上 下
46 / 108

第46話 異変

しおりを挟む
 商人たちから高評価を得た湖を横断する運搬方法。
 翌日も多く商人たちが湖へと詰めかけていた。

「ここまでの規模になると、これだけでひとつの商売が成り立ちますね」

 ライナンさんは目を輝かせながら集まった商人たちを眺めていた。
そういう彼もまた商人。
おまけに原作【ブレイブ・クエスト】では大陸でも屈指の商才を持つ天才とされている。まだ若手時代とはいえ、そんな彼が注目するこのビジネスはきっといい方向に進むだろう。

荷物を積み込んでいるのは手伝い出来てくれているガナス村の人たちだが、ライナンさんがよそから新しい働き手を探してくるとのこと。まあ、村の人たちは主要産業でもある農業や林業で忙しいし、村の人口も増えるのでそちらの方がいいかな。

 まもなく作業が終わり、出航まであと少しという時――

「いたたたたっ!?」

 突如誰かの叫び声が湖に響き渡った。
 何事かと声のした方向へライナンさんたちと一緒に駆け寄ると、そこではひとりの屈強な男性が別の男性を取り押さえていた。

「な、何があったんですか!?」

 慌てて声をかけると、屈強な方の男性が一枚の紙を差しだした。

「この男が持っていた物です」
「えっ? こ、これは……」
「ま、魔法文字!?」

 真っ先に反応したのはロミーナだった。

「魔法文字?」
「イルデさんから聞いたことがあります。この世界には魔力を込めた文字が存在し、その言葉に応じた魔法が使用できる、と」

 そ、そんな超便利技が……いや、待てよ。確か原作ゲームでも同じような原理のアイテムがあったな。これがその現物というわけか。
 さらに屈強な男性が追加情報をもたらしてくれた。

「ロミーナ様の言う通りです。ここに書かれている魔法文字で使用できるのは炎魔法――つまり、彼はこの船を燃やそうとしていたのです」
「ふ、船を燃やす!?」

 な、なんてことだ。
 もし気づかずに船をだしていたら……ゾッとするな。
 物騒なこの男の正体も気になるところではあるが、そんな彼を捕らえたこの男性も只者じゃないような。

「あなたは一体……」
「黙っていて申し訳ありません。私の名前はモリスと言います。実はマドリガル騎士団長からの指示で監視役をしておりました」
「えっ!?」

 ということは、この人は騎士なのか!?
 でも、どうしてここを監視していたんだ……?

 まあ、実際こうして怪しい動きをしている者を捕まえたのだから、きっと予兆のようなものがあって部下を向かわせたのだろうか。
 とりあえず、捕らえた男から事情を聞きだすとするか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる

朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。 彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。

付与効果スキル職人の離島生活 ~超ブラックな職場環境から解放された俺は小さな島でドラゴン少女&もふもふ妖狐と一緒に工房を開く~

鈴木竜一
ファンタジー
傭兵を派遣する商会で十年以上武器づくりを担当するジャック。貴重な付与効果スキルを持つ彼は逃げ場のない環境で強制労働させられていたが、新しく商会の代表に就任した無能な二代目に難癖をつけられ、解雇を言い渡される。 だが、それは彼にとってまさに天使の囁きに等しかった。 実はジャックには前世の記憶がよみがえっており、自分の持つ付与効果スキルを存分に発揮してアイテムづくりに没頭しつつ、夢の異世界のんびり生活を叶えようとしていたからだ。 思わぬ形で念願叶い、自由の身となったジャックはひょんなことから小さな離島へと移住し、そこで工房を開くことに。ドラゴン少女やもふもふ妖狐や病弱令嬢やらと出会いつつ、夢だった平穏な物づくりライフを満喫していくのであった。 一方、ジャックの去った商会は経営が大きく傾き、その原因がジャックの持つ優秀な付与効果スキルにあると気づくのだった。 俺がいなくなったら商会の経営が傾いた? ……そう(無関心)

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

処理中です...