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第27話 ロミーナの実力
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「ロ、ロミーナ!? どうしてここに!?」
「心配になって戻ってきたの!」
「し、しかし――」
「安心して! ちょうど西門を見回りに来た警備兵に事情を説明して援軍を依頼したから!」
どうやらいいタイミングだったようだけど‥…なら、あとは応援が到着するまでなんとか持ちこたえるだけだ。
「弾数は……あと二発か」
正直、どうしようかと悩んでいたから早めの援軍合流は助かる。残りの弾を全部突っ込んで足止めに徹しよう。
――と、思っていたら、
「アズベル、ここは私に任せて」
そう言って、ロミーナが一歩前に出た。
「っ! き、危険だぞ、ロミーナ!」
「大丈夫。ちょっとだけ……魔法を試してみたいの」
「魔法を……?」
それはつまり――あの氷魔法か。
ウィドマーク家で初めて見た時はまったく制御できず、俺は危うく氷漬けとなるところだったが、あれから懸命にイルデさんと鍛錬を重ね、最近ではかなりコントロールできるようになっている。
だが、それはあくまでも鍛錬での話。
実戦でどれほどの効果が発揮できるかは未知数であった――だからこそ、彼女としてはこの場で確かめたいのだろう。
それにしても……凄い度胸だな。
ロミーナはまだ十歳の少女だ。あのモンスターたちを目の当たりにすれば、大人でさえ足がすくんで動けなくなってしまってもおかしくはないというのに、臆するどころか勇ましく立ち向かおうとしている。
それも、ただのモンスターではなく、大型で獰猛なヤツらばかりだ。
本音を言えば……俺もちょっと怖い。
けど、ロミーナは違う。
その証拠に、彼女が魔力を高めていくと少しずつ周りの気温が下がっていくのが分かった。
とても落ち着いている。
自分よりもずっと大きなモンスターたちを相手にしているというのに、鍛錬の時と変わらず冷静であったのだ。
そして――ついに準備が整った。
「はああああああああっ!」
モンスターたちへ向かって、ロミーナは氷魔法を放つ。それは数え切れないほどの氷の矢だった。
「があっ!?」
「ぐがっ!?」
「ぶあっ!?」
飛び交う氷の矢に襲われたモンスターたちは後退していく。俺の魔銃で生みだした炎魔法と異なり、ロミーナの氷魔法は攻撃範囲が遥かに広い。なので、俺の時のように飛び越えての反撃は不可能であり、まさに防戦一方。ついにはその場に倒れ込むモンスターも出始めた。
「す、凄い……」
かつては自分の氷魔法で誰かを傷つけてしまうのではないかと心配していたが、今はそのような不安を一切感じさせない。
まさかここまでとは……ひょっとして――
「援軍を待つ必要はなさそうだねぇ」
「うわっ!?」
いつの間にかイルデさんが俺のすぐ隣に立っていた。
まったく気配を感じなかったぞ……相変わらず神出鬼没だなぁ。
「ど、どうしてここに?」
「料理を楽しんでいたら、妙な魔力を探知したんで見に来たんだよ。それより、鍛錬の成果が出ているようで何よりだ」
弟子の成長を目にし、イルデさんは満足そう――に見えたのは一瞬で、急に表情が暗くなった。
ど、どうしたんだろう。
俺にはとてもそんな表情になる要素なんて見当たらないんだけど。
「心配になって戻ってきたの!」
「し、しかし――」
「安心して! ちょうど西門を見回りに来た警備兵に事情を説明して援軍を依頼したから!」
どうやらいいタイミングだったようだけど‥…なら、あとは応援が到着するまでなんとか持ちこたえるだけだ。
「弾数は……あと二発か」
正直、どうしようかと悩んでいたから早めの援軍合流は助かる。残りの弾を全部突っ込んで足止めに徹しよう。
――と、思っていたら、
「アズベル、ここは私に任せて」
そう言って、ロミーナが一歩前に出た。
「っ! き、危険だぞ、ロミーナ!」
「大丈夫。ちょっとだけ……魔法を試してみたいの」
「魔法を……?」
それはつまり――あの氷魔法か。
ウィドマーク家で初めて見た時はまったく制御できず、俺は危うく氷漬けとなるところだったが、あれから懸命にイルデさんと鍛錬を重ね、最近ではかなりコントロールできるようになっている。
だが、それはあくまでも鍛錬での話。
実戦でどれほどの効果が発揮できるかは未知数であった――だからこそ、彼女としてはこの場で確かめたいのだろう。
それにしても……凄い度胸だな。
ロミーナはまだ十歳の少女だ。あのモンスターたちを目の当たりにすれば、大人でさえ足がすくんで動けなくなってしまってもおかしくはないというのに、臆するどころか勇ましく立ち向かおうとしている。
それも、ただのモンスターではなく、大型で獰猛なヤツらばかりだ。
本音を言えば……俺もちょっと怖い。
けど、ロミーナは違う。
その証拠に、彼女が魔力を高めていくと少しずつ周りの気温が下がっていくのが分かった。
とても落ち着いている。
自分よりもずっと大きなモンスターたちを相手にしているというのに、鍛錬の時と変わらず冷静であったのだ。
そして――ついに準備が整った。
「はああああああああっ!」
モンスターたちへ向かって、ロミーナは氷魔法を放つ。それは数え切れないほどの氷の矢だった。
「があっ!?」
「ぐがっ!?」
「ぶあっ!?」
飛び交う氷の矢に襲われたモンスターたちは後退していく。俺の魔銃で生みだした炎魔法と異なり、ロミーナの氷魔法は攻撃範囲が遥かに広い。なので、俺の時のように飛び越えての反撃は不可能であり、まさに防戦一方。ついにはその場に倒れ込むモンスターも出始めた。
「す、凄い……」
かつては自分の氷魔法で誰かを傷つけてしまうのではないかと心配していたが、今はそのような不安を一切感じさせない。
まさかここまでとは……ひょっとして――
「援軍を待つ必要はなさそうだねぇ」
「うわっ!?」
いつの間にかイルデさんが俺のすぐ隣に立っていた。
まったく気配を感じなかったぞ……相変わらず神出鬼没だなぁ。
「ど、どうしてここに?」
「料理を楽しんでいたら、妙な魔力を探知したんで見に来たんだよ。それより、鍛錬の成果が出ているようで何よりだ」
弟子の成長を目にし、イルデさんは満足そう――に見えたのは一瞬で、急に表情が暗くなった。
ど、どうしたんだろう。
俺にはとてもそんな表情になる要素なんて見当たらないんだけど。
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