破滅する悪役女帝(推し)の婚約者に転生しました。~闇堕ちフラグをへし折るため、生産魔法を極めて平穏に生きる!~

鈴木竜一

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第47話 暗躍する者

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 マドリガル騎士団長が密かに送り込んでいたモリスさんという名前の騎士は、船を沈めようと企んでいた男を急遽用意された牢屋代わりの小屋へと連行する途中にここまでの経緯を話してくれた。

「実は似たようなケースが数日前に王都でも起きていたのです。その際は偶然にも警備のために巡回していた騎士が犯行現場に居合わせ、なんとか取り押さえることができたのです」
「そうだったんですか……でも、それからどうしてうちへ?」

 問題はそこだ。
 王都で似たような事件が起きたという点は理解したけど、なぜマドリガル騎士団長はこのパルザン地方が狙われるって予想ができたのだろう。
 それにはこの前の舞踏会が大きく関係しているようだ。

「例の舞踏会で起きた事件ですが……人為的なものであるというのはご存知ですよね?」
「え、えぇ、見張りの人たちがみんな気を失っていた現場を目の当たりにしていましたから」

 あれはどう見ても誰かが仕組んだために起きたことだ。
 となると……もしかして、

「あの夜……俺たちがモンスターの存在に気づかなかったら……」
「オルメド王都は複数の大型モンスターによる奇襲を受けて壊滅的なダメージを負い、周辺国家から防衛意識の低さを指摘され、それまで築き上げてきた信頼は失墜。そうなっていれば、私も今頃は次の職を探すために妻と子どもを連れて国を出ていたことでしょう」

 モリスさんの話は断じて冗談などではなく、現実のものとして起こり得たのだ。
 ――だが、逆に言えばそうなる未来を望んでいた連中がいたという事実にもつながる。

 だとしたら、せっかくの計画を台無しにした張本人である俺やロミーナ、そしてカルロに対する恨みは相当深いだろう。

「俺やロミーナへの復讐のため、今回の事件を仕組んだ、と?」
「少なくともマドリガル騎士団長はそう睨んでおります。――まあ、私もそちらの線を支持しておりますが」

 騎士団としてはまだまだ黒幕は動いてくると予想しているわけか。

「でも、それなら俺やロミーナにも話をしてくれたっていい気がするんですけど……」
「領主様の意向でもありましたので……まあ、こうしてバレてしまった今となってはもう遅いのですが」
「父上の?」

 俺たちを危険にさらしたくないという気持ちからなんだろうけど……俺としては、このまま黙っている方がダメな気がする。

「あなたは何も気に病まないでよいのですよ」
「えっ?」

 考え込んでいると、それを見透かしたかのようにモリスさんが話し始める。

「厄介事は大人に任せてください。あなたには天に与えられた生産魔法という素晴らしい力があります。それを領民のために生かすのが、今のあなたにもっとも相応しい仕事だと私は思いますよ」
「モリスさん……」
「とはいえ、今の発言はただの独り言ですのでスルーしていただいて結構です」

 そう告げた直後、モリスさんが呼んだ応援の騎士が駆けつけた。
 さっきの言葉……グサッと刺さったなぁ。
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