36 / 108
第36話 勲章
しおりを挟む
新たにカルロを加えて行われた勲章の授与式。
急な事態だったけど、事情を説明してカルロにも贈ってもらえることになった。どうやら国王陛下にはカルロの存在自体が報告されていなかったようだけど……まあ、舞踏会での対応を見ていたら、それもあり得るのかなと思ってしまう。
原作である【ブレイブ・クエスト】では、カルロはこの授与式に参加していない。直接的な描写はないが、町を襲ったドラゴンを仲間と撃退した際にも勲章を贈られており、その時「初めてもらった」というセリフがあったのを覚えている。
つまり、原作ではカルロの発言に誰も耳を傾けず、それが原因でオルメドは壊滅的なダメージを負ってしまうのだ。
それを踏まえると、主人公カルロの存在が今後の破滅フラグに大きく関与しているとも考えられる。
大きな山場をひとつ乗り越えたけど、まだまだ安堵できる状況じゃない。
これからも気を引き締めていかないと。
ちなみに、他の嬉しい話としてはマドリガル騎士団長がカルロの剣の才能に気づいたというのもある。原作では騎士団への入団を夢見ていたが、生い立ちを理由に試験さえ受けさせてもらえず、落胆するシーンがある。
彼のように正義感の強い若者が騎士団に入り、マドリガル騎士団長の目に留まったとなったら、期待をせずにはいられない。
今後の成長が実に楽しみだ。
授与式が終わると、俺たちはパルザン地方へ戻るための準備に入った。
パウリーネさんたちが忙しなく動く中、俺とロミーナはカルロと別れの挨拶を交わす。
「いろいろとありがとうございました」
「俺たちは何もしていないさ」
「そうよ。あなたが教えてくれたから、王都を守ることができたわけだし」
「と、とんでもないですよ」
最初から最後まで恐縮しっぱなしだったカルロ。
そんな彼は今後騎士団の寮に入り、訓練生として鍛錬に挑むこととなる。貧民街出身の者が騎士団へ入るというのは前代未聞の話らしいが、変革を求めるマドリガル騎士団長ら一部の幹部からは歓迎されているという。
ただ、内部でいじめみたいなのが起きないかどうか……俺としてはそこが心配だった。
これについてはマドリガル騎士団長が配慮したようで、信頼できる部下の隊に編制すると後でパウリーネさんがこっそり教えてくれた。
……しかし、なんだかいろいろと疑問が残る結果となったな。
あの大型モンスター群だって、誰かが手引きした可能性もある。気を失っていた騎士たちから話を聞いている最中とのことだが、誰からも有力な情報を得られていないというし、まだまだ油断できない状況は続きそうだ。
そちらはプロの方々にお任せして、パルザン地方へ帰ったら早速次へ向けて動きだそう。
「なんだか楽しそうね、アズベル」
「えっ? そうかな? ……そうかもしれないな」
馬車に乗り込む際、ロミーナからそう言われて思わず笑ってしまう。
彼女に嘘は通用しそうにない――というより、俺が顔に出しすぎているのかもな。
急な事態だったけど、事情を説明してカルロにも贈ってもらえることになった。どうやら国王陛下にはカルロの存在自体が報告されていなかったようだけど……まあ、舞踏会での対応を見ていたら、それもあり得るのかなと思ってしまう。
原作である【ブレイブ・クエスト】では、カルロはこの授与式に参加していない。直接的な描写はないが、町を襲ったドラゴンを仲間と撃退した際にも勲章を贈られており、その時「初めてもらった」というセリフがあったのを覚えている。
つまり、原作ではカルロの発言に誰も耳を傾けず、それが原因でオルメドは壊滅的なダメージを負ってしまうのだ。
それを踏まえると、主人公カルロの存在が今後の破滅フラグに大きく関与しているとも考えられる。
大きな山場をひとつ乗り越えたけど、まだまだ安堵できる状況じゃない。
これからも気を引き締めていかないと。
ちなみに、他の嬉しい話としてはマドリガル騎士団長がカルロの剣の才能に気づいたというのもある。原作では騎士団への入団を夢見ていたが、生い立ちを理由に試験さえ受けさせてもらえず、落胆するシーンがある。
彼のように正義感の強い若者が騎士団に入り、マドリガル騎士団長の目に留まったとなったら、期待をせずにはいられない。
今後の成長が実に楽しみだ。
授与式が終わると、俺たちはパルザン地方へ戻るための準備に入った。
パウリーネさんたちが忙しなく動く中、俺とロミーナはカルロと別れの挨拶を交わす。
「いろいろとありがとうございました」
「俺たちは何もしていないさ」
「そうよ。あなたが教えてくれたから、王都を守ることができたわけだし」
「と、とんでもないですよ」
最初から最後まで恐縮しっぱなしだったカルロ。
そんな彼は今後騎士団の寮に入り、訓練生として鍛錬に挑むこととなる。貧民街出身の者が騎士団へ入るというのは前代未聞の話らしいが、変革を求めるマドリガル騎士団長ら一部の幹部からは歓迎されているという。
ただ、内部でいじめみたいなのが起きないかどうか……俺としてはそこが心配だった。
これについてはマドリガル騎士団長が配慮したようで、信頼できる部下の隊に編制すると後でパウリーネさんがこっそり教えてくれた。
……しかし、なんだかいろいろと疑問が残る結果となったな。
あの大型モンスター群だって、誰かが手引きした可能性もある。気を失っていた騎士たちから話を聞いている最中とのことだが、誰からも有力な情報を得られていないというし、まだまだ油断できない状況は続きそうだ。
そちらはプロの方々にお任せして、パルザン地方へ帰ったら早速次へ向けて動きだそう。
「なんだか楽しそうね、アズベル」
「えっ? そうかな? ……そうかもしれないな」
馬車に乗り込む際、ロミーナからそう言われて思わず笑ってしまう。
彼女に嘘は通用しそうにない――というより、俺が顔に出しすぎているのかもな。
41
お気に入りに追加
1,158
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖樹の村で幸せなスローライフを! ~処刑宣告された少年は辺境の地で村長になる~
鈴木竜一
ファンタジー
幼い頃に両親を亡くし、貧しいながらも懸命に生きていた少年ルディ。だが、ある日彼は育ての親の神父やシスターたちを殺害したという無実の罪を着せられ、処刑宣告を受けてしまう。絶望する中、教会を支援してくれていた貴族の手助けを得ることでなんとか牢獄から脱出することができた。無実が証明されるまで隠れているよう、その貴族は住まいも用意してくれたのだが――実はそれ自体が事件の黒幕である貴族の仕組んだ罠であり、逃亡中に彼が雇った者たちによってルディは無実の罪を着せられたまま殺されそうになる。かろうじて生き延びたルディが行き着いたのは小さな農村。そこで、死ぬ間際に神父から渡された「ある物」の存在を思い出し、取りだしてみると、それは小さな種だった。何の変哲もない種だが……実は強大な魔力を秘めた聖樹の種であった。ひょんなことからその聖樹の「育成者」に選ばれたことで、ルディの人生は大きく変わり始めていく。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる