無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一

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第306話 アインレット家へ

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 俺とシルヴィアの婚約破棄――この衝撃的かつ一方的な判断に抗議するため、俺たちは総出でアインレット家を目指すこととなった。

 今回は御家事情が絡んでいることもあり、エイーダとフィーネには留守番をしてもらう。
 留守の間、村はフルズさんとマクシムさんのふたりに任せきりとなってしまうが、あの人たちは信頼できる素晴らしい大人だ。何も問題ないだろう。

「じゃあ、行ってきます」
「お気をつけて!」

 フルズさんをはじめ、村人全員から見送られる。
 どうやら俺とシルヴィアの婚約が一方的に破棄されたという話は村中に知れ渡っているらしかった。最初は俺たちの不仲を心配する声も出ていたが、俺の父親である現アインレット家当主の独断によるものだと知ると応援に回ってくれた。

「領民たちの目から見ても、おふたりはお似合いなのですよ」

 マックの引っ張る屋根付きのちょっと豪華な荷台の中で、ダイールさんはそう言った。
 お似合い、か。
 シルヴィアは美人だし、相手のことを思いやれる優しい女性だ。正直、俺なんかにはもったいないって感じる。それでも、彼女は一緒にジェロム地方を発展させるために力を尽くしてくれた。もう彼女以外の女性と結婚したいなんて気持ちは湧いてこないな。

 ちなみに、ダイールさんの「お似合い発言」を聞いてから、シルヴィアはずっと照れっぱなしだった。自分はロイスに相応しい存在となるようこれまで頑張ってきたので、それが領民たちに認められたような気がして嬉しいとも語っていたが……それはむしろこっちのセリフなんだよなぁ。

 ……やはり、このままではよくない。
 なんとしても、父上に考えを改めてもらわなくては。


  ◇◇◇


 長い道のりの末、ようやくアインレット家へと到着。
 庭の手入れをしていたメイドたちがこちらの存在に気づいてすぐに屋敷の敷地内へと通してくれる――が、ここで思わぬ事態が。

「お待ちください、ロイス様」
「ここから先は通さぬようにとデルゴ様に命じられております」

 屈強な門番ふたりがやってきて、道をふさいだ。

「父上には会えないと?」
「今は誰とも会う気がないとおっしゃられております」
「遠いところからお越しいただき誠に申し訳ありませんが、今日のところはお引き取りください」
「……冗談じゃない」

 小声でそう呟くと、俺は魔力をまとう。
 攻撃の意思があると判断したらしい門番ふたりは手にしていた剣を構えるが、

「むっ!?」
「ぐっ!?」

 すぐに動きが止まる。
 俺の重力魔法で動きを封じ込めたのだ。

「ロ、ロイス!?」
「大丈夫だよ、シルヴィア。俺と父上が話しをしている間、ここで大人しくしていてもらうだけだから」

 ふたりを傷つけるつもりなど毛頭ない。
 彼らは与えられた仕事をしただけ――問題は、門番ふたりにめちゃくちゃな命令をした父上にある。

 カッとなった心を静めるように深呼吸をしてから、俺たちは全員揃って屋敷内へと足を踏み入れた。
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