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第51話 新しい挑戦
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ワイバーンを倒すために失ってしまったモリスさんの右腕。
現在は義手を使い、日常生活ならば問題なく過ごせるくらいにはなっているようだが、かつてのような剣術はもう披露できないという。
屋敷の近辺で素材集めをしつつ、俺はどうやって義手を作ろうか悩んでいた。
生活していくだけなら、今の義手で十分なのだ。
俺が求めているのは――以前のように騎士として素晴らしい実力を持っていたモリスさんがその頃と寸分の変わりなく剣を振れるようになれるほど精巧な義手だ。
「うーん……これだけじゃまだ足りないよなぁ」
今回のケースは前回の船とまた違った難しさがある。
まず、右腕が健在だった頃のモリスさんはどれほどの実力があったのだろうか。ワイバーンを討伐できるくらいだから相当強いっていうのは分かるんだけど……具体的にどれくらいの力があったかは不明だ。
この辺は同期であるパウリーネさんから話を聞いた方がよさそうだな。
あとは素材だ。
腕となると、大事なのは関節だよな。それに、指先まで自分の意思で動かせるようにならなければモリスさんは実力を十分に発揮できないだろう。繊細な作業であると同時に、素材選びはこれまで以上に厳選した物でなければならない。
条件は間違いなくこれまででもっとも厳しくなりそうだ。
「船よりずっと小さいんだけど……人の体と直結して動かせるようになる道具となると制御が難しいな」
「みんなが自由に扱える物」より、「誰かひとりが完璧に使いこなせる物」の方が難易度としては高くなる……まあ、今回のケースは以前のような剣術を取り戻すためという特殊な条件がついているから、難しさに拍車をかけているんだけど。
モリスさんが戦っている映像でもあれば作業スピードも上がるのだが、さすがにそれは望めないか。
もう少し素材を探していこうと思ったら、
「こちらでしたか、アズベル様」
俺を心配して、パウリーネさんがやってきた。
「パウリーネさん? ロミーナは?」
「お休みになられました。よほどお疲れだったのでしょう」
「そうですか……」
うーん……モリスさんの心配も理解できるけど、やっぱりロミーナがリラックスできる環境が必要だよなぁ。手っ取り早いのはマドリガル騎士団長が黒幕を捕まえてくれることなんだけど、相手はかなりの手練れっぽいし、時間がかかりそうだ。
――そうだ。
せっかくパウリーネさんが来てくれたんだから、素材集めをする傍らモリスさんについての情報を集めるとしよう。
現在は義手を使い、日常生活ならば問題なく過ごせるくらいにはなっているようだが、かつてのような剣術はもう披露できないという。
屋敷の近辺で素材集めをしつつ、俺はどうやって義手を作ろうか悩んでいた。
生活していくだけなら、今の義手で十分なのだ。
俺が求めているのは――以前のように騎士として素晴らしい実力を持っていたモリスさんがその頃と寸分の変わりなく剣を振れるようになれるほど精巧な義手だ。
「うーん……これだけじゃまだ足りないよなぁ」
今回のケースは前回の船とまた違った難しさがある。
まず、右腕が健在だった頃のモリスさんはどれほどの実力があったのだろうか。ワイバーンを討伐できるくらいだから相当強いっていうのは分かるんだけど……具体的にどれくらいの力があったかは不明だ。
この辺は同期であるパウリーネさんから話を聞いた方がよさそうだな。
あとは素材だ。
腕となると、大事なのは関節だよな。それに、指先まで自分の意思で動かせるようにならなければモリスさんは実力を十分に発揮できないだろう。繊細な作業であると同時に、素材選びはこれまで以上に厳選した物でなければならない。
条件は間違いなくこれまででもっとも厳しくなりそうだ。
「船よりずっと小さいんだけど……人の体と直結して動かせるようになる道具となると制御が難しいな」
「みんなが自由に扱える物」より、「誰かひとりが完璧に使いこなせる物」の方が難易度としては高くなる……まあ、今回のケースは以前のような剣術を取り戻すためという特殊な条件がついているから、難しさに拍車をかけているんだけど。
モリスさんが戦っている映像でもあれば作業スピードも上がるのだが、さすがにそれは望めないか。
もう少し素材を探していこうと思ったら、
「こちらでしたか、アズベル様」
俺を心配して、パウリーネさんがやってきた。
「パウリーネさん? ロミーナは?」
「お休みになられました。よほどお疲れだったのでしょう」
「そうですか……」
うーん……モリスさんの心配も理解できるけど、やっぱりロミーナがリラックスできる環境が必要だよなぁ。手っ取り早いのはマドリガル騎士団長が黒幕を捕まえてくれることなんだけど、相手はかなりの手練れっぽいし、時間がかかりそうだ。
――そうだ。
せっかくパウリーネさんが来てくれたんだから、素材集めをする傍らモリスさんについての情報を集めるとしよう。
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