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第258話 新しい取り組み
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フィーネの一件で何かとドタバタしていたが、戻ってきてからは平和そのものだった。
ただ、問題もある。
俺は待ち構えていた大量の仕事だ。
「たった一日でここまでたまるとは……」
冒険者たちがダンジョンを調査して知り得た情報をフルズさんが分かりやすくまとめてくれた資料が山積みとなっていた。さらに、考古学者であるカナンさんの遺跡調査の中間報告書も含まれている。
「あの遺跡にも、足を運ばないとなぁ」
あそこには老竜ワーウィックがいる。
カナンさんや調査に協力してくれている冒険者たちは毎日会いに行っているらしいが、俺はなかなかそちらまで手が回らなかった。フィーネの件がひと段落ついた今、久しぶりに訪れてみようかな。
そのフィーネだが、今日からうちの新たなメイドとして勤めることとなった。
「では、私がメイドとしての心構えを一から叩き込みます」
「お、お願いいたします」
「大丈夫だよ、フィーネさん。あんな風に言っていても、テスラさんはすっごく優しい人だから」
緊張気味のフィーネをエイーダが和ませる。
彼女からすれば、年齢は上でもメイドとしては後輩になるからな。新しい仲間ができてうれしいのだろう。
魔法使いとしては溢れるほどの才能を持っているフィーネだが、メイドとして必要な家事能力に関しては初心者同然だった。
炊事、洗濯、掃除――記憶喪失ということもあるのだろうが、正直、最初期の頃のエイーダよりひどい。魔法を使って地属性魔法使いのオルデンと戦っていた女性とはまるで別人のようだ。
「うぅ……私はダメダメですぅ……」
ガクンと項垂れ、すっかり自信をなくしたフィーネ。
しかし、テスラさんとエイーダが根気強く教え、少しずつではあるが着実にいろいろと上達していった。この調子なら、きっと近いうちに仕事を任せられるだろう。
「うーん……ちょっと休憩しようかな」
半日ほど書斎にこもって仕事をしていたら、なんだか肩が凝ってきた。それに長時間イスに座って作業をしていたせいか腰も痛い。
何か飲み物でも持ってこようかなと一階へ向かう――と、
「あれ? シルヴィアたちがいない?」
さっきまで遊びに来ていたユリアーネと談笑していたはずが、ふたりとも忽然と姿を消していた。
気になって窓の外を見てみると、そこにはアダム村の子どもたちに剣術を教えているシルヴィアの姿が。すぐ近くではユリアーネがその光景を見守っている。
この状況に興味を持った俺は、屋敷の外へ出て事情を聞くことに。
「何をやっているんだい?」
「あっ、ロイス」
「ロイス様」
「「「「「領主様だ!」」」」」
一斉に視線がこちらへと向けられる。
それから、詳しい事情をシルヴィアとユリアーネから聞いた。
「へぇ、剣術を教えてほしいと」
「そうなんだ」
「子どもたちの間では、シルヴィア様の武勇伝は有名ですからね」
武勇伝、か。
まあ、確かに、数々のモンスターと戦ってきたが、大体トドメを刺しているのはシルヴィアだったからな。武勇伝に違いない。
それにしても、子どもたちに剣術を教える――いや、それも大事だが、子どもたちにはもっとたくさん学んでほしいな。
となると、必要になってくる施設がある。
「学校、か……」
ただ、問題もある。
俺は待ち構えていた大量の仕事だ。
「たった一日でここまでたまるとは……」
冒険者たちがダンジョンを調査して知り得た情報をフルズさんが分かりやすくまとめてくれた資料が山積みとなっていた。さらに、考古学者であるカナンさんの遺跡調査の中間報告書も含まれている。
「あの遺跡にも、足を運ばないとなぁ」
あそこには老竜ワーウィックがいる。
カナンさんや調査に協力してくれている冒険者たちは毎日会いに行っているらしいが、俺はなかなかそちらまで手が回らなかった。フィーネの件がひと段落ついた今、久しぶりに訪れてみようかな。
そのフィーネだが、今日からうちの新たなメイドとして勤めることとなった。
「では、私がメイドとしての心構えを一から叩き込みます」
「お、お願いいたします」
「大丈夫だよ、フィーネさん。あんな風に言っていても、テスラさんはすっごく優しい人だから」
緊張気味のフィーネをエイーダが和ませる。
彼女からすれば、年齢は上でもメイドとしては後輩になるからな。新しい仲間ができてうれしいのだろう。
魔法使いとしては溢れるほどの才能を持っているフィーネだが、メイドとして必要な家事能力に関しては初心者同然だった。
炊事、洗濯、掃除――記憶喪失ということもあるのだろうが、正直、最初期の頃のエイーダよりひどい。魔法を使って地属性魔法使いのオルデンと戦っていた女性とはまるで別人のようだ。
「うぅ……私はダメダメですぅ……」
ガクンと項垂れ、すっかり自信をなくしたフィーネ。
しかし、テスラさんとエイーダが根気強く教え、少しずつではあるが着実にいろいろと上達していった。この調子なら、きっと近いうちに仕事を任せられるだろう。
「うーん……ちょっと休憩しようかな」
半日ほど書斎にこもって仕事をしていたら、なんだか肩が凝ってきた。それに長時間イスに座って作業をしていたせいか腰も痛い。
何か飲み物でも持ってこようかなと一階へ向かう――と、
「あれ? シルヴィアたちがいない?」
さっきまで遊びに来ていたユリアーネと談笑していたはずが、ふたりとも忽然と姿を消していた。
気になって窓の外を見てみると、そこにはアダム村の子どもたちに剣術を教えているシルヴィアの姿が。すぐ近くではユリアーネがその光景を見守っている。
この状況に興味を持った俺は、屋敷の外へ出て事情を聞くことに。
「何をやっているんだい?」
「あっ、ロイス」
「ロイス様」
「「「「「領主様だ!」」」」」
一斉に視線がこちらへと向けられる。
それから、詳しい事情をシルヴィアとユリアーネから聞いた。
「へぇ、剣術を教えてほしいと」
「そうなんだ」
「子どもたちの間では、シルヴィア様の武勇伝は有名ですからね」
武勇伝、か。
まあ、確かに、数々のモンスターと戦ってきたが、大体トドメを刺しているのはシルヴィアだったからな。武勇伝に違いない。
それにしても、子どもたちに剣術を教える――いや、それも大事だが、子どもたちにはもっとたくさん学んでほしいな。
となると、必要になってくる施設がある。
「学校、か……」
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