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第17話 舞踏会

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 魔力で動くチェーンソーによって、パルザン地方の林業は劇的な発展を――してもらいたいところではあったんだけど、素材不足によって量産は難しいと判断した。
 そんなうまいこと話は運ばないよなぁと思いつつ、原因となっている慢性的な魔鉱石不足の解消に向けて動きだしたいところだ。

 ただ、これはパルザン地方だけでなく、オルメド王国が抱える永遠のテーマみたいなものだった。
 どうも国内では魔鉱山自体がほとんどないらしく、他国からの輸入に頼っているのが現状らしいと父上から教えてもらった。さらに、うちで用意した木材を使用して造られる橋と町は一番の取引相手である隣国――フォルザン王国との国境になっている大河にかけられるという話だ。

 まあ、つまり、魔鉱石の取引をより円滑に行うための事業ってわけだ。この町にはフォルザンから魔鉱石が、オルメドからは農作物や海産物が送られるとのこと。向こうは山岳地帯が多く、おまけに国土の半分近くが砂漠という農業に適さない環境なので、今回の取引は両国にとってそれぞれの足りない部分を補う重要なものとなる。

 オルメドとファルザンの両国はこれを機により結束力を高めようと近々パーティーを開くようだが……なんとそのパーティーに俺たちウィドマーク家も招待されていたのだ。

 いや、うちも一応は貴族だから招待されてもなんらおかしくはないんだけどさ。
 これまでそういった舞台とは無縁の辺境領主だったため、父上も招待状を受け取った当初はめちゃくちゃ動揺していた。

 これもきっと、公爵家令嬢であるロミーナがいるからだろうな。
 でなくちゃあり得ないし。

 ――と、言ったわけで、二週間後に迫るパーティーへ出席するため、俺とロミーナはパウリーネさんの指導のもとダンスの練習に励む。

 今回はいわば舞踏会みたいなものらしく、貴族として恥ずかしくない振る舞いをするための練習ということだったが……ここで思わぬ大苦戦を強いられる。

 俺は絶望的にダンスのセンスがなかった。

 今より小さな頃から練習をしているロミーナはステップの確認くらいでほとんどやることはない――が、俺は基礎からみっちり叩き込まなければいけない状況だったのだ。

「大丈夫、アズベル」
「へ、平気だよ、ロミーナ……」

 口ではそう言うものの、パウリーネさんのスパルタ特訓はなかなかにハードだった。二週間という限られた時間の中で最低限をクリアしなければならないというのだから厳しくなるのは必然といえる。

 おまけに、こればっかりは生産魔法に頼るわけにはいかないからな。
 俺の努力でなんとか乗り越えないと。

 嬉しい報告としては、ゲイリーさんから作業効率が大幅にアップして納期を守れそうだという知らせが来たくらいか。
 たったひとつしか用意できなかったけど、みんなのモチベーションアップにはつながったらしい。

 ちなみに、パーティーの翌日にはその橋の建設現場を視察することになっていた。
 橋の上にある町。
 このワードだけでワクワクしてくるよ。

 ただひとつ心配なのは……このパーティーにロミーナの両親とふたりの姉も参加するという点か。
 父親以外とは初顔合わせになるけど、一体どんな人たちなのだろう。
 ……まあ、相手がどうであれ、ロミーナは婚約者である俺がしっかり守らないとな。

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