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第58話 再挑戦

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 苦労の末になんとか完成したモリスさん専用の義手。
 だが、問題はここからだ。前も義手自体は完成したのだが、彼が剣術を披露する際に発生する凄まじい衝撃には耐えきれないという事実が発覚。あえなく不採用となった。
 
 今回はその失敗を反省し、素材から作り直した。
 前世の知識を生かし、この世界では存在していない金属を生みだすと、それをベースにして新たに義手を完成させた。俺としては手応えバッチリで会心の出来だったのだが……本当にその通りかはモリスさんに実際使ってもらわなくては判断がつかない。

 ――と、いうわけで、早速俺とロミーナは彼のもとを訪れた。

「今度はこれを試してみてください、モリスさん」
「アズベル様……」

 モリスさんは少し困った感じで動きを止めたが、すぐに義手を手に取って装着してくれた。
 すると、

「ほぉ……」

 前回とは明らかに異なる反応だった。
 装着し終えると、指を閉じたり開いたり、何度も同じ動きを繰り返して感触を確かめているようだ。前はこの段階にすら達しなかったから進歩していると捉えられる。

「ど、どうですか?」

 恐る恐る感想を尋ねてみる。
 
「悪くないですね。以前よりもずっと腕に馴染む……あとは剣を持った時の感覚がどうなるかですが」
「そ、そうですか」
 
 よし。
 とりあえず第一段階は突破だ。
 あとはモリスさんが言ったように、実際剣を持ってしっかりと振れるかどうか。ここがポイントだな。
 モリスさんは腰に携えていた二本の剣のうちの一本に手をかけると、それを引き抜いた。
 
「うおっ……」

 思わずそんな声が漏れでてしまう。
 なんとも言えない迫力だ……これがワイバーンさえもぶった切る実力を持った騎士の持つオーラってヤツか。顔つきもさっきまでとまるで違うし、きっとこれが本来のモリスさんの姿なのだろう。

「うむ。悪くない」
「ほ、本当ですか!?」

 モリスさんの口からこぼれた率直な意見に、俺は思わず飛びついた。これはかなりの好感触じゃないのか?
 ――だが、冷静に考えるとまだ剣を持っただけにすぎない。
 問題はいよいよ最終局面を迎えていた。

 それをモリスさんもよく分かっているみたいだ。

「パウリーネ」

 剣を握っていたモリスさんはパウリーネさんに声をかけると、持っていた二本の剣のうち残り一本を彼女へと放り投げる。それを受け取ったパウリーネさんはすぐにモリスさんの意図を読み取って鞘から引き抜いた。

「少し付き合ってくれ」
「いいだろう。本気でいかせてもらうぞ?」
「こちらもそのつもりだ」

 互いに剣を構える。
 なんか……ふたりとも雰囲気がマジなんだけど?
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