無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一

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第143話 不審者

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 ミネットの別荘に到着し、少しゆっくりして旅の疲れを癒そうと思ったのだが……どうもそうは言ってはいられないようだ。

「どうかしたんですの?」

 屋敷の主であるミネットが使用人たちに声をかけた。

「ミ、ミネット様!?」
「じ、実は……先ほどこの近くで不審な人物がうろついていると連絡があって」
「不審な人物?」

 そいつは穏やかな話じゃないな。
 しかし、ここは多くの貴族が利用するというリゾート地。そう簡単におかしな人物が足を踏み入れられるとは思えない。
俺たちでさえ、この屋敷へたどり着くまでに何度か手荷物検査だったり本人照会だったりとチェックが厳しかったからな。

「わざわざこのような場所に賊が入り込むとは思えませんが……誰かその不審者を直接目撃した者は?」
「わ、私が……」

 おずおずと手をあげたのは若いメイドさんだった。
 彼女曰く、庭園の手入れをするために外へ出てきたら何者かが塀の上に立ち、侵入を試みようとしていたらしい。

 それに驚いて悲鳴をあげると、その不審者はすぐに撤退していったという。
 俺は少し気になったことがあったので、近くにいたベテランメイドさんに声をかけた。

「この屋敷に結界魔法などは?」
「もちろん使ってはいるのですが……」
「反応しなかった、と?」

 そう尋ねると、彼女は静かに頷いた。
 結界魔法が反応しなかったというより、その効果を打ち消したって考えた方が自然かな。
 つまり、その不審者自身か或いはそいつを雇っている黒幕のどちらかが、魔法使いとしてかなりの実力者であると思われる。

 屋敷の使用人たちは心配しているようだが、ここに集まった者たちの実力的にそれは不要じゃないかなって思う。

「心配は無用ですわ。わたくしたちには強い味方がいますもの」

 ミネットの言う通り、俺たちにはパートナー魔獣という頼もしい仲間がいる。
 今回は長旅になるということで、到着次第こちらへ召喚術を通じて呼び寄せるつもりでいたのだ。

「では、早速その味方に登場していただきましょうか」

 早速ミネットは召喚術を使用し、自らのパートナー魔獣である植物人形《プラント・ゴーレム》のグリンを呼び出そうとする――が、ここで異変が。

「……あら?」

 召喚術を使ったはずが、パートナー魔獣は姿を見せず。
 まさか……召喚術が使用できない?
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