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第44話 夜のひと幕
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湖でのテスト運航を何度か試し、耐久力など安全性に問題がないという結論に至る。
早速この話を父上に持っていって手詰まり状態となっているバーメイとの交易が再開できると伝えた。
「ふむ……」
書斎にあるゆったりとした大きめの椅子に腰を下ろした父上は、俺とロミーナからの報告を受けてしばし考え込んだ後、
「分かった。では明日からそのように手配しよう」
そう決断を下す。
「ありがとうございます、父上」
「礼を言うのはこちらの方だ。まさか本当にやってのけるとはな」
「これも生産魔法のおかげです」
俺がそう言うと、父上は首を横へ振った。
「それだけではない。この状況をなんとかしようと懸命に動いてくれたおまえの頑張りがあったからこそだ。私はおまえを誇りに思うよ」
「父上……」
なんか……変わったな。
昔は地位とか名誉とかばかり必死に追いかけていた。弱小極貧貴族から脱却したいという考えが先行しており、領民のことを考えてなどいない感じだったのに。ロミーナがうちに来てから、「公爵家とのつながりができた」って状況になり、心に余裕ができたからなのかもしれないな。
いずれにせよ、これもいい方向に進んでいる。
原作【ブレイブ・クエスト】では評判悪かったからなぁ。たぶん、今回の土砂崩れにおける交易路封鎖が解決できず、お先真っ暗って状況になったのも大きかったみたいだ。
その懸念が消え去り、明日からはこれまで通りバーメイの商人たちがやってくる。
おまけに、彼らはガナス村を通ることになるから、ライナンの商会をはじめ、村のさまざまなお店に人が集まることにもなる。これって、経済的な効果も期待できるんじゃないか?
まあ、さすがにそこまでうまくことが運ぶとは思っていないけど、ちょっとくらいは期待を持っていいかな。
父上の書斎をあとにすると、俺とロミーナは廊下でハイタッチを交わす。
「よかったね、アズベル」
「ああ、とりあえずホッとしているよ。……でも、本当に大変なのはここからだ」
テストではうまくいっても、本番で失敗をしては意味がない。
明日の初運航はこのパルザン地方の未来を占う大事な一日になるだろう。
「うぅ……緊張してきたな」
今になって臆病風に吹かれ始めた――と、その時、右手が急に温かくなる。ロミーナが手を握ってくれたのだ。
「ロ、ロミーナ!?」
「大丈夫だよ、アズベルなら」
そう言って、彼女はニコリと微笑んでくれた。
氷魔法使いとは思えないくらい温かなロミーナの手……なんだか不安まで一緒に解かされていく感覚だ。
「ありがとう、ロミーナ。おかげで勇気が出たよ」
「ならよかったわ」
俺たちは笑い合って、自室へと歩いていく。
明日……頑張らないとな。
早速この話を父上に持っていって手詰まり状態となっているバーメイとの交易が再開できると伝えた。
「ふむ……」
書斎にあるゆったりとした大きめの椅子に腰を下ろした父上は、俺とロミーナからの報告を受けてしばし考え込んだ後、
「分かった。では明日からそのように手配しよう」
そう決断を下す。
「ありがとうございます、父上」
「礼を言うのはこちらの方だ。まさか本当にやってのけるとはな」
「これも生産魔法のおかげです」
俺がそう言うと、父上は首を横へ振った。
「それだけではない。この状況をなんとかしようと懸命に動いてくれたおまえの頑張りがあったからこそだ。私はおまえを誇りに思うよ」
「父上……」
なんか……変わったな。
昔は地位とか名誉とかばかり必死に追いかけていた。弱小極貧貴族から脱却したいという考えが先行しており、領民のことを考えてなどいない感じだったのに。ロミーナがうちに来てから、「公爵家とのつながりができた」って状況になり、心に余裕ができたからなのかもしれないな。
いずれにせよ、これもいい方向に進んでいる。
原作【ブレイブ・クエスト】では評判悪かったからなぁ。たぶん、今回の土砂崩れにおける交易路封鎖が解決できず、お先真っ暗って状況になったのも大きかったみたいだ。
その懸念が消え去り、明日からはこれまで通りバーメイの商人たちがやってくる。
おまけに、彼らはガナス村を通ることになるから、ライナンの商会をはじめ、村のさまざまなお店に人が集まることにもなる。これって、経済的な効果も期待できるんじゃないか?
まあ、さすがにそこまでうまくことが運ぶとは思っていないけど、ちょっとくらいは期待を持っていいかな。
父上の書斎をあとにすると、俺とロミーナは廊下でハイタッチを交わす。
「よかったね、アズベル」
「ああ、とりあえずホッとしているよ。……でも、本当に大変なのはここからだ」
テストではうまくいっても、本番で失敗をしては意味がない。
明日の初運航はこのパルザン地方の未来を占う大事な一日になるだろう。
「うぅ……緊張してきたな」
今になって臆病風に吹かれ始めた――と、その時、右手が急に温かくなる。ロミーナが手を握ってくれたのだ。
「ロ、ロミーナ!?」
「大丈夫だよ、アズベルなら」
そう言って、彼女はニコリと微笑んでくれた。
氷魔法使いとは思えないくらい温かなロミーナの手……なんだか不安まで一緒に解かされていく感覚だ。
「ありがとう、ロミーナ。おかげで勇気が出たよ」
「ならよかったわ」
俺たちは笑い合って、自室へと歩いていく。
明日……頑張らないとな。
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