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第322話 領主として

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 山の女神マーテム様は俺を高く評価してくれていた。

 正直、あまり自覚はなかったんだけど、オティエノさんやディランさんの言葉を受けてマーテム様が言っていた意味がようやく理解できた。

 でもそれは領主として当然のことをやっただけに過ぎない。

 無属性魔法の可能性を最大限引き出そうと試行錯誤を繰り返し、領民たちが楽しく暮らせるよういろいろとやってきただけなのだ。

 とはいえ、やっぱり評価してくれたというのはありがたい。

「ロイス・アインレット……改めてあなたに感謝いたします」
「そ、そんな」
「あなたに女神の祝福を――」

 マーテム様がそう言った直後、彼女は眩い光に包まれた。そしてその光は俺のもとへとやってきて全身を包み込む。とても温かくて優しい光……思わず身を預けようとしたら、光は消えて首に何かがつけられていた。

「これって……ペンダント……?」
「女神の祝福を込めました。必ずあなたの助けになるでしょう。これからもこの地をよろしくお願いしますね」

 声は聞こえるけどマーテム様の姿は見えない。
 どうやら俺たちにメッセージを託して消えてしまったようだ。

 しかし、それは消滅というわけではない。
 神殿内には確かに女神様の魔力が残っていた。

「やったな、ロイス!」

 真っ先に喜んでくれたのはシルヴィアだった。
 勢い余って抱き着き、ピョンピョンと小さく跳ねている――が、興奮しているので少し力が入りすぎているぞ。

「いやはや……ついに女神からの祝福を受け取りましたか」
「凄いです! さすがはロイス様!」

 興奮気味に語ったのはシルヴィアだけでなく、ダイールさんとレオニーさんも同じだった。それにオティエノさんやディランさんも、女神様からの祝福を受けたことに対してお祝いの言葉をくれる。

 ここへ来てようやく重大さが身に染みて理解でき、そのうち震え出した。

 まさか女神様から「お願いしますね」と託されるなんて……プレッシャーを感じるけど、同時にやりがいもある。

 それを実現させるためにはやらなくちゃいけないことが山積みだ。
 とりあえず、村へ戻らないと。

「よし。――さあ、アダム村へ帰ろうか」

 みんなにそう告げてから、帰り支度を始めるのだった。
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