無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一

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第311話 山頂への道のり

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 いよいよ霊峰ガンティア完全攻略に向けて始動する。

 すでに中腹エリアには村とまではいかないが、宿泊施設はできている。あの一帯は結界魔法によって雪崩の影響も受けないので、まずはそこで作戦を練ることになるだろう。

 俺の祖父であるアダム・カルーゾでさえ届かなった頂。
 そこにたどり着けば、真の意味でこの地の領主になれる――そんな気がしていた。

 だが、一筋縄ではいかない超難所であるのは理解している。 
 そのため、今回は助っ人多めで挑もうと思う。

 まずはフルズさん。
 
 正直、彼はギルドの仕事で忙しいからと当初の構想からは外れていた。
 しかし、

「水臭いですなぁ、領主殿。いつでも頼ってください」

 どうやらダイールさんあたりから話を聞いたようで、立候補してくれた。この地に初めて足を踏み入れたその日から知り合った、いわば最古参ともいえるフルズさんに力を貸してもらえるなら心強い。

 さらに魔法担当としてフィーネ。
 医療知識をカバーしてくれるマクシムさん。
 ここにダイールさんとレオニーさんといういつものメンバーで――と、思っていたら、さらに驚くべき助っ人がふたり参加を希望してくれた。

 ひとりは山をよく知るムデル族のオティエノさん。

 さらにもうひとりは山猫の獣人族の村で新村長に就任したディランさんだった。

「私もずっとあの山の頂が気になっていたんだよね」
「俺もだ」

 ふたりとも、俺がここへやってくる前からいる。
 そりゃあ、あれだけ大きな山だから機になるよな。

 俺はふたりの参加を歓迎する。
 これで山頂を目指すメンバーは決定だ。

 すると、村のみんなが山頂への到達を祈るという意味も込め、激励会を開いてくれることになった。
 いつもの宴会ではなく、今回は転移魔法陣を利用してムデル族や山猫の獣人族たちも集まってくれた。今やどちらも俺にとっては大事な領民。そんな彼らから激励の言葉をもらって感激しないわけがなかった。

 人数も多いため、宴会はいつも以上の盛り上がりを見せる。
 そんな時、ふと霊峰ガンティアが視界に入った。

「待ってろよ……そのてっぺんにたどり着いてやるからな」

 俺は宣戦布告する。
ここを無事に乗り越えて、シルヴィアと盛大な結婚式をあげるために。

いよいよ明日から、俺と霊峰ガンティア――その最後の戦いが幕を開ける。
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