67 / 115
5巻
5-3
しおりを挟む
「まさかまたここへ戻ってくることになるなんて思わなかったな」
未だに貧乏貴族からは脱却しきれていないようで、昔と特に変わった様子はない。
屋敷の前に立ち、とりあえず戻ってきたことを父上に報告した方がいいのかなと思っていたら、遠くからメイドさんたちが慌てた様子で走ってくる。
ちょうどいいから伝えておこうと思ったのだが、彼女たちの視線は俺じゃなくてライザさんへと向けられていた。
「ライザ様!」
「どちらへ行かれていたのですか!」
「ごめんね。ちょっと遠出してた」
どうやら彼女たちはライザさんのところのメイドらしい。
しかもあの反応……うちへ来るのを話していなかったみたいだな。
「じゃあ、私はこの辺で失礼するわね。またパーティー会場で会いましょう」
「はい」
メイドたちに引っ張られるようにして去っていくライザさん。
なんだか稲妻みたいな人だったな。
「では、旦那様へは私が到着の報告をしてまいります」
そう切りだしたのはテスラさんだった。
きっと俺に気を遣ってくれたのだろうな。
「お願いします、テスラさん」
「かしこまりました。では」
屋敷へと歩いていくテスラさんを見送った後、戻ってきたら絶対に訪れようと思っていた場所があるのをふと思い出してそちらへと歩を進める。
「ロイス? どうかしたのか?」
不思議そうに尋ねるシルヴィアだが、俺の進行方向にある建物を目にすると無言のまま後をついてくる。
その後ろから事情を呑み込めていないダイールさんとレオニーさん、さらにマックがついてきた。
たどり着いた場所にあったのは、ジェロム地方に行く前、シルヴィアやテスラさんと一緒に過ごしたあのボロ屋敷。まさかここが健在だったとは驚いた。
「懐かしいな、ロイス」
「あぁ……」
思えば、すべてはここから始まった。
味のないスープを飲んで、生活改善を目指し、無属性魔法を習得してジェロム地方へと旅立った。シルヴィアとの関係も良好になり、こうしてあの頃を一緒に懐かしむようにまでなっている。
「ほぉ、ここがおふたりの出会いの場でしたか」
「貴族が住むお屋敷とはちょっと思えませんね……」
感慨深げに呟くダイールさんと若干引いているレオニーさん。
さすがにその態度はまずいと思ったのか、ダイールさんはレオニーさんへ促すように「うおっほん」とわざとらしい咳払いでアピール。一瞬なんのことか分からなかったレオニーさんだが、しばらくすると「しまった!」という表情で俺とシルヴィアに平謝りする。
まったく気にしていないので大丈夫だと伝えていたら、ちょうどテスラさんが戻ってきた。
「ロイス様、シルヴィア様、旦那様と奥様は少し外へ出ているようで――って、あれは……」
こちらへと足を運び、在りし日の住まいを目にすると足が止まった。
「懐かしいでしょ、テスラさん」
「そうですね……この屋敷で過ごした日々は、まるで昨日のことのように覚えています」
目を閉じ、ここでの生活を思い出している様子のテスラさん。
あの頃の俺は前世の記憶が戻る前で無気力だったし、きっと苦労の連続だったろうな。
「なぁ、ロイス。中へ入ってみないか?」
しばらくボロ屋敷を眺めていると、シルヴィアがそう提案する。
「いいね。ちょっと見てみようか」
「おふたりとも、気をつけてくださいね」
と、言いつつ、テスラさんも久しぶりに中を見てみたいらしく、俺たちの後ろからついてくる。
「お供します」
「わ、私も!」
「メェ~」
ダイールさん、レオニーさん、そしてマックも関心があるようで、一緒に屋敷の中へと足を踏み入れる。
中は相変わらずボロボロだった。
俺たちがここを出てから、まだ一年も経っていないというのに、まるで何十年も放置されていたかのようだ。……まあ、もともとボロかったから、実際は言うほど変化していないのかもしれないが。
ギシギシときしむ廊下。
少し傾いていて開きづらいドア。
どこからともなく入ってくる隙間風。
マイナス要素でしかなかったこれらを懐かしむ時が来るとは……あの頃はまったく想像していなかったなぁ。
それから、各々思い入れのある部屋へと入っていく。
俺が向かったのは寝室だ。
ここで目が覚めて――言ってみれば、ここがスタート地点なんだよな。
「ふぅ……」
ベッドに腰かけて、部屋の中を見回してみる。
これといって、心揺さぶられるものがあるってわけじゃないけど……なんていうか、言葉にはできない感情が湧き上がってくる。
すると、階下から俺を呼ぶシルヴィアの声が。
「ロイス! お義母様たちが到着されたそうだ!」
「分かった! すぐ行くよ!」
母上が到着したか。
となると、一緒に行動していた父上も戻ってきたようだな。
テスラさんの話では、キャロライン姉さんも夫婦で来るらしい。
子どもはまだ赤ちゃんだから、さすがにふたりだけかな。
気がつくと、屋敷の方にはたくさんの馬車が。
恐らく、今日のパーティーに招待された人たちが集まっているのだろう。魔法兵団の未来を背負う若き分団長――肩書だけ見たら、本当に将来を嘱望された出世頭って感じがするな。
「では、屋敷で着替えましょう」
テスラさんに案内され、俺とシルヴィアは実に久しぶりとなるアインレット家の屋敷へ足を踏み入れた。
むしろ、こっちに来ることの方がかなり久しぶりだな。
マックには庭で待機していてもらい、シルヴィアはドレスに着替えるためテスラさん、レオニーさんの女性陣と一緒に別室へ移動。ふたりを見送った後、残った俺とダイールさんは控室で待っていようと歩き始めたのだが、そこへ入れ違うようにやってきたのはふたりの男女だった。
「あら、ロイスじゃない」
「久しぶりだな」
キャロライン姉さんと夫のジルベール・ヴィンクスさんだ。姉さんの腕には生まれて間もない赤ちゃんの姿も。お留守番かと思ったが。
「姉さん、それにジルベール義兄さんも、お久しぶりです」
ふたりとは結婚式の時以来となる再会だが……この三人、なんとも幸せそうなオーラで満ちている。今だって、まるで絵画みたいだ。
「シルヴィアは一緒じゃないの?」
「彼女なら、今は着替えに行っているよ」
「そうなのね。じゃあ、私もそろそろ……」
キャロライン姉さんは数人のメイドさんを引き連れ、シルヴィアの後を追うように別室へと足早に向かう。
「女性陣は準備が大変だな」
「ですね」
父上やビシェル兄さんより先に姉夫婦と出会えたのは良かったな。
おかげでだいぶ緊張がほぐれたよ。
それから、俺たちは控室へ入り、ダイールさんを交え、男三人によるなんでもない世間話で盛り上がる。
思えば、ジルベール義兄さんが俺を自分たちの結婚式へ招待しようとしてくれたところから、付き合いが始まったんだよな。
あの時はまだ姉さんの心境の変化が掴みきれなくて少し戸惑っていたけど、今振り返れば本当にありがたいことだ。
もし、ジルベール義兄さんが行動に移してくれなかったら、俺と姉さんが和解するのにまだまだ時間がかかっただろう。もしかしたら、この場にも来ていないかもしれない。
男三人で話をしていると、そこへさらに人が加わる。
「あら、楽しそうね」
やってきたのは母上とテレイザさんだった。
「イローナ様、ご無沙汰しております」
深々と頭を下げるジルベール義兄さんに、母上は「そんなにかしこまらなくてもいいわよ」と恐縮していた。
「相変わらずの真面目人間ね、ジルベール殿は」
ちょっと呆れたように、テレイザさんが言う。まあ、貴族ってこういう社会だし、あのような態度になってしまうのは仕方ないかもな。ましてや、今日はビシェル兄さんが分団長に就任するパーティーだし、実は俺以上に緊張しているのかも。
母上たちが加わってからは育児の話で盛り上がっていた。
そういえば、初孫になるんだよなぁ……って、孫がいるようには見えないよな、母上。二十代後半と言われても信じてしまう若々しさだ。
赤ちゃんを中心に、俺たちの話はさらに盛り上がっていく。
……なんか、父上とビシェル兄さんがいなければ、普通の家族っぽくなっているよな。
キャロライン姉さんの結婚式の時、父上もビシェル兄さんも俺を歓迎する様子はなかったし、今もそれはきっと変わっていないだろう。
家族といえば、ライザさんはまだ支度しているのかな?
ボロ屋敷の方に寄り道した俺たちより先に準備を始めていたはずなんだが。
そんなことを考えているうちに、ひとりの執事が部屋へ入ってきて告げる。
「旦那様の用意が整いました」
このひと声で、周囲の和やかな空気は一変した。
「何やら賑わっておるようだな」
父であるデルゴ・アインレットが俺たちのもとへとやってきた。
一気に緊張が走る――が、それはほんの一瞬。俺やテレイザさんなど、ここ最近の父上を知らない者はその姿を見てギョッと目を丸くした。
あの父上がひどく弱々しい様子だったのだ。
ビシェル兄さんとキャロライン姉さんがそれぞれ魔法使いとして優れた才能を持っていると分かってから、いつでも高圧的な態度だったのに……今日はそれが見る影もなかった。
結局、父上は俺たちに軽く挨拶をしただけで自室へと戻っていってしまった。
せっかくの息子の晴れ舞台だというのに、まるでそれを感じさせないほどの暗い様子。父上が立ち去ってから控室は騒然となった。
「あ、あんな調子でパーティーは大丈夫なのかしら……」
「どこか、お体の調子が悪いのでは?」
呆然とするテレイザさんに、原因を追究しようとするジルベール義兄さん。
だが、取り巻きの者たちも詳しい話は聞いていないという。
もしかしたら……アインレット家にとって良くないことが起きたのかもしれない。
その時、俺はあることに気づく。
まだ、ビシェル兄さんの姿を見ていなかったのだ。
「そういえば、ビシェル兄さんがいませんね」
「言われてみれば……別室で誰かと話しているのかしら。ジルベールはどこかで会った?」
「い、いえ、私もまだお会いしておりません」
母上もジルベール義兄さんも、兄さんの姿を見ていないらしい。
同時に、俺はライザさんの行方も気になっていた。俺たちよりだいぶ先にドレスの準備に入ったはずだから、さすがにそろそろ出てきてもいい頃なのに。
「……何か、あったのかな」
少し不安になってきたところで、シルヴィアとキャロライン姉さんの準備が整ったのか、テスラさんが俺を呼びに来た。
「ロイス様、お待たせいたしました」
彼女は俺たちの雰囲気が険しいのを見て眉をひそめる。
「何かあったのでしょうか?」
「あったというか、何もなかったというか……」
「?」
首を傾げるテスラさんに、俺はここまでに起きたことをかいつまんで説明する。
「私やシルヴィア様がいないうちにそのようなことが……」
「ビシェル兄さんの姿も見えないし……」
「ビシェル様でしたら、先ほど別の控室から出ていかれるところを見ましたよ」
「えっ? そうなの?」
俺たちの前に姿を見せてはいないが、一応、パーティーに向けて準備を進めているみたいだ。
――いや、それはそもそもパーティーの準備なのか?
何か、緊急事態が起きたってことはないだろうか。
いずれにせよ、なんだか不穏な空気が漂い始めてきたな。
ビシェル兄さんの動向が気になるものの、俺はテスラさんの案内でドレス姿のシルヴィアが待つ部屋へと移動。
「シルヴィア様、ロイス様をお連れしました」
テスラさんはノックをした後そう告げる。
直後、「ど、どうぞ」という緊張した声が聞こえた。
ドレス姿を見せるのはこれまでも何度かあったので緊張することはないと思うのだが……そう思いながら室内へ入ると――
「ロ、ロイス……変じゃないか?」
不安そうに尋ねてくるシルヴィア。
それに対する俺の答えは――決まっている。
「何も変じゃないよ! 凄く似合っている! 綺麗だよ、シルヴィア!」
思ったことをそのまま口にした。
白を基調としたドレスに目が行きがちだが、今回はいつもと髪型も違う。
これまでは長いピンク色の髪を下ろした状態だったが、この日は後ろで束ね、うなじがハッキリと見えている。
全体を通しての感想は「素晴らしい」のひと言!
テスラさん……グッジョブ!
「そ、そうか? いつもと違って、なんだか首回りの風通しが良くて落ち着かない感じがするのだが……」
「そっちの髪型も似合っているよ」
「ロ、ロイスにそう言ってもらえて安心した」
何事も初挑戦って不安になるものだよな。シルヴィアの髪型の変化って、これまであまり見かけなかったからなぁ……剣の鍛錬の際、ポニーテールにまとめるくらいか。あれはあれで素晴らしいけど。
さて、正直まだまだ褒め足りないところではあるが、そろそろ屋敷内がばたついてきた――つまり、パーティーの開始が近づいているということだ。
しばらくすると、執事が俺たちに会場へと移動するよう伝えに来た。
会場入りしてみたら、なかなかの人数が集まっているのに驚く。
もっと慎ましいパーティーだと思っていたから予想外だった。
一番目立つ中央には騎士団のお偉いさんたちと談笑するビシェル兄さんと、その傍らにはライザさんの姿もあった。
その顔つきは、何か腹を括ったような……強い決心が滲んでいるように映った。
この場に参加しているということは、婚約破棄をするわけじゃなさそうだけど……なんだかちょっと不安だな。
それからパーティーは滞りなく終了。
結局、俺とシルヴィアはビシェル兄さんと一度も会話をしなかった。
あっちはあっちで挨拶回りに忙しそうだったから仕方がないか。別に話したいってわけでもなかったし。
特に何事もないまま、俺たちは用意された部屋へと移動。
さすがにこの日ばかりは本家の屋敷に泊めてもらえるらしい。
キャロライン姉さんやテレイザさんも同じくここで一夜を過ごすという。
「何事もなく無事に終わって良かったよ」
「ふふふ、モンスターと戦いに来たわけじゃないぞ」
「それはそうなんだけどさ……同じくらい緊張したよ」
寝る直前まで、俺とシルヴィアは同じ部屋で談笑していた。
すでに俺たちの頭の中は「帰ったらまず何をしようか」で埋め尽くされていた。
そんな思考に気がつくと、つくづく領主という仕事が向いているなぁと感じる。
――この時の俺は知る由もなかった。
実は父上とビシェル兄さんがある企みを持って俺たちをパーティーに招待していたという事実を。
◇◇◇
次の日の朝。
早々に朝食を済ませると、俺たちはすぐに帰り支度を整えた。
「最後に姉さんたちに挨拶をしてから帰ろうか」
「そうだな」
テスラさんたちにマックを連れてきてもらう間に、キャロライン姉さんを探すためシルヴィアと屋敷内を歩き回る。
すると、そこに思わぬ人物が現れた。
「ロイス。少しいいか?」
「っ!? ち、父上……」
「悪いがおまえだけで私の執務室まで来てくれ」
立ちふさがるように現れた父上は、俺ひとりに執務室へ来るよう告げた。
「ロ、ロイス……」
「大丈夫だよ、シルヴィア。すぐに終わるさ」
不安からか表情を曇らせるシルヴィアを落ち着かせるように言ってから、俺は父上の後を追って執務室へ。
そこでは思わぬ人物が待っていた。
「えっ? ビ、ビシェル兄さん?」
「待っていたぞ、ロイス」
パーティーではひと言も話せなかったビシェル兄さんが、なぜかめちゃくちゃ笑顔で俺を出迎える。
こう言っては失礼なんだけど……めちゃくちゃ不気味だ。
ビシェル兄さんが俺にあんな晴れやかな笑みを向けるなんて、今まで一度たりともなかったからな。
「あの、これは一体?」
「今回はおまえに大事な話があってパーティーに呼んだんだ」
「大事な話?」
ますます雲行きが怪しくなってきた。
このふたりが揃って俺にする話といえば、どう考えてもジェロム地方絡みだろう。
「大体察してはいるようだな」
父上はビシェル兄さんの横へ並び立つと、俺をパーティーに招待した真の目的を口にした。
「ロイス、おまえには今日限りでジェロム地方の領主をやめてもらう。代わりに明日からはビシェルが新しい領主としてジェロム地方を治める。勢いのある領地を治める立場となれば箔がつくからな」
「そういうわけだ。あとは俺に任せて、おまえは昔のようにあのボロ屋敷で婚約者とメイドとの三人生活をしていてくれ」
「なっ!?」
ちょっと待ってくれ。
突然何を言いだすんだ?
ビシェル兄さんが新しいジェロム地方の領主になるって……そんなの絶対に認められるわけがない。
「無理ですよ! ジェロム地方は他の領地とは訳が違うんです!」
「なんだ? 落ちこぼれのおまえにできて俺にはできないというのか?」
「あそこには獣人族の集落や文化の違う民族が暮らしています。彼らの長としっかりとした関係性を構築しないうちは――」
「黙れ! 領民というなら領主の言うことに大人しく従えばいいんだよ!」
ダメだ。
そんな力任せのやり方ではジェロム地方じゃなくたって健全な領地運営はできないだろう。
兄さんはその根本を理解していない。
ここはなんとしても領主としての座を死守しなければいけない――のだけど、立場的に弱い俺が抵抗したところで、強引に領主交代の話を進めていくに決まっている。
でも……それでも、ジェロム地方だけは譲れない。
このままではせっかくみんなと一緒に築き上げてきたいろんなものが全部ぶち壊しになってしまう。
どうにか食らいついていこうとしていたその時、執務室の外から声がした。
「先ほどの話を詳しく聞かせていただけますか?」
言い終えた直後に扉が開き、三人の人物が入ってきた。
「な、なんだ、貴様ら――うっ!?」
父上はノックもせずに室内へと入り込んだ者たちの無作法ぶりに怒りをぶちまけたが……その人たちを目の当たりにするとサーッと顔が青ざめていく。
その三人とは――
未だに貧乏貴族からは脱却しきれていないようで、昔と特に変わった様子はない。
屋敷の前に立ち、とりあえず戻ってきたことを父上に報告した方がいいのかなと思っていたら、遠くからメイドさんたちが慌てた様子で走ってくる。
ちょうどいいから伝えておこうと思ったのだが、彼女たちの視線は俺じゃなくてライザさんへと向けられていた。
「ライザ様!」
「どちらへ行かれていたのですか!」
「ごめんね。ちょっと遠出してた」
どうやら彼女たちはライザさんのところのメイドらしい。
しかもあの反応……うちへ来るのを話していなかったみたいだな。
「じゃあ、私はこの辺で失礼するわね。またパーティー会場で会いましょう」
「はい」
メイドたちに引っ張られるようにして去っていくライザさん。
なんだか稲妻みたいな人だったな。
「では、旦那様へは私が到着の報告をしてまいります」
そう切りだしたのはテスラさんだった。
きっと俺に気を遣ってくれたのだろうな。
「お願いします、テスラさん」
「かしこまりました。では」
屋敷へと歩いていくテスラさんを見送った後、戻ってきたら絶対に訪れようと思っていた場所があるのをふと思い出してそちらへと歩を進める。
「ロイス? どうかしたのか?」
不思議そうに尋ねるシルヴィアだが、俺の進行方向にある建物を目にすると無言のまま後をついてくる。
その後ろから事情を呑み込めていないダイールさんとレオニーさん、さらにマックがついてきた。
たどり着いた場所にあったのは、ジェロム地方に行く前、シルヴィアやテスラさんと一緒に過ごしたあのボロ屋敷。まさかここが健在だったとは驚いた。
「懐かしいな、ロイス」
「あぁ……」
思えば、すべてはここから始まった。
味のないスープを飲んで、生活改善を目指し、無属性魔法を習得してジェロム地方へと旅立った。シルヴィアとの関係も良好になり、こうしてあの頃を一緒に懐かしむようにまでなっている。
「ほぉ、ここがおふたりの出会いの場でしたか」
「貴族が住むお屋敷とはちょっと思えませんね……」
感慨深げに呟くダイールさんと若干引いているレオニーさん。
さすがにその態度はまずいと思ったのか、ダイールさんはレオニーさんへ促すように「うおっほん」とわざとらしい咳払いでアピール。一瞬なんのことか分からなかったレオニーさんだが、しばらくすると「しまった!」という表情で俺とシルヴィアに平謝りする。
まったく気にしていないので大丈夫だと伝えていたら、ちょうどテスラさんが戻ってきた。
「ロイス様、シルヴィア様、旦那様と奥様は少し外へ出ているようで――って、あれは……」
こちらへと足を運び、在りし日の住まいを目にすると足が止まった。
「懐かしいでしょ、テスラさん」
「そうですね……この屋敷で過ごした日々は、まるで昨日のことのように覚えています」
目を閉じ、ここでの生活を思い出している様子のテスラさん。
あの頃の俺は前世の記憶が戻る前で無気力だったし、きっと苦労の連続だったろうな。
「なぁ、ロイス。中へ入ってみないか?」
しばらくボロ屋敷を眺めていると、シルヴィアがそう提案する。
「いいね。ちょっと見てみようか」
「おふたりとも、気をつけてくださいね」
と、言いつつ、テスラさんも久しぶりに中を見てみたいらしく、俺たちの後ろからついてくる。
「お供します」
「わ、私も!」
「メェ~」
ダイールさん、レオニーさん、そしてマックも関心があるようで、一緒に屋敷の中へと足を踏み入れる。
中は相変わらずボロボロだった。
俺たちがここを出てから、まだ一年も経っていないというのに、まるで何十年も放置されていたかのようだ。……まあ、もともとボロかったから、実際は言うほど変化していないのかもしれないが。
ギシギシときしむ廊下。
少し傾いていて開きづらいドア。
どこからともなく入ってくる隙間風。
マイナス要素でしかなかったこれらを懐かしむ時が来るとは……あの頃はまったく想像していなかったなぁ。
それから、各々思い入れのある部屋へと入っていく。
俺が向かったのは寝室だ。
ここで目が覚めて――言ってみれば、ここがスタート地点なんだよな。
「ふぅ……」
ベッドに腰かけて、部屋の中を見回してみる。
これといって、心揺さぶられるものがあるってわけじゃないけど……なんていうか、言葉にはできない感情が湧き上がってくる。
すると、階下から俺を呼ぶシルヴィアの声が。
「ロイス! お義母様たちが到着されたそうだ!」
「分かった! すぐ行くよ!」
母上が到着したか。
となると、一緒に行動していた父上も戻ってきたようだな。
テスラさんの話では、キャロライン姉さんも夫婦で来るらしい。
子どもはまだ赤ちゃんだから、さすがにふたりだけかな。
気がつくと、屋敷の方にはたくさんの馬車が。
恐らく、今日のパーティーに招待された人たちが集まっているのだろう。魔法兵団の未来を背負う若き分団長――肩書だけ見たら、本当に将来を嘱望された出世頭って感じがするな。
「では、屋敷で着替えましょう」
テスラさんに案内され、俺とシルヴィアは実に久しぶりとなるアインレット家の屋敷へ足を踏み入れた。
むしろ、こっちに来ることの方がかなり久しぶりだな。
マックには庭で待機していてもらい、シルヴィアはドレスに着替えるためテスラさん、レオニーさんの女性陣と一緒に別室へ移動。ふたりを見送った後、残った俺とダイールさんは控室で待っていようと歩き始めたのだが、そこへ入れ違うようにやってきたのはふたりの男女だった。
「あら、ロイスじゃない」
「久しぶりだな」
キャロライン姉さんと夫のジルベール・ヴィンクスさんだ。姉さんの腕には生まれて間もない赤ちゃんの姿も。お留守番かと思ったが。
「姉さん、それにジルベール義兄さんも、お久しぶりです」
ふたりとは結婚式の時以来となる再会だが……この三人、なんとも幸せそうなオーラで満ちている。今だって、まるで絵画みたいだ。
「シルヴィアは一緒じゃないの?」
「彼女なら、今は着替えに行っているよ」
「そうなのね。じゃあ、私もそろそろ……」
キャロライン姉さんは数人のメイドさんを引き連れ、シルヴィアの後を追うように別室へと足早に向かう。
「女性陣は準備が大変だな」
「ですね」
父上やビシェル兄さんより先に姉夫婦と出会えたのは良かったな。
おかげでだいぶ緊張がほぐれたよ。
それから、俺たちは控室へ入り、ダイールさんを交え、男三人によるなんでもない世間話で盛り上がる。
思えば、ジルベール義兄さんが俺を自分たちの結婚式へ招待しようとしてくれたところから、付き合いが始まったんだよな。
あの時はまだ姉さんの心境の変化が掴みきれなくて少し戸惑っていたけど、今振り返れば本当にありがたいことだ。
もし、ジルベール義兄さんが行動に移してくれなかったら、俺と姉さんが和解するのにまだまだ時間がかかっただろう。もしかしたら、この場にも来ていないかもしれない。
男三人で話をしていると、そこへさらに人が加わる。
「あら、楽しそうね」
やってきたのは母上とテレイザさんだった。
「イローナ様、ご無沙汰しております」
深々と頭を下げるジルベール義兄さんに、母上は「そんなにかしこまらなくてもいいわよ」と恐縮していた。
「相変わらずの真面目人間ね、ジルベール殿は」
ちょっと呆れたように、テレイザさんが言う。まあ、貴族ってこういう社会だし、あのような態度になってしまうのは仕方ないかもな。ましてや、今日はビシェル兄さんが分団長に就任するパーティーだし、実は俺以上に緊張しているのかも。
母上たちが加わってからは育児の話で盛り上がっていた。
そういえば、初孫になるんだよなぁ……って、孫がいるようには見えないよな、母上。二十代後半と言われても信じてしまう若々しさだ。
赤ちゃんを中心に、俺たちの話はさらに盛り上がっていく。
……なんか、父上とビシェル兄さんがいなければ、普通の家族っぽくなっているよな。
キャロライン姉さんの結婚式の時、父上もビシェル兄さんも俺を歓迎する様子はなかったし、今もそれはきっと変わっていないだろう。
家族といえば、ライザさんはまだ支度しているのかな?
ボロ屋敷の方に寄り道した俺たちより先に準備を始めていたはずなんだが。
そんなことを考えているうちに、ひとりの執事が部屋へ入ってきて告げる。
「旦那様の用意が整いました」
このひと声で、周囲の和やかな空気は一変した。
「何やら賑わっておるようだな」
父であるデルゴ・アインレットが俺たちのもとへとやってきた。
一気に緊張が走る――が、それはほんの一瞬。俺やテレイザさんなど、ここ最近の父上を知らない者はその姿を見てギョッと目を丸くした。
あの父上がひどく弱々しい様子だったのだ。
ビシェル兄さんとキャロライン姉さんがそれぞれ魔法使いとして優れた才能を持っていると分かってから、いつでも高圧的な態度だったのに……今日はそれが見る影もなかった。
結局、父上は俺たちに軽く挨拶をしただけで自室へと戻っていってしまった。
せっかくの息子の晴れ舞台だというのに、まるでそれを感じさせないほどの暗い様子。父上が立ち去ってから控室は騒然となった。
「あ、あんな調子でパーティーは大丈夫なのかしら……」
「どこか、お体の調子が悪いのでは?」
呆然とするテレイザさんに、原因を追究しようとするジルベール義兄さん。
だが、取り巻きの者たちも詳しい話は聞いていないという。
もしかしたら……アインレット家にとって良くないことが起きたのかもしれない。
その時、俺はあることに気づく。
まだ、ビシェル兄さんの姿を見ていなかったのだ。
「そういえば、ビシェル兄さんがいませんね」
「言われてみれば……別室で誰かと話しているのかしら。ジルベールはどこかで会った?」
「い、いえ、私もまだお会いしておりません」
母上もジルベール義兄さんも、兄さんの姿を見ていないらしい。
同時に、俺はライザさんの行方も気になっていた。俺たちよりだいぶ先にドレスの準備に入ったはずだから、さすがにそろそろ出てきてもいい頃なのに。
「……何か、あったのかな」
少し不安になってきたところで、シルヴィアとキャロライン姉さんの準備が整ったのか、テスラさんが俺を呼びに来た。
「ロイス様、お待たせいたしました」
彼女は俺たちの雰囲気が険しいのを見て眉をひそめる。
「何かあったのでしょうか?」
「あったというか、何もなかったというか……」
「?」
首を傾げるテスラさんに、俺はここまでに起きたことをかいつまんで説明する。
「私やシルヴィア様がいないうちにそのようなことが……」
「ビシェル兄さんの姿も見えないし……」
「ビシェル様でしたら、先ほど別の控室から出ていかれるところを見ましたよ」
「えっ? そうなの?」
俺たちの前に姿を見せてはいないが、一応、パーティーに向けて準備を進めているみたいだ。
――いや、それはそもそもパーティーの準備なのか?
何か、緊急事態が起きたってことはないだろうか。
いずれにせよ、なんだか不穏な空気が漂い始めてきたな。
ビシェル兄さんの動向が気になるものの、俺はテスラさんの案内でドレス姿のシルヴィアが待つ部屋へと移動。
「シルヴィア様、ロイス様をお連れしました」
テスラさんはノックをした後そう告げる。
直後、「ど、どうぞ」という緊張した声が聞こえた。
ドレス姿を見せるのはこれまでも何度かあったので緊張することはないと思うのだが……そう思いながら室内へ入ると――
「ロ、ロイス……変じゃないか?」
不安そうに尋ねてくるシルヴィア。
それに対する俺の答えは――決まっている。
「何も変じゃないよ! 凄く似合っている! 綺麗だよ、シルヴィア!」
思ったことをそのまま口にした。
白を基調としたドレスに目が行きがちだが、今回はいつもと髪型も違う。
これまでは長いピンク色の髪を下ろした状態だったが、この日は後ろで束ね、うなじがハッキリと見えている。
全体を通しての感想は「素晴らしい」のひと言!
テスラさん……グッジョブ!
「そ、そうか? いつもと違って、なんだか首回りの風通しが良くて落ち着かない感じがするのだが……」
「そっちの髪型も似合っているよ」
「ロ、ロイスにそう言ってもらえて安心した」
何事も初挑戦って不安になるものだよな。シルヴィアの髪型の変化って、これまであまり見かけなかったからなぁ……剣の鍛錬の際、ポニーテールにまとめるくらいか。あれはあれで素晴らしいけど。
さて、正直まだまだ褒め足りないところではあるが、そろそろ屋敷内がばたついてきた――つまり、パーティーの開始が近づいているということだ。
しばらくすると、執事が俺たちに会場へと移動するよう伝えに来た。
会場入りしてみたら、なかなかの人数が集まっているのに驚く。
もっと慎ましいパーティーだと思っていたから予想外だった。
一番目立つ中央には騎士団のお偉いさんたちと談笑するビシェル兄さんと、その傍らにはライザさんの姿もあった。
その顔つきは、何か腹を括ったような……強い決心が滲んでいるように映った。
この場に参加しているということは、婚約破棄をするわけじゃなさそうだけど……なんだかちょっと不安だな。
それからパーティーは滞りなく終了。
結局、俺とシルヴィアはビシェル兄さんと一度も会話をしなかった。
あっちはあっちで挨拶回りに忙しそうだったから仕方がないか。別に話したいってわけでもなかったし。
特に何事もないまま、俺たちは用意された部屋へと移動。
さすがにこの日ばかりは本家の屋敷に泊めてもらえるらしい。
キャロライン姉さんやテレイザさんも同じくここで一夜を過ごすという。
「何事もなく無事に終わって良かったよ」
「ふふふ、モンスターと戦いに来たわけじゃないぞ」
「それはそうなんだけどさ……同じくらい緊張したよ」
寝る直前まで、俺とシルヴィアは同じ部屋で談笑していた。
すでに俺たちの頭の中は「帰ったらまず何をしようか」で埋め尽くされていた。
そんな思考に気がつくと、つくづく領主という仕事が向いているなぁと感じる。
――この時の俺は知る由もなかった。
実は父上とビシェル兄さんがある企みを持って俺たちをパーティーに招待していたという事実を。
◇◇◇
次の日の朝。
早々に朝食を済ませると、俺たちはすぐに帰り支度を整えた。
「最後に姉さんたちに挨拶をしてから帰ろうか」
「そうだな」
テスラさんたちにマックを連れてきてもらう間に、キャロライン姉さんを探すためシルヴィアと屋敷内を歩き回る。
すると、そこに思わぬ人物が現れた。
「ロイス。少しいいか?」
「っ!? ち、父上……」
「悪いがおまえだけで私の執務室まで来てくれ」
立ちふさがるように現れた父上は、俺ひとりに執務室へ来るよう告げた。
「ロ、ロイス……」
「大丈夫だよ、シルヴィア。すぐに終わるさ」
不安からか表情を曇らせるシルヴィアを落ち着かせるように言ってから、俺は父上の後を追って執務室へ。
そこでは思わぬ人物が待っていた。
「えっ? ビ、ビシェル兄さん?」
「待っていたぞ、ロイス」
パーティーではひと言も話せなかったビシェル兄さんが、なぜかめちゃくちゃ笑顔で俺を出迎える。
こう言っては失礼なんだけど……めちゃくちゃ不気味だ。
ビシェル兄さんが俺にあんな晴れやかな笑みを向けるなんて、今まで一度たりともなかったからな。
「あの、これは一体?」
「今回はおまえに大事な話があってパーティーに呼んだんだ」
「大事な話?」
ますます雲行きが怪しくなってきた。
このふたりが揃って俺にする話といえば、どう考えてもジェロム地方絡みだろう。
「大体察してはいるようだな」
父上はビシェル兄さんの横へ並び立つと、俺をパーティーに招待した真の目的を口にした。
「ロイス、おまえには今日限りでジェロム地方の領主をやめてもらう。代わりに明日からはビシェルが新しい領主としてジェロム地方を治める。勢いのある領地を治める立場となれば箔がつくからな」
「そういうわけだ。あとは俺に任せて、おまえは昔のようにあのボロ屋敷で婚約者とメイドとの三人生活をしていてくれ」
「なっ!?」
ちょっと待ってくれ。
突然何を言いだすんだ?
ビシェル兄さんが新しいジェロム地方の領主になるって……そんなの絶対に認められるわけがない。
「無理ですよ! ジェロム地方は他の領地とは訳が違うんです!」
「なんだ? 落ちこぼれのおまえにできて俺にはできないというのか?」
「あそこには獣人族の集落や文化の違う民族が暮らしています。彼らの長としっかりとした関係性を構築しないうちは――」
「黙れ! 領民というなら領主の言うことに大人しく従えばいいんだよ!」
ダメだ。
そんな力任せのやり方ではジェロム地方じゃなくたって健全な領地運営はできないだろう。
兄さんはその根本を理解していない。
ここはなんとしても領主としての座を死守しなければいけない――のだけど、立場的に弱い俺が抵抗したところで、強引に領主交代の話を進めていくに決まっている。
でも……それでも、ジェロム地方だけは譲れない。
このままではせっかくみんなと一緒に築き上げてきたいろんなものが全部ぶち壊しになってしまう。
どうにか食らいついていこうとしていたその時、執務室の外から声がした。
「先ほどの話を詳しく聞かせていただけますか?」
言い終えた直後に扉が開き、三人の人物が入ってきた。
「な、なんだ、貴様ら――うっ!?」
父上はノックもせずに室内へと入り込んだ者たちの無作法ぶりに怒りをぶちまけたが……その人たちを目の当たりにするとサーッと顔が青ざめていく。
その三人とは――
0
お気に入りに追加
5,730
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。