上 下
110 / 113
連載

第320話 神殿の秘密

しおりを挟む
 ようやくたどり着いた霊峰ガンティア山頂にある神殿の最奥部。

 だが、期待感高まる俺たちの心境とは裏腹にこれといった物は何もなく、ただ時間だけが過ぎていくという状況だった。

 念のため、周囲をさらにくまなく調査してみたのだが、やはり新しい発見はなかった。

「ロイス、私たちは肩透かしを食らったのだろうか……」
「そう考えるしかなさそうだな」

 正直、これ以上調べたところで何も出てきそうにない。
 となると、あとは考古学の専門家であるカナンさんたちに来てもらって、建造された時代やその背景を考察するにとどまるだろう。

 ……でも、俺はあきらめきれなかった。

 ここにはまだ残されている謎があるはず。
 それを解き明かすまでは下山する気になれなかった。

 シルヴィアにはあんな風に言ったけど、俺は辺りを見回しながら歩き始め――そしてついにある発見をする。

「うん? これは……」
「どうかしましたかな、領主殿」

 護衛騎士のダイールさんが俺の異変に気づいて駆け寄る。
 
「それは……石板ですか」
「うん。ここに文字のようなものが彫られているんだ」
「言われてみれば……しかし、解読には時間がかかりそうですな」
「大丈夫。こんな時のためにユリアーネの店で新しい本を買って習得した無属性魔法があるんだ」

 読めない文字を読めるようにする魔法。
 その名もズバリ「翻訳魔法」!

 これが本当に文字であり、誰かへ何かを伝えるようなメッセージだった場合は読めるようになるはず。

 ただ、これはまだ試したことがないので正確に翻訳できるかどうかは疑問符がつく。
 それでも何もしないよりはいいだろうと、俺は早速使ってみた。

 すると、意外な事実が発覚する。

「ここは山の女神が住む神殿らしい」
「「「「「山の女神?」」」」」

 山の精霊たちとは会ったことがあるけど、女神クラスまでは会ったことがない――というより、そもそも存在すら知らなかった。

「霊峰ガンティアのどこかに山の女神がいるってこと?」
「けどよぉ、そういうのは迷信の類だろう? 精霊がいたから女神もいるって話にはならないはずだ」

 オティエノさんの言葉に対して冷静な分析を披露するディランさん。
 確かにその通りではあるんだが……迷信のためにこれほど立派な神殿をこんな危険な場所に建造するだろうか。

 みんなでいろいろと考察していたその時、突然石板が眩く発光する。

「な、なんだ!?」

 思わず目を閉じた俺たち。

 やがて光が消え、ゆっくりと瞼を開けていったら――そこには信じられない光景が広がっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

婚約破棄され、聖女を騙った罪で国外追放されました。家族も同罪だから家も取り潰すと言われたので、領民と一緒に国から出ていきます。

SHEILA
ファンタジー
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれたエレノア・ベイリンガルは、前世の記憶を持つ転生者で、侯爵領はエレノアの転生知識チートで、とんでもないことになっていた。 そんなエレノアには、本人も家族も嫌々ながら、国から強制的に婚約を結ばされた婚約者がいた。 国内で領地を持つすべての貴族が王城に集まる「豊穣の宴」の席で、エレノアは婚約者である第一王子のゲイルに、異世界から転移してきた聖女との真実の愛を見つけたからと、婚約破棄を言い渡される。 ゲイルはエレノアを聖女を騙る詐欺師だと糾弾し、エレノアには国外追放を、ベイリンガル侯爵家にはお家取り潰しを言い渡した。 お読みいただき、ありがとうございます。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。