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連載
第289話 無属性魔法の強化
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霊峰ガンティアの完全制覇に向けて動きだした俺たちにとって、最大の懸念は雪崩の存在であった。
今でさえちょっと肌寒い気候なのに、これから寒くなってくると辺り一面は雪に包まれるだろう。さらに傾斜のある坂があちらこちらに見受けられるので、雪崩も発生しやすいのではないかと推察した。
俺としては、この温泉のある一帯に新たな村を作ろうと計画している。
しかし、ここで安心して暮らせるようにするためには、その雪崩の対策もしっかり講じていく必要がある。
そこで、俺は無属性魔法の新たな可能性について考えてみた。
「雪崩を事前に察知できたとしても、村全体がそれに巻き込まれてしまっては結局意味がないと思うんです」
「それは確かに……実は、うちの女房の実家が雪国なんですがね、雪崩に巻き込まれて壊滅した村もあるって聞いたことがありますよ」
「そ、それほど強力なのか……」
デルガドさんからの情報に戦慄するシルヴィア。
俺もその情報は初めて耳にする。
どれだけ身構えていても、俺たちは所詮素人。本場の苦労に関してはどうしても疎くなってしまうため、雪国の出身者やその地で冒険者活動をしていた者など、ゆかりのある人物に集まってもらって議論を交わさなくてはならないだろう。
雪国での暮らしに関してレクチャーを受けるのはとりあえず後にして、まずは今の俺にできるところから雪崩対策をしていこう。
パッと思い浮かんだのは――結界魔法を強化するということだ。
今でこそ信頼できる仲間が増えたからほとんどやらなくなったが、昔は別の町へ向かう際に屋敷を結界魔法で覆い、侵入できないようにしていた。
それをさらに強化して規模を拡大させれば、雪崩が発生しても村全体を守れるのではないかと考えたのだ。
しかし、そうなると屋敷ひとつ分の時とは桁違いの魔力を消費する。今の俺には不可能だろう。
「根本的に魔力を見直す必要がありそうだな」
今までさまざまな場面で無属性魔法に頼ってきた。万能なその魔法は、俺たちの領地運営には欠かせないものとなり、時には戦闘面でも助けてもらっている。
――でも、そろそろさらなるパワーアップが求められるのかもな。
「無属性魔法をもっと強化していかないと……」
ただ使える種類を増やすだけではない。
魔法を強化して、より強力な効果を得られるようにしなければ。
「無属性魔法を強化するって……具体的にどうやるんだ?」
「それはもちろん、シルヴィアの剣術のように鍛えまくる!」
「な、なるほど……どうやって?」
「…………」
純粋なシルヴィアの質問に、俺は黙り込んでしまった。もっと強くなるという目標はできたのだが、肝心の達成へ向けたプロセスがまったく浮かんでこない。
すると、デルガドさんがこうアドバイスをくれた。
「業界が違うんで参考になるか分かりませんが……俺らのような職人の場合は腕の立つヤツのもとで修行をし、そこで鍛えます。魔法にはそのような習慣はないんで?」
「弟子入り、か……」
ないわけじゃない。
……けど、あえて無属性魔法を極めようなんて人がいるのかな。俺のように、もうこれに頼るしかないという選択肢のない追い込まれた状況であればもっと極めたいという気持ちも湧いてくるんだろうけど。
「無属性魔法の専門家が何人いることやら……」
「しかし、ユリアーネの店に専門の魔導書がある以上、研究をしている人自体はいるのではないか?」
「魔導書――あっ!」
そうだ!
魔導書だよ!
さすがは俺の婚約者!
よぉし……無属性魔法強化に向けて光明が見えたぞ!
今でさえちょっと肌寒い気候なのに、これから寒くなってくると辺り一面は雪に包まれるだろう。さらに傾斜のある坂があちらこちらに見受けられるので、雪崩も発生しやすいのではないかと推察した。
俺としては、この温泉のある一帯に新たな村を作ろうと計画している。
しかし、ここで安心して暮らせるようにするためには、その雪崩の対策もしっかり講じていく必要がある。
そこで、俺は無属性魔法の新たな可能性について考えてみた。
「雪崩を事前に察知できたとしても、村全体がそれに巻き込まれてしまっては結局意味がないと思うんです」
「それは確かに……実は、うちの女房の実家が雪国なんですがね、雪崩に巻き込まれて壊滅した村もあるって聞いたことがありますよ」
「そ、それほど強力なのか……」
デルガドさんからの情報に戦慄するシルヴィア。
俺もその情報は初めて耳にする。
どれだけ身構えていても、俺たちは所詮素人。本場の苦労に関してはどうしても疎くなってしまうため、雪国の出身者やその地で冒険者活動をしていた者など、ゆかりのある人物に集まってもらって議論を交わさなくてはならないだろう。
雪国での暮らしに関してレクチャーを受けるのはとりあえず後にして、まずは今の俺にできるところから雪崩対策をしていこう。
パッと思い浮かんだのは――結界魔法を強化するということだ。
今でこそ信頼できる仲間が増えたからほとんどやらなくなったが、昔は別の町へ向かう際に屋敷を結界魔法で覆い、侵入できないようにしていた。
それをさらに強化して規模を拡大させれば、雪崩が発生しても村全体を守れるのではないかと考えたのだ。
しかし、そうなると屋敷ひとつ分の時とは桁違いの魔力を消費する。今の俺には不可能だろう。
「根本的に魔力を見直す必要がありそうだな」
今までさまざまな場面で無属性魔法に頼ってきた。万能なその魔法は、俺たちの領地運営には欠かせないものとなり、時には戦闘面でも助けてもらっている。
――でも、そろそろさらなるパワーアップが求められるのかもな。
「無属性魔法をもっと強化していかないと……」
ただ使える種類を増やすだけではない。
魔法を強化して、より強力な効果を得られるようにしなければ。
「無属性魔法を強化するって……具体的にどうやるんだ?」
「それはもちろん、シルヴィアの剣術のように鍛えまくる!」
「な、なるほど……どうやって?」
「…………」
純粋なシルヴィアの質問に、俺は黙り込んでしまった。もっと強くなるという目標はできたのだが、肝心の達成へ向けたプロセスがまったく浮かんでこない。
すると、デルガドさんがこうアドバイスをくれた。
「業界が違うんで参考になるか分かりませんが……俺らのような職人の場合は腕の立つヤツのもとで修行をし、そこで鍛えます。魔法にはそのような習慣はないんで?」
「弟子入り、か……」
ないわけじゃない。
……けど、あえて無属性魔法を極めようなんて人がいるのかな。俺のように、もうこれに頼るしかないという選択肢のない追い込まれた状況であればもっと極めたいという気持ちも湧いてくるんだろうけど。
「無属性魔法の専門家が何人いることやら……」
「しかし、ユリアーネの店に専門の魔導書がある以上、研究をしている人自体はいるのではないか?」
「魔導書――あっ!」
そうだ!
魔導書だよ!
さすがは俺の婚約者!
よぉし……無属性魔法強化に向けて光明が見えたぞ!
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