31 / 108
第31話 疑惑
しおりを挟む
「不自然……と、いうと?」
「あまりにも突然すぎる。それでいて、西門周辺を守っていた兵士たちが何者かによって倒された……いや、証言を聞く限り、倒されたというよりは魔法で意識を失ってしまったという方が正しいですな」
「じゃ、じゃあ、犯人は魔法使い?」
「あくまでも実行犯は、という注釈はつきますが」
そいつが誰かに雇われ、支持されて行った可能性が高いとマドリガル騎士団長は睨んでいるらしい。
「しかし、鍛えられた騎士を短時間のうちにあれだけの数を戦闘不能状態にまで追い込める魔法使いは限られます」
「で、ですよね! それなら犯人の確保は時間の問題に――」
「いえ、そう簡単にはいかんでしょうな。それだけの実力者となると、そう簡単に尻尾を見せないでしょうから」
「た、確かに……」
マドリガル騎士団長は非常に優秀な人のようだ。
彼に任せておけば、近いうちに真相へとたどり着けるだろう。
……まあ、俺は立場上、これ以上突っ込んではいけないので、どのみち調査自体は騎士団へお任せすることにはなる。でも、少なくともカルロの件は伝えられたし、マドリガル騎士団長も前向きに取り組んでくれそうなのでひと安心だ。
忙しい中で長居をしてはいけないと思い、とりあえず俺とパウリーネさんは執務室を出て部屋へ戻ることにした。
「ふあぁ~……」
緊張の糸が切れたのか、不意にあくびが。
「お疲れさまでした、アズベル様」
そんな俺の様子を見て、パウリーネさんがねぎらいの言葉をかけてくれる。
「ちょっと緊張したけど、伝えるべき内容は伝えられたからよかったよ」
「ご立派でしたよ。いくつもの戦場を駆けてきたマドリガル騎士団長は、立っているだけなのにとてつもない威圧感がありますからね。新兵の中には睨まれただけで涙ぐんでしまう者もいるくらいです」
それは騎士のメンタルとしてどうなのかと不安になってしまうが、正直分からなくもない。
めちゃくちゃおっかなかったからな、マドリガル騎士団長。
パウリーネさんはロミーナの部屋へ寄る前にカリング様へ報告をしに行くという。なので、俺だけ先に部屋へと戻ろうとしたのだが、
「あれ?」
ロミーナの部屋近くに誰かが立っている。
もう深夜と言えるくらい遅い時間なのに誰だろう。
城内だから不審者ってことはないはずだけど。
徐々に近づいていくと、立っていたのが女性だと判明する。
その女性は俺を視界に捉えるとジッと見つめてきた。
な、何なんだ?
恐る恐る近づいていくと、
「……あなたがロミーナの夫となるウィドマーク家の子ね」
そう言いながら恐ろしく冷たい視線を向けてくる謎の女性。
――いや、待てよ。
どことなくロミーナと似ている顔立ちにさっきの口ぶり……まさか、この人はロミーナの母親なのか?
「あまりにも突然すぎる。それでいて、西門周辺を守っていた兵士たちが何者かによって倒された……いや、証言を聞く限り、倒されたというよりは魔法で意識を失ってしまったという方が正しいですな」
「じゃ、じゃあ、犯人は魔法使い?」
「あくまでも実行犯は、という注釈はつきますが」
そいつが誰かに雇われ、支持されて行った可能性が高いとマドリガル騎士団長は睨んでいるらしい。
「しかし、鍛えられた騎士を短時間のうちにあれだけの数を戦闘不能状態にまで追い込める魔法使いは限られます」
「で、ですよね! それなら犯人の確保は時間の問題に――」
「いえ、そう簡単にはいかんでしょうな。それだけの実力者となると、そう簡単に尻尾を見せないでしょうから」
「た、確かに……」
マドリガル騎士団長は非常に優秀な人のようだ。
彼に任せておけば、近いうちに真相へとたどり着けるだろう。
……まあ、俺は立場上、これ以上突っ込んではいけないので、どのみち調査自体は騎士団へお任せすることにはなる。でも、少なくともカルロの件は伝えられたし、マドリガル騎士団長も前向きに取り組んでくれそうなのでひと安心だ。
忙しい中で長居をしてはいけないと思い、とりあえず俺とパウリーネさんは執務室を出て部屋へ戻ることにした。
「ふあぁ~……」
緊張の糸が切れたのか、不意にあくびが。
「お疲れさまでした、アズベル様」
そんな俺の様子を見て、パウリーネさんがねぎらいの言葉をかけてくれる。
「ちょっと緊張したけど、伝えるべき内容は伝えられたからよかったよ」
「ご立派でしたよ。いくつもの戦場を駆けてきたマドリガル騎士団長は、立っているだけなのにとてつもない威圧感がありますからね。新兵の中には睨まれただけで涙ぐんでしまう者もいるくらいです」
それは騎士のメンタルとしてどうなのかと不安になってしまうが、正直分からなくもない。
めちゃくちゃおっかなかったからな、マドリガル騎士団長。
パウリーネさんはロミーナの部屋へ寄る前にカリング様へ報告をしに行くという。なので、俺だけ先に部屋へと戻ろうとしたのだが、
「あれ?」
ロミーナの部屋近くに誰かが立っている。
もう深夜と言えるくらい遅い時間なのに誰だろう。
城内だから不審者ってことはないはずだけど。
徐々に近づいていくと、立っていたのが女性だと判明する。
その女性は俺を視界に捉えるとジッと見つめてきた。
な、何なんだ?
恐る恐る近づいていくと、
「……あなたがロミーナの夫となるウィドマーク家の子ね」
そう言いながら恐ろしく冷たい視線を向けてくる謎の女性。
――いや、待てよ。
どことなくロミーナと似ている顔立ちにさっきの口ぶり……まさか、この人はロミーナの母親なのか?
42
お気に入りに追加
1,164
あなたにおすすめの小説
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
田舎暮らしの魔草薬師
鈴木竜一
ファンタジー
治癒魔法使いたちが集まり、怪我や病に苦しむ人たちを助けるために創設されたレイナード聖院で働くハリスは拝金主義を掲げる新院長の方針に逆らってクビを宣告される。
しかし、パワハラにうんざりしていたハリスは落ち込むことなく、これをいいきっかけと考えて治癒魔法と魔草薬を広めるべく独立して診療所を開業。
一方、ハリスを信頼する各分野の超一流たちはその理不尽さとあからさまな金儲け運用に激怒し、独立したハリスをサポートすべく、彼が移り住んだ辺境領地へと集結するのだった。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる