無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一

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第294話 いろいろ動きだす

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 結界魔法強化に成功した翌日。
 俺は早速シルヴィアとともにアスコサへと出向き、職人のデルガドさんへと新しい村づくりの件を相談する。

「そいつはいいですな。未踏の地と言われた霊峰ガンティアがついに人の介入を許すか……長くあの山を見続けているが、実に感慨深い」

 外で木材の加工作業中だったデルガドさんの視線は、自然とジェロム地方にある霊峰ガンティアへと向けられた。このアスコサからはだいぶ距離があるけど、ここからでも十分に山の迫力が伝わってくる。

「昔からあの山に挑む人はいたんですね」
「それこそ、俺が子どもの頃から大勢いましたよ。領主殿の爺さん――アダム・カルーゾがもっとも山頂に近づけたんじゃないですかねぇ」

 目を細め、懐かしそうに語るデルガドさん。
 やはり冒険者としての祖父は相当な実力者だったみたいだ。
 ジェロム地方ではいろんなところでその名残が見られるけど、こうした生きた証言というのはとても説得力があるし、よりリアルに感じられる。

「しかし、さすがのアダム・カルーゾも山頂近くに村を作ろうとは言いださなかったな」
「それは無属性魔法の効果があるおかげですね」
「でも、あの場所を雪崩から守るためにそれまで魔法を強化して成功させたのは紛れもなくロイスの努力の成果だ。それは十分誇れると私は思うぞ」
「シルヴィア……」

 真っ直ぐ見つめられながらそう言われるとさすがに照れる――が、それ以上に嬉しいという感情が勝った。

「若いっていうのはいいですな~」

 そんな俺たちを眺めながら深々と頷くデルガドさん。
 ……いかん。
 またふたりの世界に入っていた。
 シルヴィアもそれに気づいて恥ずかしそうに顔を赤くしている――と、その時、何やら町の中心部が騒がしいことに気づく。

「何かあったんですかね?」
「酔っ払いが暴れている……という雰囲気ではなさそうですな。見てきましょう」
「俺たちも行きますよ」

 アスコサは領地外にはなるけど、何かトラブルが起きたというなら対処した方がいいだろうな。幸い、俺の無属性魔法はこういった事態に対応しやすいし。

 早速、デルガドさんと一緒に騒動の起きている場所へ向かうと、そこには大きく立派な装飾が施された馬車が二台とまっていた。

「こいつは凄い。さぞかし名のある貴族様がおいでになったようですよ」
「ここを治めている領主でしょうか?」
「いやぁ、馬車についている紋章が違っているのでそれはないかと」

 確かに――って、あれ?
 あの紋章ってどこかで見た気が……そうだ!

「シ、シルヴィア、あれって……」
「ああ……うちの――ラクロア家の紋章だ」

 そうだ。
 馬車に刻まれているのはシルヴィアの実家であるラクロア家の紋章。
 となると、シルヴィアの関係者がアスコサに来ている?
 真っ先に浮かんだのはマーシャルさんだったが、もし彼がこの地を訪れるとしたら騎士団で所有する馬車だろうし、わざわざ実家から来るとも考えられない。

 じゃあ、一体誰が何の目的で来たっていうんだ?
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