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第18話 平穏な日常
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舞踏会の日にちが迫ってくると、パウリーネさんのダンス特訓も激しさが増していく。
「さあ、そこでもう一度さっきのステップを!」
「は、はい! ――うわっ!?」
思わず足がもつれて転倒してしまった。
さすがにもう四時間くらいぶっ続けでやっていたからな。十歳という肉体にこれはかなりキツいのだが……弱音を吐いている場合じゃない。せっかく大きな舞台に呼ばれたのだから、公爵家令嬢であるロミーナに恥をかかせないようにしなくては。
「アズベル、今度は私と一緒に踊ってみましょう?」
「う、うん。よろしく」
「では、おふたりで先ほどのステップから振り返りましょう」
見かねたロミーナが一緒になって特訓に付き合ってくれるのはとても嬉しかった。
最近はイルデさんとの特訓もスムーズにこなせており、今日の鍛錬では「次の段階へ移る時期に入ったのかもな」とお褒めの言葉をもらっていた。
ただ、まだ完全に氷魔法をコントロールできているわけではないので、今後はさらに厳しめの特訓に入るだろうとも忠告していたな。
これにはロミーナもビビってしまうかな――と、心配していたが、それは杞憂だった。彼女は少しずつではあるが着実にコントロールできるようになってきてとても喜んでおり、さらに細かな制御が可能となるなら厳しい鍛錬にも耐えてみせると昼食の際に鼻息荒く語っていたのだ。
そんな婚約者の頑張りを目の当たりにしたら、頑張らないわけにはいかない。
「ほら、ここはこんな感じで足を運んで」
「えぇっと、こうかな――わっ!?」
「きゃっ!?」
ロミーナのリードに合わせようとした途端、またしても足がもつれて転倒してしまう。おまけに今回は体勢的に彼女を押し倒してしまうような格好になってしまった。
「ご、ごめんね、ロミーナ」
「わ、私の方こそ……」
すぐ目の前にロミーナの可愛らしい顔が。
美しい銀色の髪に吸い込まれそうな翡翠色の瞳がジッと俺を見つめる。
「うぅん! よろしいですか?」
「「っ!?」」
パウリーネさんのわざとらしい咳払いでハッと我に返った俺たちは慌てて飛び起きる。
「婚約者同士であるおふたりの仲がよろしいのは私としても大変喜ばしいのですが、今はダンスの練習中です。こちらに集中していただきませんと」
「ご、ごめんなさい」
「き、気をつけるわ」
お互いに声を震わせながら猛省。
仕切り直して練習を再開することにした。
それからも特訓の日々は続く。
もちろん、舞踏会へ出るにはドレスなどいつもとは違った服を手に入れなければならず、そちらの伝手もなかったウィドマーク家だが、その辺はイルデさんの知り合いを頼ることでなんとか乗り越えられそうだ。
「こう見えて長く生きている魔女だからね。いろんなところに顔が利くのさ」
ケラケラと笑いながら飲酒をしつつそう答えたイルデさん。
実はこの人が一番謎多き人なのかもしれない。
そして――ついに舞踏会当日を迎えた。
「さあ、そこでもう一度さっきのステップを!」
「は、はい! ――うわっ!?」
思わず足がもつれて転倒してしまった。
さすがにもう四時間くらいぶっ続けでやっていたからな。十歳という肉体にこれはかなりキツいのだが……弱音を吐いている場合じゃない。せっかく大きな舞台に呼ばれたのだから、公爵家令嬢であるロミーナに恥をかかせないようにしなくては。
「アズベル、今度は私と一緒に踊ってみましょう?」
「う、うん。よろしく」
「では、おふたりで先ほどのステップから振り返りましょう」
見かねたロミーナが一緒になって特訓に付き合ってくれるのはとても嬉しかった。
最近はイルデさんとの特訓もスムーズにこなせており、今日の鍛錬では「次の段階へ移る時期に入ったのかもな」とお褒めの言葉をもらっていた。
ただ、まだ完全に氷魔法をコントロールできているわけではないので、今後はさらに厳しめの特訓に入るだろうとも忠告していたな。
これにはロミーナもビビってしまうかな――と、心配していたが、それは杞憂だった。彼女は少しずつではあるが着実にコントロールできるようになってきてとても喜んでおり、さらに細かな制御が可能となるなら厳しい鍛錬にも耐えてみせると昼食の際に鼻息荒く語っていたのだ。
そんな婚約者の頑張りを目の当たりにしたら、頑張らないわけにはいかない。
「ほら、ここはこんな感じで足を運んで」
「えぇっと、こうかな――わっ!?」
「きゃっ!?」
ロミーナのリードに合わせようとした途端、またしても足がもつれて転倒してしまう。おまけに今回は体勢的に彼女を押し倒してしまうような格好になってしまった。
「ご、ごめんね、ロミーナ」
「わ、私の方こそ……」
すぐ目の前にロミーナの可愛らしい顔が。
美しい銀色の髪に吸い込まれそうな翡翠色の瞳がジッと俺を見つめる。
「うぅん! よろしいですか?」
「「っ!?」」
パウリーネさんのわざとらしい咳払いでハッと我に返った俺たちは慌てて飛び起きる。
「婚約者同士であるおふたりの仲がよろしいのは私としても大変喜ばしいのですが、今はダンスの練習中です。こちらに集中していただきませんと」
「ご、ごめんなさい」
「き、気をつけるわ」
お互いに声を震わせながら猛省。
仕切り直して練習を再開することにした。
それからも特訓の日々は続く。
もちろん、舞踏会へ出るにはドレスなどいつもとは違った服を手に入れなければならず、そちらの伝手もなかったウィドマーク家だが、その辺はイルデさんの知り合いを頼ることでなんとか乗り越えられそうだ。
「こう見えて長く生きている魔女だからね。いろんなところに顔が利くのさ」
ケラケラと笑いながら飲酒をしつつそう答えたイルデさん。
実はこの人が一番謎多き人なのかもしれない。
そして――ついに舞踏会当日を迎えた。
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