破滅する悪役女帝(推し)の婚約者に転生しました。~闇堕ちフラグをへし折るため、生産魔法を極めて平穏に生きる!~

鈴木竜一

文字の大きさ
上 下
30 / 108

第30話 マドリガル騎士団長

しおりを挟む
 主人公カルロの不遇改善のため、勲章を授与してもらいたいとマドリガル騎士団長のもとへ直談判に訪れた俺――が、想像以上にこの騎士団長殿は怖かった。
 
騎士団長の執務室を訪れて軽く挨拶をするのだが、その際に送られた鋭い眼光に射抜かれて俺は一瞬息が止まる。スキンヘッドという髪型もまた迫力を増す要因のひとつになっていた。
それにしても……なんて視線だ。
さすがは歴戦の猛者。
漂う風格が桁違い。
逆らってはダメだと本能がビシビシと伝えていた。

「何か?」

ちょうど部下たちのあげた大型モンスター襲撃事件の報告書に目を通している最中だったらしく、最初はそれを止められて不機嫌そうな表情を見せた。しかし、来客が顔を知るパウリーネさんであることと、一応貴族である俺だと分かり、態度を改める。
……それでも敵意剥きだしって感じがして怖いんだよなぁ。

 ――って、こんなところでめげていちゃダメだ。
 俺は気を取り直し、今回の事件の情報提供者がカルロという少年であると話す。

「情報提供者は貧民街にいる子どもですと?」

 マドリガル騎士団長の眉間がピクッと動く。
 やっぱり、貧民街というワードが引っ掛かるようだ。

「あ、あの、確かに彼は貧民街で暮らしていますが、とてもいい子なんです!」

 俺の必死の訴えに対し、マドリガル騎士団長は、

「でしょうな。リスクを冒してまで城内に忍び込み、自分だけが知り得た情報をなんとか伝えようとしていた……門番たちに知らせたところで、軽くあしらわれるのが関の山ですからね。勇敢な判断だったと思いますよ」
「だから――へっ?」

 予想もしなかった答えに、思わず間の抜けた声が漏れでる。
 な、なんだ?
 他の騎士たちとは反応が違うぞ?
 ダンスホール前で警備していた者たちの反応からして、貧民街の出身というだけで問答無用って感じがしたけど……どうやら、マドリガル騎士団長は違うようだ。

「その少年の名前はカルロで間違いないですかな?」
「は、はい」
「では、明日にも部下を向かわせて城へと招きましょう」
「い、いいんですか!?」

 あまりにもスムーズに話が進むものだから思わず尋ねてしまった。もっとこう、いろいろともめると想定していたのに。

「正しい行いをした者には相応の報酬があるものです。それより、本当に連れてきた者があなたに情報を与えたカルロという少年かどうか確かめていただきたいのですが」
「よ、喜んでします!」

 よかった。
 これでカルロの頑張りが報われる。

「ありがとうございます、マドリガル騎士団長」
「お礼を言うのはむしろこちらですよ。あなたとロミーナ様がいなければ、今頃この国はどうなっていたことか……考えたくもありませんね」
 
 苦笑いを浮かべつつ、マドリガル騎士団長はさらに続ける。

「ただ、ひとつ気がかりなことがあります」
「な、なんでしょうか」
「あのモンスターの大群……どう考えても不自然なのですよ」

 それについては同意だ。
 今まで何もなかったのに、なぜ急にあれだけの大型モンスターが集結したのだろうか。
 どうやら、マドリガル騎士団長は今回の事件発生についてかなり不信感を抱いているようだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...