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第10話 第一印象
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子どもの救出に成功してからはとにかく大騒ぎだった。
まず現場に駆けつけたのはミリア様の同行者たち。
どうも悲鳴が聞こえたらすぐに走行中の馬車から飛び降りたらしく、それだけで周りの者は大騒ぎだったという。
ただ、ミリア様を幼い頃からよく知っているというベテランメイド(とはいっても年齢は二十代後半)のリタさんは落ち着いていたようで、こういう事態も想定して自身も川へ飛び込んで助けに向かおうとしていた。
それよりも早くうちのローチが助けて事なきを得たわけで、リタさんは川岸でミリア様の髪をタオルで拭きつつお礼の言葉を口にする。
「ありがとうございました、ソリス様」
「いや、俺は何もしていないよ。頑張ってくれたのはローチだ」
「そ、それはもう必死でしたから……」
力を使い果たし、青い顔でぜぇぜぇと荒く息を吐き出しているローチ。その横ではジェニーが得意の回復魔法を使っているが、あれだけ疲れていると効果が表れるのに少し時間がかかりそうだな。
そんな話をしているうちに、溺れていた子の両親が到着。
俺だけじゃなく、伯爵家の御令嬢であるミリア様がずぶ濡れになりながら命を懸けて救ってくれたと知ると、頭が取れるんじゃないかと心配になるくらい勢いよくお辞儀を繰り返していた。
「私なら平気ですよ。それよりもこの子に怪我がなくてよかったですわ」
「おぉ……なんとお優しい……」
「まるで天使様だ……」
心優しいミリアの言葉に、女の子の両親は大号泣。
……まあ、普通の貴族なら身を挺してまで子どもの命を救おうって思う人はほとんどいないだろうな。
だが、彼女はそれをあっさりとやってのけた。
俺の――いや、かつてのソリス・アースロードの記憶にあるミリア・グリンハーツの記憶はとても曖昧なもので人間像までは掴み切れていない。
両親の政治的な戦力に利用されて婚約することとなった俺たちだが、相手側のメリットが一切見えないという不透明さが未だに気になっている。
何か、まだ俺の知らない裏の事情ってヤツがあるのかな。
「どうかしましたか、ソリス」
「えっ? い、いえ、なんでもありませんよ、ミリア様」
「?」
ミリア様はなぜかキョトンとした顔でこちらを見つめる。
「え、えっと……何か?」
「あなたとわたくしは婚約者同士ですわ。つまり、将来的に夫婦となるのですから敬語はやめにしません?」
「よ、よろしいのですか?」
家柄が違いすぎているから、正直もっとこう見下されているのかと思っていた。
何なら今回の婚約についても不満を抱いていると不安視していたのだが……ミリア様の様子を見る限り、そういうわけでもないようだな。
「もちろんですわ。わたくし……ここへ到着するまでの間、馬車の窓から景色を眺めてずっとワクワクしていましたの」
「ワ、ワクワクですか……?」
「敬語は禁止ですわよ?」
「あっ、は、はい」
見渡す限り平野と農場ばかりで、たまに風車があるくらいの超牧歌的なこのローエン地方には縁遠い言葉だと思うのだが……一体、ミリア様――じゃなくて、ミリアにはどのようにこの地が映ったのだろうか。
まず現場に駆けつけたのはミリア様の同行者たち。
どうも悲鳴が聞こえたらすぐに走行中の馬車から飛び降りたらしく、それだけで周りの者は大騒ぎだったという。
ただ、ミリア様を幼い頃からよく知っているというベテランメイド(とはいっても年齢は二十代後半)のリタさんは落ち着いていたようで、こういう事態も想定して自身も川へ飛び込んで助けに向かおうとしていた。
それよりも早くうちのローチが助けて事なきを得たわけで、リタさんは川岸でミリア様の髪をタオルで拭きつつお礼の言葉を口にする。
「ありがとうございました、ソリス様」
「いや、俺は何もしていないよ。頑張ってくれたのはローチだ」
「そ、それはもう必死でしたから……」
力を使い果たし、青い顔でぜぇぜぇと荒く息を吐き出しているローチ。その横ではジェニーが得意の回復魔法を使っているが、あれだけ疲れていると効果が表れるのに少し時間がかかりそうだな。
そんな話をしているうちに、溺れていた子の両親が到着。
俺だけじゃなく、伯爵家の御令嬢であるミリア様がずぶ濡れになりながら命を懸けて救ってくれたと知ると、頭が取れるんじゃないかと心配になるくらい勢いよくお辞儀を繰り返していた。
「私なら平気ですよ。それよりもこの子に怪我がなくてよかったですわ」
「おぉ……なんとお優しい……」
「まるで天使様だ……」
心優しいミリアの言葉に、女の子の両親は大号泣。
……まあ、普通の貴族なら身を挺してまで子どもの命を救おうって思う人はほとんどいないだろうな。
だが、彼女はそれをあっさりとやってのけた。
俺の――いや、かつてのソリス・アースロードの記憶にあるミリア・グリンハーツの記憶はとても曖昧なもので人間像までは掴み切れていない。
両親の政治的な戦力に利用されて婚約することとなった俺たちだが、相手側のメリットが一切見えないという不透明さが未だに気になっている。
何か、まだ俺の知らない裏の事情ってヤツがあるのかな。
「どうかしましたか、ソリス」
「えっ? い、いえ、なんでもありませんよ、ミリア様」
「?」
ミリア様はなぜかキョトンとした顔でこちらを見つめる。
「え、えっと……何か?」
「あなたとわたくしは婚約者同士ですわ。つまり、将来的に夫婦となるのですから敬語はやめにしません?」
「よ、よろしいのですか?」
家柄が違いすぎているから、正直もっとこう見下されているのかと思っていた。
何なら今回の婚約についても不満を抱いていると不安視していたのだが……ミリア様の様子を見る限り、そういうわけでもないようだな。
「もちろんですわ。わたくし……ここへ到着するまでの間、馬車の窓から景色を眺めてずっとワクワクしていましたの」
「ワ、ワクワクですか……?」
「敬語は禁止ですわよ?」
「あっ、は、はい」
見渡す限り平野と農場ばかりで、たまに風車があるくらいの超牧歌的なこのローエン地方には縁遠い言葉だと思うのだが……一体、ミリア様――じゃなくて、ミリアにはどのようにこの地が映ったのだろうか。
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