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第12話 メイドのリタ
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伯爵家の御令嬢でありながら民を救うために激流へとためらいなく身を投じ、さらには領民の生活を知るため農業を体験したいと宣言した。
その日の夕食。
ミリアにとって初めてとなるアースロード家での食事。
調理担当の者たちは緊張しただろうが、肝心のミリア自身はおいしさに感動していた。
これには俺だけじゃなく、周りで心配そうに様子をうかがっていたジェニーやスミゲルやローチもホッとひと安心――だが、どうにも不満げな表情でジッとミリアを見つめていた人物がいた。
それは彼女の専属メイドを務めるリタという名の女性だ。
特に何も口走っているわけではないが……その鋭い眼光から「伯爵家令嬢であらせられるミリア様になんという食事を!」という憤怒の感情が放たれている――ように映った。
ただ、メニューを見る限り致し方ないのかもしれない。
というのも、まさか彼女がこの屋敷にやってくるなんて微塵も想定していなかった俺は、貯蔵庫の食料をリーノ村の人たちに分け与えたこともあって食事の大半は野菜メインのものばかりであった。
本当はもっといろいろと食材はあったのだが、それもみんなにあげちゃったんだよなぁ
俺としては先行投資って意味合いも込められていたし、ジェニーたちは普段からこういった食事をとることが多かったから抵抗もほとんどなかった。
なのでしばらくはこうしたヘルシー料理が続くはずだったのだが……まさかこんなに早くミリアと共同生活をするとはな。
リタは当のミリア自身が食事内容に満足しているとはいえ、この状況がちょっと許せないみたいだ。
食事が終わると、ジェニーがミリアを部屋へ案内する。
俺もそれについていったのだが、気がつくと背後にピッタリとリタがくっついていた。
「ぬおっ!?」
あまりにも静かだったので気がつかず、思わずリアクションが大きくなってしまった。
それを見たリタは無表情のままこちらへ距離を詰めてくると、
「驚かせてしまい、申し訳ありません。それと……ミリアお嬢様を迎え入れていただき、ありがとうございます」
「へっ?」
めちゃくちゃ小声だけど、確かに今彼女は俺にお礼を言った?
呆然としていたら、今度はミリアが声をあげる。
「リタは無口であまり表情に変化がないため誤解されがちですが、こうしてわたくしを受け入れてくれたソリスにとても感謝しているようですわ」
「そ、そうなのか」
怒っていたわけじゃなく、ただ無表情でめちゃくちゃクールな性格だったってオチね。
それにしても……やはりミリアがこの家に来ることとなった理由についてはかなり複雑な背景がありそうだ。
何せ、彼女の世話係として同行しているのはリタのみ。
ここへ来る時こそ大勢の人が馬車に乗ってついてきたが、結局みんな途中で帰っちゃったしな。
この辺の事情について、改めて父上に尋ねてみてもいいかもしれない。
その日の夕食。
ミリアにとって初めてとなるアースロード家での食事。
調理担当の者たちは緊張しただろうが、肝心のミリア自身はおいしさに感動していた。
これには俺だけじゃなく、周りで心配そうに様子をうかがっていたジェニーやスミゲルやローチもホッとひと安心――だが、どうにも不満げな表情でジッとミリアを見つめていた人物がいた。
それは彼女の専属メイドを務めるリタという名の女性だ。
特に何も口走っているわけではないが……その鋭い眼光から「伯爵家令嬢であらせられるミリア様になんという食事を!」という憤怒の感情が放たれている――ように映った。
ただ、メニューを見る限り致し方ないのかもしれない。
というのも、まさか彼女がこの屋敷にやってくるなんて微塵も想定していなかった俺は、貯蔵庫の食料をリーノ村の人たちに分け与えたこともあって食事の大半は野菜メインのものばかりであった。
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なのでしばらくはこうしたヘルシー料理が続くはずだったのだが……まさかこんなに早くミリアと共同生活をするとはな。
リタは当のミリア自身が食事内容に満足しているとはいえ、この状況がちょっと許せないみたいだ。
食事が終わると、ジェニーがミリアを部屋へ案内する。
俺もそれについていったのだが、気がつくと背後にピッタリとリタがくっついていた。
「ぬおっ!?」
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それを見たリタは無表情のままこちらへ距離を詰めてくると、
「驚かせてしまい、申し訳ありません。それと……ミリアお嬢様を迎え入れていただき、ありがとうございます」
「へっ?」
めちゃくちゃ小声だけど、確かに今彼女は俺にお礼を言った?
呆然としていたら、今度はミリアが声をあげる。
「リタは無口であまり表情に変化がないため誤解されがちですが、こうしてわたくしを受け入れてくれたソリスにとても感謝しているようですわ」
「そ、そうなのか」
怒っていたわけじゃなく、ただ無表情でめちゃくちゃクールな性格だったってオチね。
それにしても……やはりミリアがこの家に来ることとなった理由についてはかなり複雑な背景がありそうだ。
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この辺の事情について、改めて父上に尋ねてみてもいいかもしれない。
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