
「……うん? 全力?」
あれ?
もしかして……モリスさん、まともに剣が振れている!?
いや、あれが全力かどうかは分からないけど、少なくともパウリーネさんと互角に渡り合っている。
――違う。
よく見ると……押しているのはモリスさんの方だ。
一見するとほぼ互角に見えるが、どちらかというとモリスさんの方が優勢に運んでいる。その圧倒的なスピードでパウリーネさんを翻弄しているのだ。
最初はついていけていたのだが、徐々に速度が上がっていき、やがてさばききれなくなっていった。
そして――ついに決着の時を迎える。
というか、ほとんど合格をもらったようなものだが……肝心の剣術についてはまだ何も試していない。
というわけで、すぐに剣を握っての実践的な最終確認を行うが、モリスさんがその相手役に指名したのは同期のパウリーネさんだった。
「「…………」」
無言で見つめ合う――いや、睨み合う両者。
あくまでも義手でしっかりと剣を振れるかどうかの確認ってだけなのに、ふたりの間を流れる殺伐とした空気はまるで宿敵と対峙した時のような緊張感がある。確かにモリスさんは「本気で来い」みたいな発言をしていたけど……まさか本当にガチでやるのか?
「だ、大丈夫だよね、アズベル」
「う、うん。パウリーネさんもそこは分かってくれていると思うけど……」
だんだん不安が大きくなってきた――その時、
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「はあああああああああああああああっ!!」
ふたりはほぼ同時に雄叫びをあげ、突っ込んでいく。
やがて距離が縮まると「ガギン!」という金属同士がぶつかり合うような鈍い音が辺りに響き渡った。
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
モリスさんとパウリーネさんの気迫に押し負けそうになるのをなんとか踏ん張る。
「大丈夫か、ロミーナ」
「へ、平気――あっ!」
よろめいたロミーナの体を抱きとめると、彼女は前方を指さして叫んだ。それにつられて俺も彼女の視線を追うように視線を移した時――信じられない光景に思わず息を呑んだ。
先ほどよりも短い間隔で鳴り響く金属同士の衝突音。
それは凄まじいスピードで剣をぶつけ合うモリスさんとパウリーネさんによって発せられているものだった。
な、なんて戦いだ。
これはもう最終確認の域を超えた真剣勝負。
お互いが全力を出して挑んでいる。
「……うん? 全力?」
あれ?
もしかして……モリスさん、まともに剣が振れている!?
いや、あれが全力かどうかは分からないけど、少なくともパウリーネさんと互角に渡り合っている。
――違う。
よく見ると……押しているのはモリスさんの方だ。
一見するとほぼ互角に見えるが、どちらかというとモリスさんの方が優勢に運んでいる。その圧倒的なスピードでパウリーネさんを翻弄しているのだ。
最初はついていけていたのだが、徐々に速度が上がっていき、やがてさばききれなくなっていった。
そして――ついに決着の時を迎える。
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