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第143話 疑惑

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 セブロイ・ダルフォスへの対応はティオグがメインで行った。
 話はその後もレドルに関するものに。

「レドルの治安悪化の元凶となっていた者たちは捕らえました――が、その彼らがこの屋敷に足を運んだ可能性があります」
「なんと!?」

 話を耳にしたセブロイ様は困惑……ここも自然な反応だ。とても演技には見えない。

「心当たりはありませんか?」
「ま、まったく……一体何を目的でうちに……」

 ハンカチで汗を拭うセブロイ様。
 その肩にはいつの間にかティオグのパートナー魔獣である死千蝶《ゴースト・バタフライ》がとまっていた。どうしてと疑問に感じた直後、実はあの魔獣には他にも特技があると以前ティオグが語っていたのを思い出した。

『死千蝶《ゴースト・バタフライ》は相手の嘘も見抜けます』

 ティオグはこの能力を使ってセブロイ様の隠された本省を暴こうとしていた。領民からの評判がすこぶる良い彼が裏で何をしていたのか……魔獣の力を借りてそれを見抜こうとしているようだ。

 しかし、そんなティオグの思惑は外れた。
 死千蝶《ゴースト・バタフライ》はセブロイ様の言動に嘘はまったくないと報告してきたらしく、少し動揺がうかがえた。
 俺もてっきり彼が黒幕だと睨んでいたのだが、どうも違うらしい。
 そこで、俺も少し会話に混ざっていろいろと探ってみることにした。
 
「レドルの治安悪化ですが、いつ頃からか分かりますか?」
「お恥ずかしい話だが、実のところつい最近までまったく知らなくてね。対策を練るために町の様子をこの目で確かめたかったのだが……すでに手を加えるのが困難な状況であり、私が近づくのは危険だとコーベットから報告を受けていたのもあり、打つ手を模索している最中だったんだ」
「あの、そのコーベットというのは?」
「レドルの町長だよ。会わなかったかい?」
「え、えぇ」

 そもそもあの町に町長なんていたのか?
 確かに悪事を働いて追いだされた某国の大臣説はあったけど、そんな人物は見受けられなかった。

「コーベット町長は今も町に?」
「そのはずだ。町の中央通りから少し離れた場所に家を構えているはずだよ」

 これは貴重な情報だ。
 おかげで本当の黒幕は町長のコーベットである可能性が出てきた。
恐らく、ヤツはティオグのパートナー魔獣とその能力について把握しており、罪を擦りつけるためにテイマーふたり組をこの屋敷に近づけさせ、疑惑の目を向けさせようとした――かもしれない。

「ティオグ」
「分かっています、先生。コーベット町長のもとへ向かいましょう」

 新たな容疑者が浮上したことで、俺たちはすぐにレドルの町へ戻る準備を進める。
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