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第53話 ロミーナのお願い

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 パウリーネさんからの情熱的(?)な情報提供によって、モリスさんがどんな騎士だったのか見えてきた。

 彼はパワーで押しきるタイプではなく、スピードで翻弄するタイプ。それも生半可なスピードではなく、少なくとも現役の騎士で彼の速さについていける者はいないという。ワイバーンを討伐した際もこのスピードを生かして倒したって話だ。

「よしよし……だいぶ分かってきたぞ」

 夕食を終えて自室へと戻った後、俺は机に集めた素材を広げて唸りながら考え込む。
 スピード重視の戦い方をするモリスさんは、腕の使い方も繊細なはずだ。そうなるといかに細かな動きを再現できるのかが鍵だ。

 まずは試作とばかりに、集めた素材を魔法庫へ。
 湖を渡る船に比べたらサイズは小さいが、構造はそれに匹敵する――いや、使用する相手のことを考えたらより難しいかもしれない。

 しばらくすると、試作第一弾が完成。
 ――で、俺はここである事実に気づいた。

「あっ、試そうにも俺がやったって意味ないのか……」

 試作でありながら試す方法が一切ないとは……迂闊だったな。明日になったらモリスさんのところへ持っていくしかないか。
 しまったなぁと項垂れていたら、部屋のドアをノックする音が。

「アズベル、まだ起きてる?」

 部屋の外にいたのはロミーナだった。
 いつもなら寝ている時間なのに……珍しいな。
 俺はドアを開けて彼女を部屋の中へと招き入れる。

「あっ、義手ができたのね」
「うん。でも、実際に着用してもらってからいろいろと調整しようと思っているんだ。騎士団でも屈指の実力者である彼の腕を再現するには――って、ロミーナ? どうかしたの?」
「えっ!? え、えぇっと……」

 なんだか視線が泳ぎまくって落ち着かないな。
 そういえば、彼女はどうして俺の部屋にやってきたんだろう。
 理由を聞いていなかったな。

 ――で、その理由についてだが、ロミーナはなかなか話そうとしない。
 ふと彼女の手元に目をやると、愛用している枕が。

「あぁ……もしかして、怖い夢でも見た?」
「なっ、何で分かったの!?」

 なるほど。
 それで怖くなっちゃったから眠れなくなったのか。

「ロミーナ……今日は一緒に寝ようか」
「い、いいの!?」
「もちろんだよ」

 まあ、十歳の子ども同士だし、一緒に寝るくらいなら誰も咎めはしないだろう。何より怖がっているロミーナを放ってはおけないし。

 こうして、俺たちは身を寄せ合って就寝することにしたのだった。
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