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第48話 ロミーナの動揺
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モリスさんはやってきた騎士たちに男の身柄を引き渡すと、そのまま自分も王都へと戻ろうとした――が、あとから来た別の騎士からこの地へ残るようにマドリガル騎士団長からメッセージを受けていると知らされ、そのままパルザン地方へ常駐する流れに。
「そういうわけでして、しばらく御厄介になります」
「うちとしては経験豊富な君に来てもらえるのはありがたいよ」
モリスさんが忍び込んでいるという事実は父上のみ知っているようだったけど、それ以前からふたりは顔見知りのようだった。おまけに、父上の様子を見る限りだとかなり信頼を置いているような……ふたりの過去に何かあったのかもな。悪い意味じゃなくて。
それはともかく、「ありがたい」という面については同意する。
ロミーナの近衛騎士であるパウリーネさんだけでは、やはり守るとしても限界があると感じていたからな。彼女が悪いというわけじゃなくて、こちらの想定以上に事態がややこしくなっているのがいけないのだ。
とにかく、黒幕がハッキリとしないうちは大人しくしておいた方がよさそうだ。
裏を返せば、それだけ領地発展のために俺の生産魔法をさらに高めていくことができる。物事をプラスに考え、今後の糧にしていこう。
ロミーナの氷魔法特訓もいつも通りに続けられることになった――が、
「はあ、はあ、はあ……」
事件の翌日。
この日も湖での運航を終えた後、屋敷に戻って魔法特訓を始めたのだが……ロミーナの様子がおかしい。
いつもなら難なくこなせる基礎的な制御さえままならず、魔力は大きく乱れていた。
「精神的なものが原因みたいだねぇ。ここのところいろいろとあったから」
そう語ったのは師匠でもあるイルデさん……確かに、心当たりがありすぎる。リフレッシュのためのピクニックも、結局は中途半端な形になってしまったし。
ロミーナ自身は「大丈夫です。今日はちょっと調子が悪いだけで」と必死に否定をしているが、無理をしているのは鈍感な俺でもすぐに察せられた。
やはり、ここは一度リフレッシュをさせるためにも少し休みを挟んだ方がよさそうだ。
「でしたら、明日は森の方へ――」
「それについては賛成しかねますな」
突然俺たちの会話に割って入ってきたのはモリスさんだった。あまりにも自然かつ突然の乱入だったのでみんな飛びあがるくらい驚いた。
「モ、モリスさん?」
「ロミーナ様には申し訳ありませんが、あなたとアズベル様は当面の間このガナス村から出ないようにしていただきたいのです」
「うっ……」
彼がなぜそう制限するのか――理由は明確だ。
連日起きている物騒な事件。
それに俺とロミーナは深くかかわっている。
だから自分の目の届く場所にいてほしいということなのだろう。
だが、それに待ったをかけた人物が。
「警備を厳重にして、少し辺りを散歩するくらいならいいだろう――モリス」
そう言って迫るのはパウリーネさんであった。
というか……さっきの口ぶりからして、パウリーネさんとモリスさんって実は知り合いだったのか?
「そういうわけでして、しばらく御厄介になります」
「うちとしては経験豊富な君に来てもらえるのはありがたいよ」
モリスさんが忍び込んでいるという事実は父上のみ知っているようだったけど、それ以前からふたりは顔見知りのようだった。おまけに、父上の様子を見る限りだとかなり信頼を置いているような……ふたりの過去に何かあったのかもな。悪い意味じゃなくて。
それはともかく、「ありがたい」という面については同意する。
ロミーナの近衛騎士であるパウリーネさんだけでは、やはり守るとしても限界があると感じていたからな。彼女が悪いというわけじゃなくて、こちらの想定以上に事態がややこしくなっているのがいけないのだ。
とにかく、黒幕がハッキリとしないうちは大人しくしておいた方がよさそうだ。
裏を返せば、それだけ領地発展のために俺の生産魔法をさらに高めていくことができる。物事をプラスに考え、今後の糧にしていこう。
ロミーナの氷魔法特訓もいつも通りに続けられることになった――が、
「はあ、はあ、はあ……」
事件の翌日。
この日も湖での運航を終えた後、屋敷に戻って魔法特訓を始めたのだが……ロミーナの様子がおかしい。
いつもなら難なくこなせる基礎的な制御さえままならず、魔力は大きく乱れていた。
「精神的なものが原因みたいだねぇ。ここのところいろいろとあったから」
そう語ったのは師匠でもあるイルデさん……確かに、心当たりがありすぎる。リフレッシュのためのピクニックも、結局は中途半端な形になってしまったし。
ロミーナ自身は「大丈夫です。今日はちょっと調子が悪いだけで」と必死に否定をしているが、無理をしているのは鈍感な俺でもすぐに察せられた。
やはり、ここは一度リフレッシュをさせるためにも少し休みを挟んだ方がよさそうだ。
「でしたら、明日は森の方へ――」
「それについては賛成しかねますな」
突然俺たちの会話に割って入ってきたのはモリスさんだった。あまりにも自然かつ突然の乱入だったのでみんな飛びあがるくらい驚いた。
「モ、モリスさん?」
「ロミーナ様には申し訳ありませんが、あなたとアズベル様は当面の間このガナス村から出ないようにしていただきたいのです」
「うっ……」
彼がなぜそう制限するのか――理由は明確だ。
連日起きている物騒な事件。
それに俺とロミーナは深くかかわっている。
だから自分の目の届く場所にいてほしいということなのだろう。
だが、それに待ったをかけた人物が。
「警備を厳重にして、少し辺りを散歩するくらいならいいだろう――モリス」
そう言って迫るのはパウリーネさんであった。
というか……さっきの口ぶりからして、パウリーネさんとモリスさんって実は知り合いだったのか?
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