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第36話 勲章
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新たにカルロを加えて行われた勲章の授与式。
急な事態だったけど、事情を説明してカルロにも贈ってもらえることになった。どうやら国王陛下にはカルロの存在自体が報告されていなかったようだけど……まあ、舞踏会での対応を見ていたら、それもあり得るのかなと思ってしまう。
原作である【ブレイブ・クエスト】では、カルロはこの授与式に参加していない。直接的な描写はないが、町を襲ったドラゴンを仲間と撃退した際にも勲章を贈られており、その時「初めてもらった」というセリフがあったのを覚えている。
つまり、原作ではカルロの発言に誰も耳を傾けず、それが原因でオルメドは壊滅的なダメージを負ってしまうのだ。
それを踏まえると、主人公カルロの存在が今後の破滅フラグに大きく関与しているとも考えられる。
大きな山場をひとつ乗り越えたけど、まだまだ安堵できる状況じゃない。
これからも気を引き締めていかないと。
ちなみに、他の嬉しい話としてはマドリガル騎士団長がカルロの剣の才能に気づいたというのもある。原作では騎士団への入団を夢見ていたが、生い立ちを理由に試験さえ受けさせてもらえず、落胆するシーンがある。
彼のように正義感の強い若者が騎士団に入り、マドリガル騎士団長の目に留まったとなったら、期待をせずにはいられない。
今後の成長が実に楽しみだ。
授与式が終わると、俺たちはパルザン地方へ戻るための準備に入った。
パウリーネさんたちが忙しなく動く中、俺とロミーナはカルロと別れの挨拶を交わす。
「いろいろとありがとうございました」
「俺たちは何もしていないさ」
「そうよ。あなたが教えてくれたから、王都を守ることができたわけだし」
「と、とんでもないですよ」
最初から最後まで恐縮しっぱなしだったカルロ。
そんな彼は今後騎士団の寮に入り、訓練生として鍛錬に挑むこととなる。貧民街出身の者が騎士団へ入るというのは前代未聞の話らしいが、変革を求めるマドリガル騎士団長ら一部の幹部からは歓迎されているという。
ただ、内部でいじめみたいなのが起きないかどうか……俺としてはそこが心配だった。
これについてはマドリガル騎士団長が配慮したようで、信頼できる部下の隊に編制すると後でパウリーネさんがこっそり教えてくれた。
……しかし、なんだかいろいろと疑問が残る結果となったな。
あの大型モンスター群だって、誰かが手引きした可能性もある。気を失っていた騎士たちから話を聞いている最中とのことだが、誰からも有力な情報を得られていないというし、まだまだ油断できない状況は続きそうだ。
そちらはプロの方々にお任せして、パルザン地方へ帰ったら早速次へ向けて動きだそう。
「なんだか楽しそうね、アズベル」
「えっ? そうかな? ……そうかもしれないな」
馬車に乗り込む際、ロミーナからそう言われて思わず笑ってしまう。
彼女に嘘は通用しそうにない――というより、俺が顔に出しすぎているのかもな。
急な事態だったけど、事情を説明してカルロにも贈ってもらえることになった。どうやら国王陛下にはカルロの存在自体が報告されていなかったようだけど……まあ、舞踏会での対応を見ていたら、それもあり得るのかなと思ってしまう。
原作である【ブレイブ・クエスト】では、カルロはこの授与式に参加していない。直接的な描写はないが、町を襲ったドラゴンを仲間と撃退した際にも勲章を贈られており、その時「初めてもらった」というセリフがあったのを覚えている。
つまり、原作ではカルロの発言に誰も耳を傾けず、それが原因でオルメドは壊滅的なダメージを負ってしまうのだ。
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大きな山場をひとつ乗り越えたけど、まだまだ安堵できる状況じゃない。
これからも気を引き締めていかないと。
ちなみに、他の嬉しい話としてはマドリガル騎士団長がカルロの剣の才能に気づいたというのもある。原作では騎士団への入団を夢見ていたが、生い立ちを理由に試験さえ受けさせてもらえず、落胆するシーンがある。
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今後の成長が実に楽しみだ。
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「いろいろとありがとうございました」
「俺たちは何もしていないさ」
「そうよ。あなたが教えてくれたから、王都を守ることができたわけだし」
「と、とんでもないですよ」
最初から最後まで恐縮しっぱなしだったカルロ。
そんな彼は今後騎士団の寮に入り、訓練生として鍛錬に挑むこととなる。貧民街出身の者が騎士団へ入るというのは前代未聞の話らしいが、変革を求めるマドリガル騎士団長ら一部の幹部からは歓迎されているという。
ただ、内部でいじめみたいなのが起きないかどうか……俺としてはそこが心配だった。
これについてはマドリガル騎士団長が配慮したようで、信頼できる部下の隊に編制すると後でパウリーネさんがこっそり教えてくれた。
……しかし、なんだかいろいろと疑問が残る結果となったな。
あの大型モンスター群だって、誰かが手引きした可能性もある。気を失っていた騎士たちから話を聞いている最中とのことだが、誰からも有力な情報を得られていないというし、まだまだ油断できない状況は続きそうだ。
そちらはプロの方々にお任せして、パルザン地方へ帰ったら早速次へ向けて動きだそう。
「なんだか楽しそうね、アズベル」
「えっ? そうかな? ……そうかもしれないな」
馬車に乗り込む際、ロミーナからそう言われて思わず笑ってしまう。
彼女に嘘は通用しそうにない――というより、俺が顔に出しすぎているのかもな。
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