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第316話 考察
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山頂へと続いている可能性の高いラスト・ダンジョン。
そこで俺たちを待っていたのはあまりにも予想外すぎるものだった。
広い空間の中に存在する、崩れ去った遺跡。
石柱には文字や絵が彫られており、それらは老竜ワーウィックの住んでいるあの遺跡と同じようなデザインであった。
このことから、以前ここに存在していた遺跡はワーウィックの暮らす遺跡を作った者と同一であると考えられた。
……いや、この場合は人というより集団というべきか。
かつてこの霊峰ガンティアに暮らしていた、ムデル族以外の人々――彼らは山の内部に住居や神殿を建築し、そこで生活をしていたのだろうか。いずれにせよ、考古学者であるカナンさんが喜びそうな発見だな。
「瓦礫の合間からモンスターが飛び出してくる可能性もあります。みなさん注意を怠らないようにしてください」
ダイールさんからの忠告を受け、全員が身構える。
とはいえ、最初にこの空間へ足を踏み入れた時から、その異様さでみんな警戒心が高まっていたんだよな。
「それにしても……どうしてこの遺跡に暮らしていた者たちは滅んでしまったのだろう」
瓦礫をかいくぐるように前進している途中で、シルヴィアがボソッとそんなことを呟く。
確かに、百年以上前にこれほどの建築技術を持っていたというなら、それ以外の分野でも発展していた可能性は高い。
だが、未だにこの地で暮らしていた者たちについてはまったく情報が出てこないのだ。
ユリアーネは書店を経営する傍ら、この地の歴史を調べようとそれらしい文献を見つけては読み漁っているようだが、それでも明確な情報は掴めていない。
「謎が多いよなぁ……でも、滅んだとは限らないんじゃないかな」
「えっ? どういうことだ?」
「霊峰ガンティアで長らく暮らしていると、不便なことも多くなってくるだろうし、移住したのかもしれない」
俺がムデル族と初めて接触した際、彼らは魔力酔いで多くの者たちが苦しんでいるという状況だった。
魔法とは無縁の生活をしてきた彼らにとって、原因が魔力にあるとはまったく予想できなかったのだろう。何の対策も練られず、困り果てていた。
あの時は偶然俺たちがオティエノさんと知り合ったから治療ができたけど、それがなかったら今頃どうなっていたことか。
遺跡を作った過去の人たちについて考察を巡らせていると、視線の先に光が見えた。
どうやら出口はすぐそこまで迫っているようだ。
そこで俺たちを待っていたのはあまりにも予想外すぎるものだった。
広い空間の中に存在する、崩れ去った遺跡。
石柱には文字や絵が彫られており、それらは老竜ワーウィックの住んでいるあの遺跡と同じようなデザインであった。
このことから、以前ここに存在していた遺跡はワーウィックの暮らす遺跡を作った者と同一であると考えられた。
……いや、この場合は人というより集団というべきか。
かつてこの霊峰ガンティアに暮らしていた、ムデル族以外の人々――彼らは山の内部に住居や神殿を建築し、そこで生活をしていたのだろうか。いずれにせよ、考古学者であるカナンさんが喜びそうな発見だな。
「瓦礫の合間からモンスターが飛び出してくる可能性もあります。みなさん注意を怠らないようにしてください」
ダイールさんからの忠告を受け、全員が身構える。
とはいえ、最初にこの空間へ足を踏み入れた時から、その異様さでみんな警戒心が高まっていたんだよな。
「それにしても……どうしてこの遺跡に暮らしていた者たちは滅んでしまったのだろう」
瓦礫をかいくぐるように前進している途中で、シルヴィアがボソッとそんなことを呟く。
確かに、百年以上前にこれほどの建築技術を持っていたというなら、それ以外の分野でも発展していた可能性は高い。
だが、未だにこの地で暮らしていた者たちについてはまったく情報が出てこないのだ。
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「謎が多いよなぁ……でも、滅んだとは限らないんじゃないかな」
「えっ? どういうことだ?」
「霊峰ガンティアで長らく暮らしていると、不便なことも多くなってくるだろうし、移住したのかもしれない」
俺がムデル族と初めて接触した際、彼らは魔力酔いで多くの者たちが苦しんでいるという状況だった。
魔法とは無縁の生活をしてきた彼らにとって、原因が魔力にあるとはまったく予想できなかったのだろう。何の対策も練られず、困り果てていた。
あの時は偶然俺たちがオティエノさんと知り合ったから治療ができたけど、それがなかったら今頃どうなっていたことか。
遺跡を作った過去の人たちについて考察を巡らせていると、視線の先に光が見えた。
どうやら出口はすぐそこまで迫っているようだ。
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