98 / 113
連載
第308話 援軍
しおりを挟む
「おまえたちがそこまで互いを想い合っているとはなぁ……」
叫びに乗せたシルヴィアの想いは、父上に届いた――ように見えたが、
「しかし、それでも婚約は解消だ」
「なぜですか!」
怒りのあまり声を荒げる。
それに対し、父上は驚いた表情を浮かべた。恐らく、俺がここまで大声をあげて抵抗するとは予想していなかったのだろう。どうやら、父上の中にある俺の姿は、過去のボロ屋敷でふさぎ込んでいた頃のまま止まっているようだった。
俺がジェロム地方でしてきたことの数々……それをもう少しだけでも知っていてもらえたなら、このような反応が返ってくると予想できたはずなのだ。
父上は少し顔を引きつらせながら、解消の理由について説明を始めた。
「おまえにはもっと相応しい相手をあてがってやる。今の当主より息子たちはあらゆる面で力が劣る。ラクロワ家にもう用はない」
「っ!」
やはり父上の頭の中には損得勘定しかない。
それも浅はかで幼稚なものだ。
「……あなたのような短絡的な思考ではどのみちアインレット家を再興させることなどできません」
「な、なんだと!?」
「ラクロワ家には優秀な人たちもいます。父上はそれをご存じなのですか?」
「ぐっ……」
どうやら、父上はラクロワ家の現状について当主のジェレミー様以外の情報を持ち合わせてはいないようだった。そんな浅知恵で威張り散らすから体よく利用されて領地運営の失敗を繰り返し、家計が火の車になったというのに……何も学んでいないんだな。
もうひと押しすれば婚約破棄をなかったことにできそうだと思った直後、俺たちにとって予想外の援軍が。
「先ほどの話を詳しく聞かせていただけますか?」
突然部屋の外から声がして、扉が開く。
すると、三人の人物が入ってきた。
「な、なんだ、貴様ら――うっ!?」
父上はノックもせずに室内へと入り込んだ者たちの無作法ぶりに怒りをぶちまけたが……その人たちを目の当たりにするとサーッと顔が青ざめていく。
その三人とは――
「可愛い義弟と義妹の婚約破棄が一方的に決められたと聞いて抗議しに来ましたが……どうやら私とビシェルの婚約についても考え直す必要がでてきましたね」
ひとりはビシェル兄さんの婚約者で国内でも強大な権力を持つビュフォード家ご令嬢のライザさん。
「僕はもう結婚してキャロラインと幸せに暮らしているけど……ロイスとシルヴィアには随分お世話になったからね。ふたりが婚約破棄を望んでいないというならキャロラインと一緒に少しお話をさせていただこうかと」
もうひとりはキャロライン姉さんの夫であるヴィンクス家のジルベールさん。
そして最後のひとりは――
「叔母として、愛する甥っ子姪っ子の結婚を邪魔しようというなら……鉄道都市バーロンはアインレット家との契約をすべて破棄させていただきましょう」
母上の妹――つまり、俺にとっては叔母にあたるテレイザさんだった。
……たぶん、テレイザさんが一番ブチギレてるな。
ともかく、ここに強力な援軍三銃士が揃ったのだった。
叫びに乗せたシルヴィアの想いは、父上に届いた――ように見えたが、
「しかし、それでも婚約は解消だ」
「なぜですか!」
怒りのあまり声を荒げる。
それに対し、父上は驚いた表情を浮かべた。恐らく、俺がここまで大声をあげて抵抗するとは予想していなかったのだろう。どうやら、父上の中にある俺の姿は、過去のボロ屋敷でふさぎ込んでいた頃のまま止まっているようだった。
俺がジェロム地方でしてきたことの数々……それをもう少しだけでも知っていてもらえたなら、このような反応が返ってくると予想できたはずなのだ。
父上は少し顔を引きつらせながら、解消の理由について説明を始めた。
「おまえにはもっと相応しい相手をあてがってやる。今の当主より息子たちはあらゆる面で力が劣る。ラクロワ家にもう用はない」
「っ!」
やはり父上の頭の中には損得勘定しかない。
それも浅はかで幼稚なものだ。
「……あなたのような短絡的な思考ではどのみちアインレット家を再興させることなどできません」
「な、なんだと!?」
「ラクロワ家には優秀な人たちもいます。父上はそれをご存じなのですか?」
「ぐっ……」
どうやら、父上はラクロワ家の現状について当主のジェレミー様以外の情報を持ち合わせてはいないようだった。そんな浅知恵で威張り散らすから体よく利用されて領地運営の失敗を繰り返し、家計が火の車になったというのに……何も学んでいないんだな。
もうひと押しすれば婚約破棄をなかったことにできそうだと思った直後、俺たちにとって予想外の援軍が。
「先ほどの話を詳しく聞かせていただけますか?」
突然部屋の外から声がして、扉が開く。
すると、三人の人物が入ってきた。
「な、なんだ、貴様ら――うっ!?」
父上はノックもせずに室内へと入り込んだ者たちの無作法ぶりに怒りをぶちまけたが……その人たちを目の当たりにするとサーッと顔が青ざめていく。
その三人とは――
「可愛い義弟と義妹の婚約破棄が一方的に決められたと聞いて抗議しに来ましたが……どうやら私とビシェルの婚約についても考え直す必要がでてきましたね」
ひとりはビシェル兄さんの婚約者で国内でも強大な権力を持つビュフォード家ご令嬢のライザさん。
「僕はもう結婚してキャロラインと幸せに暮らしているけど……ロイスとシルヴィアには随分お世話になったからね。ふたりが婚約破棄を望んでいないというならキャロラインと一緒に少しお話をさせていただこうかと」
もうひとりはキャロライン姉さんの夫であるヴィンクス家のジルベールさん。
そして最後のひとりは――
「叔母として、愛する甥っ子姪っ子の結婚を邪魔しようというなら……鉄道都市バーロンはアインレット家との契約をすべて破棄させていただきましょう」
母上の妹――つまり、俺にとっては叔母にあたるテレイザさんだった。
……たぶん、テレイザさんが一番ブチギレてるな。
ともかく、ここに強力な援軍三銃士が揃ったのだった。
105
お気に入りに追加
5,724
あなたにおすすめの小説
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。